第41話 選択肢25ー1怯んだ(40話選択肢より)

怯んだ。

私のその変化を察知したリリィの顔色が変わる。


「あなたも逃げるの? お兄様のように……」


「っ!!」


怯えて後ずさる私を見ながら、リリィが口を開く。

その瞬間に、オーナーはリリィに駆け寄り、彼女のみぞおちを殴った。


「う……っ」


リリィが、呻いて崩れ落ちる。

オーナーは、リリィを抱き止めながら、私を見た。


「早く、この娼館を出るんだ!! もう、二度とここに来てはいけない」


「でも……っ」


「あなたが、あなたの自我を保ち続けていたいのなら、忠告を聞くべきだ」


オーナーの言葉を聞いて、私は、さきほどの、ぞっとするようなリリィの表情を思い出した。

そして、身を翻す。


恋だと思った。

だが、それは、錯覚だったのかもしれない。


それから、私が娼館に足を向けることはなくなった。

クライヴの追求を逃れながら、なんとか、仕事をこなし、生活を送る。


リリィが、私を追いかけてくることはない。

彼女は、娼館という鳥籠の中だ。

やがて、リリィの顔を忘れ、声を忘れ、娼館の場所さえおぼろげになった頃、クライヴの父親からすすめられた女性と結婚した……。


【END23 日常への回帰】

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