第40話 選択肢24ー2「一緒にいるよ」(36話選択肢より)

「一緒にいるよ」


「本当に?」


「ああ。ずっと、君の側にいる」


クライヴの追求をかわしながらリリィに会うことは、きっと難しい。

……この恋を欲するなら、私はクライヴから離れなければいけない。

それは、つまり、職を辞するということだ。


「嬉しい……!!」


リリィがそう言って、私に抱きついた直後、案内係の男が部屋に入って来た。

彼は、私に抱きつくリリィを見て、困惑した表情を浮かべる。


「お兄様を呼んでちょうだい」


リリィは現れた男に言った。


「かしこまりました」


男はリリィに一礼して、部屋を出て行く。


「わたしのお兄様……従兄弟が、娼館のオーナーなの」


リリィの従兄弟。

そう聞いて、私は、娼館の入り口でクライヴと揉めた時に間に入ってくれた男性の顔を思い浮かべた。

もしかしたら、彼が、リリィの従兄弟なのかもしれない。


「オーナーは、私と君のことを認めてくれるだろうか」


「認めてもらうわ。だって、わたしとあなたが、望んでいることだもの」


リリィはそう言って、私の髪を優しく撫でる。

その手の感触を楽しみたいと思う気持ちを抑えて、私は口を開いた。


「オーナーが来る前に、立った方がいい」


「そうね」


リリィはすっと立ち、私の両手を掴んだ。

私はリリィの手を借りて、立つ。

……昔に比べて、大分、脚力が落ちているようだ。


「リリィ。手錠、外してもらえないかな」


「ごめんなさい。手錠の鍵は、案内人が……」


リリィが言い終える前に、ドアが開いて金髪の男性が入って来た。

私とクライヴが揉めていた時に、声を掛けて来た彼だった。


「リリィが迷惑を掛けて、大変申し訳ありません」


彼は、開口一番、私に頭を下げた。


「お兄様。頭を上げて、話を聞いて」


「お客様を引き止めるなど、してはいけない。リリィ」


「お客様ではないわ。彼はわたしの歌を聞いていないの。聞いていないのに、わたしと一緒にいたいと言ってくれたの」


リリィは必死に、オーナーに訴える。


「リリィ。彼にカードを渡したのだろう。それだけで良いと、思わなければいけない」


「嫌よ。わたし、この人といたいの。きっと、この気持ちは変わらないわ」


リリィがそう言った直後、オーナーの口元が歪んだ。

とても、奇妙な表情だった。

憎悪のような、憐憫のような、いくつもの感情が混じり合ったその表情を見た瞬間、私は鳥肌が立った。


「リリィ。傷が深くなる。取り返しがつかなくなる前に、引き返しなさい」


「嫌よ。わたしは、彼と一緒にいたいの。彼も、そう望んでくれているの。ねえ。そうでしょう?」


リリィは縋るように私を見た。

私は……。


選択肢25

1怯んだ(次へ/鳥籠の鳥【男主人公編】40話→ 鳥籠の鳥【男主人公編】41話へ)


2肯いた(鳥籠の鳥【男主人公編】40話→ 鳥籠の鳥【男主人公編】43話へ)

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