20話 デビナ視点(2)。


 20話 デビナ視点(2)。


 家を出たところで、フード野郎に襲われた。

 なんだか、面白そうだったので、

 あたしは、肩にかついでいた『ウロス』を、


「アズライル、ちょっと預(あず)けるぜ!」


 そう言って、投げ渡してから、

 フード野郎の攻撃と向き合う。


 単純な直線状(ちょくせんじょう)の攻撃。

 あたしは、サクっとよけてから、

 フード野郎の顔面に、軽めのジャブを入れてやった。



「ぐぁあああっ!!」



 すげぇ軽めにいれたのだが、

 フード野郎は余裕で吹っ飛ぶ。


 あのフード野郎の存在値は350ぐらい。

 まあ、弱くはねぇが、あたしの敵じゃねぇ。



「……ぐっ……そ、その強さ! 存在値200ではないな! フェイクオーラをかけているのか!」



「フェイクオーラは、基本だろ! 自分の情報を垂(た)れ流して歩くなんざ、アホのすることだぜ!」


「……私の『サードアイ(セブンスアイの下位互換(かいごかん))』をあざむくとは……まさか、貴様ら、『下っ端』ではなく『クリムゾン・スターズ』のメンバーか!」


 なんか『知らんチーム名』が出てきた。

 けど、ここで普通に否定してもつまらねぇ。

 というわけで、


「もちろん、そうさ! で、それを知ったお前は、ここから、どうするぅ?!」


 と、悪ノリしていく。

 人生ってのは、こういう悪ノリしている時が一番おもしれぇ。


「……女神教がほこる最強の精鋭(せいえん)チーム『クリムゾン・スターズ』が相手となれば、さすがに、私も本気を出さざるをえないな」


 そう言うと、

 フード野郎は、全身に魔力とオーラを充満(じゅうまん)させていく。


 なかなかいい練度(れんど)だ。

 ガッツリ鍛(きた)えているのが一目で分かる。


 まあ、あたしの前に立てるだけの資格はねぇけどな。

 かはは!


「見るがいい! 女神教のエージェントよ! これが私の全力だぁ!!」


 そう言いながら、爆速で、あたしとの距離をつめてくる。


 いい動きだ。

 悪くない。

 『悪くないだけ』だけどな。

 かはは!



「おらよっ!」



 相手の動きを、あえてギリギリのところでサラリとかわし、

 今度は、ジャブではなく、アッパーをアゴにいれてやった。


「ぶへぁあっ!!」


 噴水みたいに血を吐くフード野郎。


 追撃(ついげき)しようと思えばできたが、

 あたしは、ニタニタと笑うだけにとどめる。


 『気絶するほどの力』では殴っていないので、

 フード野郎は、どうにか体勢(たいせい)を立て直して、


「ぐっ……ぐぅう! な、なんという力……クリムゾン・スターズが、貴様のようなバケモノを隠し持っていたとは……誤算だった」


「かはは! どうだ! クリムゾン・スターズはすげぇだろ! クリムゾン・スターズはただもんじゃねぇぜぇ! なにがどうとは言えねぇけどなぁ! かははははは!」


 クリムゾン・スターズとやらが、どこの誰か知らんが、

 とりあえず、口に出すと気持ちいいから連呼しておく。


 クリムゾン・スターズ、万歳(ばんざい)!

 クリムゾン・スターズ、最高!

 どこの誰か知らんけど!


「……くっ……まさか、こんなところで、『切り札』を使うハメになるとは思ってもみなかった……」


 切り札?

 ほーう。

 また、面白そうなことをはじめてくれるじゃねぇか。

 ワクワクするぜ。

 どんなピエロをかましてくれんのか。


 なんて思っていると、

 フード野郎は、不敵な笑みを浮かべて、


「――まあいい。おそらく、貴様は、クリムゾン・スターズの中心人物……戦闘の要(かなめ)だろう。ここで貴様を殺しておけば……我ら邪神教の宿敵(しゅくてき)である『女神教』を排除(はいじょ)するのがたやすくなるはず」


 そう言いながら、フード野郎は、

 『めちゃくちゃダッセェ形状(けいじょう)』の『邪神像(じゃしんぞう)』的なものを取り出して、


「クリムゾン・スターズのバケモノよ! 貴様に、超王級の邪神を見せてやる! その力は、六大魔王にすら匹敵する領域だぞ!」


 そう叫びながら、

 邪神像を天に掲(かか)げて、


「いでよ! 『ロードライト・ハデス・ワイズマン』!!」


 おお、マジかよ。

 『ロードライト・ハデス・ワイズマン』っつったら、

 マジで、超王級のモンスターじゃねぇか。


 ちなみに、モンスターのランクはこんな感じ。

 最々下級

 最下級 

 下級  

 中級  

 上級  

 最上級 

 王級  

 超王級 ↓ロードライトはここ。

 神級  

 大神級 


 ワクワクしながら、召喚されるのを待っていると、

 『邪神像』が砕(くだ)け散った。


 砕け散った破片(はへん)が魔方陣(まほうじん)をえがき、

 そこから、『邪悪な死神』が姿を現す。




「――我(われ)を呼んだのは貴様か」




 おお、いいねぇ!

 ガチでなかなか強いじゃねぇか。

 存在値480。

 まあまあの強さだ。


「そうだ! ロードライト・ハデス・ワイズマンよ! 私が貴様の召喚主だ! そして、敵は、あの女だ! 殺せ! 全力をもって殺せ! その後(のち)に皮をはぎ、腕をもぎ、邪神教に逆らった罪の重さを、骨身(ほねみ)に思い知らせてやるのだ!」


「――了解した」


 そう返事をすると、

 ロードライトは、でっけぇ鎌(かま)を構えて、


「――小娘、死ぬがいい」


 なんて、楽しいことを言いながら攻撃をしてきた。

 わらかしてくれるねぇ。


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