36話 女の子をボコボコにするセンエース。


 36話 女の子をボコボコにするセンエース。


 そう言って、俺は、

 ユズと向き合う。


「クソ女……てめぇは、今、俺を殺す気で攻撃したな」


「……あ? それがどうした……」


「ここからは、もう『カツアゲの復讐』にとどまらねぇ。ただの殺し合いだ。てめぇは俺を殺そうとした。だから、殺す。俺は聖人じゃねぇ。尊くもねぇ。ただの『性格が悪い陰湿(いんしつ)なクソ野郎』だ。だから、お前を、躊躇(ちゅうちょ)なく殺す。遺言(ゆいごん)があるなら、ほざいていいぜ。聞くだけ聞いてやる」


「……妙に防御力が高いからって調子にのるなよ、カスぅ! たまたま『異次元砲を使えるシッポ』をひろっただけの『運だけクソ野郎』が、地獄を見てきた私を殺せるワケないだろ! 私とあんたじゃ、『生まれつきの資質』も、『後天的(こうてんてき)な努力の量』もケタが違うんだ!!」


 怒りまみれで、そう叫ぶと、

 ユズは、また、豪快な速度で殴りかかってきた。


 もう、簡単には殴られてやらない。

 すでに、『前提』はととのった。


 てめぇは『殺意のこもった拳』で俺を殴りつけた……

 その罪(つみ)を清算してもらう。


 俺は、

 ヘブンズキャノンに命令する。


「フルパレードゼタキャノン!!」


 『高火力』だけど『異次元砲よりも使い勝手が悪い魔法』。

 それが、このフルゼタ!


 タメが長い!

 使ったあとの硬直(こうちょく)も長い!

 クールタイムも長い!

 反動が大きいから命中させるのが難しい!


 本当に、コスパの悪い魔法。

 けど、かっこいいから、つい使ってしまった!

 やっぱり、俺はアホの子だ!!



「ぎゃあああああああああああっっ!!」



 かなり偶然くさかったが、

 なんとか、フルゼタを直撃させることに成功。


 最近の俺、なんか、すげぇ運がいいな……


 なんて、思っていると、

 ユズが、


「ああああ! うううう! 痛いぃい!」


 どうやら、あのバトルスーツは、『エヴァンゲ〇オン』と同じで、ダメージがシンクロするタイプらしい。


 ……こんなにうれしいことはない。

 このまま、外側からボコボコにして、

 あいつに、『命の痛み』を教えてやる。


 てめぇは、『陰湿(いんしつ)な俺』をイジメてしまった。

 あまつさえ、『殺そう』とまでしてしまった。

 だから、当然、盛大なしっぺがえしをくらう。


 さあ……絶望を数える時間だぜ、クソ女。


「おらおらおらぁあああああっ!!」


 俺が、ユズを殴ると、

 連動して、ヘブンズキャノンがグンと伸びて、ユズに直撃。


 俺の拳は、なんのダメージもあたえていない。

 ダメージを与えていないどころか、むしろ、こっちの指の骨が折れて、痛いだけ。


 だが、ヘブンズキャノンの『刺突(しとつ)』は、

 かなりのダメージ量で、


「がああああああ!」


 ヘブンズキャノンに体をえぐられるたび、

 ユズは、大きな声で泣き叫ぶ。


 いい音色(ねいろ)だ。

 カスの悲鳴は、俺の心をいやしてくれる。


 『俺がユズをボコボコにしている、この風景』を、ぜひ、録画しておきたいくらい。

 そして、俺のことを尊いとか高潔とか、そんな『謎の勘違い』をしている連中全員の前で、その映像の鑑賞会(かんしょうかい)を開きたい。



 ……なんて思っていると、


「……う、うがぁああああ!!」


 ユズが、反撃してきた。

 アイテムボックスから、でかい剣を召喚して、

 俺に切りかかってきた。


 ザシュゥっと、

 見事に俺は真っ二つ。

 普通なら即死だろう。

 即死にふさわしい痛みを感じた。

 ほんとに、マジで、すげぇ痛ぇんだよ……

 で、そのあとにくるメンタルへの大ダメージがエグいんだよ。


 ……まあ、でも、この程度では折れねぇけどな。

 俺の根性、ナメんじゃねぇ。

 こちとら、幼稚園、小学校、中学校、という地獄を、

 一人で耐え抜いてきた稀代(きだい)のボッチエリートだぞ。


 マジで、ナメんじゃねぇ。




 ――『何をしても死なない俺』を見て、

 ユズは、


「……な、なんなの……あんた……もう……気持ち悪い……」


 と、本音を口にした。


 同感だぜ。

 と、心の中でそうつぶやきつつ、

 俺は、


「俺から言わせれば、てめぇも相当気持ち悪いんだよ、クソ女」


 そう言ってから、


「死にやがれ……フルパレードゼタキャノン」


 『殺し合いの幕(まく)』を引こうと、

 俺は、ヘブンズキャノンに、極大魔法を吐(は)かせた。


 その膨大なエネルギーは、


「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!」


 ユズの肉体と精神に、これでもかと、

 大きなダメージを与えた。


 殺す気で放ったのだが、

 ユズはしぶとく……

 というか、あのバトルスーツがしぶとく、


 まだ、ギリギリのところで生きていた。

 しぶとい女だ。

 ゴキブリみたいな女は、やはり、ゴキブリのように生命力が高いらしい。


「なかなか、しぶといな、クソ女。んー……そうだなぁ……殺そうかと思っていたが……どうせだし、生かしておいた方がいいかな」


 こいつぐらいなら、いつでも殺せる。

 慌てて殺す必要はない。


「お前が、この未来世界でも『やばいことをしまくった』というのは知っている。生きて、ちゃんと、罪を償(つぐな)え」


 ここで死んで終わり。

 そんな『楽な結末』は許さねぇ。


 お前は、蝉原と同じで、

 長い時間をかけて、じっくりと、『なかなか終わらない地獄』を見てもらう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る