14話 『アポロ』と『センエース』の対話。
14話 『アポロ』と『センエース』の対話。
アポロに話を聞いたところ、
どうやら、この城には『風呂』などの設備が充実しているだけではなく、
『大量のワナ』も配置されているっぽい……が、
アポロがいるなら、楽勝で回避できるらしい。
城の探索(たんさく)に限っていえば『アポロの案内でことたりる』ということで、どうにか、『弟子たちの護衛なしでの散策(さんさく)』が許可された。
……なんで、こんな面倒なことになるかな……
散歩するのにも、いちいち『許可』を取らなければいけないとか……
くっそダルすぎる。
こんなことになるくらいなら、一人で、タイムスリップしたかった……
あいつら、マジで邪魔。
なんてことを思いながら、城の中を探検している途中で、
俺の『中』にいるアポロが、話しかけてきた。
「主上様(しゅじょうさま)」
「その呼び方、どうにかならんもんかね……」
「主上様は……もしかして、酒神を愛しておられるのですか?」
「なんだ、急に……」
「主上様は、酒神に対して『自分を見てほしい』と命令しておりました。あれは……『愛してほしい』という意味だと思ったもので」
「うがっているなぁ……なんでもかんでも恋愛に結(むす)び付けようとするなよ。思春期の乙女(おとめ)か」
「それに、酒神が、『処女をささげる』と言った時、主上様は、喜んでおられるように思えたので……あと、浴場でも、体の方が反応されて――」
「ねえ、やめてくれる? そういう、なんか、恥ずかしいこと言うの……俺、下品な会話きらいなんだよ」
「もうしわけございません」
「男子中学生は、美少女を前にしたら冷静ではいられなくなるのが普通ってだけ。つまり、動揺(どうよう)しただけ! けっして喜んでないから! 俺、そんなにダサくないもん!」
めちゃくちゃダサいことを言ってしまった。
……いや、さすがに、今のセリフは、
ダサいってことを分かった上で言っているけどね。
「……あいつのことは、その……好きとか、愛しているとか、そういうのとはちょっと違うっていうか……いや、違わないかもしれないんだけど……なんていうか……んー、まあ、そのぉ……」
言葉にするのが難しい。
感情なんて、だいたいあやふやだから、
ちゃんと言葉にするのはムリなんだと思う。
「……なんていうか……『命がけで守ってもらう』ってのが、初めての経験だったからな……結局、そこなんだよ。正直、あいつのことは『バグっている』と思うよ。見た目は美人だけど、口調とか性格とか、いろいろ『おかしい』しな……けど、なんだろうな……『アバタもエクボ』とはよく言ったもので……あの時、必死に守ってもらってから、あいつのイカれたところも、妙にカワイイと思うようになってしまったっていうか……ああ、もう、なにいってんだ俺は……自分で自分が気持ち悪ぃ」
「……なにも、おかしなことではないと思います。私も、主上様に救われたことで、心惹(こころひ)かれておりますから」
「そりゃ、うれしいね。俺も、お前のことは嫌いじゃない。お前のことを尊敬しているといった言葉に嘘はない」
「……まあ」
嬉しそうな声をあげたアポロ。
実際のところ、彼女からどう思われているかは知らんけど、
まあ、とりあえず、嫌われてはいないと思う。
★
「――ここでございます」
と、案内された場所は、
地下にある謎の部屋。
そこには、ヤマタノオロチみたいな『無数の頭を持つ龍』がいた。
「……なにこれ」
アポロに『この城で一番おもしろいもの』を見せてくれ。
とねだったら、ここに連れてこられた。
「あれは、『ヘブンズキャノン』という名の龍でして、『天下統一を果たした魔王』に贈呈(ぞうてい)される予定になっております」
「……天下統一の報酬か……となると、さぞスゴいんだろうな」
そうつぶやきながら、
俺は、ヘブンズキャノンの元へと近づいていく。
「……主上様、おまちください! ヘブンズキャノンにはあまり近づかないでいただけますか? ヘブンズキャノンは、『天下統一を果たした魔王』以外が近づいた場合、迎撃(げいげき)してきますゆえ」
アポロの言う通り、
俺が近づくと、
ヘブンズキャノンは、ギラリと、俺の方を睨(にら)んできた。
「とんでもない圧力だな……『絶死を積んだアポロ』と同じ……あるいは、それ以上の気配を感じる……」
「ヘブンズキャノンは、この世界における最強の力です。手に入れた者は、正式に、この世界の神となる……そういう兵器なのです」
「面白いじゃねぇか。そういうの、ワクワクするぜ」
そう言いながら、
俺は、さらに歩みを進める。
「主上様っ!」
「黙って見ていろ。最強への第一歩だ。こいつを俺のモノにする」
そう宣言してから、
俺は、ヘブンズキャノンに向かって突撃した。
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