12話 大量の美男美女から平伏(へいふく)されるセンエース。


 12話 大量の美男美女から平伏(へいふく)されるセンエース。


 ……なんで、こうなった?


 風呂から出たあと、

 俺は、むりやり、玉座に座らされた。


 そして、俺の前で、うやうやしく片膝をついている『蝉原』と『蝉原の9人の弟子』たち。

 ちなみに、酒神だけは、『俺がすわっている玉座(ぎょくざ)』の『ひじかけ?』の部分に座って、アクビをしている。


 こいつだけは、本当に自由だな。

 まあ、別にいいけど。


 ――と、そこで、蝉原が、


「それでは、センくん、これからのことについて話し合おうか。まずは、君がおれに命じた『世界征服』に関してだけれど、おれが自分で考えて行動したほうがいいのかな? それとも、王である君に、逐一(ちくいち)、判断を仰(あお)いだ方がいいかい?」


 いつもの『目の奥はまったくわらっていない顔』でほほえみながら、そう言った。


「俺が一々指示を出すとか、メンドくさくて仕方ないから、自分で勝手に考えろ。お前の方が俺よりも頭がいいんだから、俺がどうこう言うより、そっちの方が絶対にスムーズにいくだろう」


「了解、センくん。完璧な状態で、この世界を君にささげるよ」


 ニィっと、『腹黒(はらぐろ)さ全開』で笑う蝉原を見て、

 普通に心配になった俺は、


「……もう理解していると思うけど、あらためて言っておく。胸糞(むなくそ)は絶対に禁止だ。善人を殺すとか、街を焼き払うとか、薬物を蔓延(まんえん)させるとか。もし、そういうことに手を染めたら、即座に『死ね』と命令するから、そのつもりで」


「大丈夫だよ、センくん。おれは君の手足だ。『頭』の意志に反することはしないよ」


 また、ニコリと微笑む蝉原。

 ……絶対に裏がある笑顔だ。


 心配だが、

 今のところ、『俺の命令』は『絶対的なもの』として機能しているっぽいから、

 たぶん、おかしなことにはならないだろう……

 たぶん……


 そんなことを考えていると、

 蝉原が、


「ところで、おれが世界征服をしている間、センくんは何をするつもりなんだい?」


「ん? 決まってんだろ。とりあえず、この城を出て、冒険者をしながら、レベルを上げていく」


 俺がそう言ったところで、

 この場にいる全員(酒神以外)が、

 一斉に、


「「「「「「「「「「なりませんっ」」」」」」」」」」


 と、全否定の大合唱。


 そのあまりの圧力に、思わず俺はウっと引いてしまった。


 蝉原が、みんなの代表を買って出て、

 俺に、


「センくん。冗談はやめてくれ。心臓に悪い」


「一ミリも冗談は口にしていないのだが?」


「……冒険者になるなんて、認められるわけがないだろう。君が死んだら、おれも死ぬんだよ? 君が絶死のアリア・ギアスを積んでいる時は、確かに、命のリンクが切れていたようだが、今は、普通に復活している。こんな状態で、存在値2の君を、外に出すなんて冗談じゃない」


「お前の意見なんか知るかー。俺は、いつだって、俺のワガママをつらぬくだけだ」


「せ、センくん……もしかして、まだ、君の『お母さんのサイフ』を踏んだことを根に持っているのかい? 本当に、本当に、悪かったと思っている! このとおりだ! どうか、許してほしい!」


 そう叫びながら、綺麗な土下座をする蝉原に、


「土下座、やめろ。マジで鬱陶(うっとう)しいから。つぅか、だれもそんなことは言ってねぇ。俺はただ、冒険者になりたいだけだ。ファンタジー世界で冒険者になって、モンスターを狩りながらレベルを上げることは、昔からの夢なんだよ。最強になるという目標もある以上、ここで、寝ているわけにもいかない。冒険者をやりながら、レベルを上げて最強を目指す。これは決定事項だ」


「……っ……」


 あまりに『俺の目』がガチすぎたため、

 『何を言っても無駄だ』と思ったのだろう。


 『グウの音』も出なくなった蝉原から視線を外して、

 俺は、弟子たちに対して、


「というわけで、お前ら弟子連中は蝉原の手伝いをしてくれ。『100以上ある国』をたばねるって作業は大変だろうけど、まあ、お前ら優秀っぽいから、たぶんできるだろ」


 そう言って、俺は『ムリヤリ座らされた玉座』から立ち上がる。


 正直言って、このイスは肌にあわない。

 『王としてふんぞり返る』というのは、ほんと、性(しょう)に合わないんだよ。


 俺は、『孤高』だ。

 もくもくと『一人でレベル上げをする』のが性(しょう)に合っている。


 それに、ここにいたって、本当に、なんの役にも立たないからな。

 俺に、内政とか統治とか経営とかできるわけがない。

 俺には才能というものが欠落(けつらく)しているから。



 ……などと、そんなことを思いつつ、

 この場から立ち去ろうとしたところで、

 ナース服ヒーラーのアルブムが、

 俺の前に立ちふさがり、


「セン様、もうしわけありませんが、お一人でいかせるわけにはいきません。あなた様は、わたくしたちの王。なくてはならない至高の光。冒険者などという危ない仕事をゆるすわけにはまいりません」

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