現代チート勇者が異世界で活躍するもたった一つ手に入らないものがある

@nonoko0125

現代チート勇者が異世界で活躍するもたった一つ手に入れられないものがある

とある4月の朝の東京

その中でもとある一等地

ずらりと億ションがならび代々から住む方々の豪邸が並ぶ中ひときわ目立つ上品で白い大きな家、これは彼女の実家である

そこから黒髪ロングをなびかせハイヒールをカツカツと鳴らして、とある女性が出てきた

名前は白金瑠美

スーツも仕立てが良さそうで、黙って歩いているその姿はテレビに出てくるモデルのようだった。

くっきり二重に日本人離れした高い鼻きゅっと結んだくちびる、嫌味ではないオフィス向きのセンスのいいメイク。

同性でも彼女を一度振り返り見惚れるかもしれない。

そして彼女は静かにタクシーに乗り込んで行った…。

彼女が向かう先は勤め先の世界的グローバル企業でその名を知らない人はいない大企業中の大企業である。

もちろん、コネ入社ではなく実力入社だ。

そこで彼女は若くして第一線で働いていた。

社内評価も良く同期の中でも出世頭でバリバリ働いていた。

ちなみに彼女は仕事ができるだけではなく一流海外大学卒業、更にさまざまなボランティアにも取り組み

学生時代は試験は全国一位が当たり前、絵も選ばれ賞を取るのは当たり前スポーツ万能でテニスをはじめとする様々なスポーツを嗜んでおり、幼少期から華道、茶道を教え込まれてもちろんそれら全て完璧にアラサーの今でもできる。

さらにそのことを鼻にかけず誰にでも平等に接しスポーツや絵、勉強ができない人のこともほっておけずいつも練習に付き合った。


さて、そんな瑠美が仕事が少し遅くなり夜もう暗くなってしまってからタクシーを呼ぶ前にふと桜の木をみつけた

その花びらが誘い込むように彼女の白い手にとまると

なんと辺り一面が光り始めた!


気がつくと彼女はまるでRPGの首都のようなところにいた。

周りのざわめきで目を覚ました、「勇者様だ!」と口々に人々が言う

さらにはレベルが既にカンストしているらしく「すごい!レベルカンストの勇者様は初めてだ!」と喝采を上げていた

彼女が何やら地面に模様が書いてあるところから起き上がると

兵隊のような人々が来てさあさあこちらにと案内されたので訳もわからずついていく

(もしかして…昔友人の家でプレイしたゲームの世界に似てる?少し違うけど…あの時ラスボスを倒したら友人が攻略が速すぎるって言ってたっけ)と思いながらついていくと王冠を被った年老いた王様が座っていた。

王様の言うことには

「魔王が我が国を侵略する計画を立てている。魔王は魔力が強くこの国の人々をかきあつめた軍隊でも太刀打ちできないんじゃ」

「下手に動けば向こうに勘付かれてしまうから先手を打って伝説の勇者様に魔王を討伐して欲しかったんじゃ」

「なによりとにもかくにも侵略される前に討伐しなければ…この国は終わる!外交が通じる相手ではないんじゃ!」

「攻撃力、防御力、体力、知力、魔力ともにレベルカンストのあなた様ならきっと倒せます!どうか救ってください!この国で1番良い道具を渡します」

と説明を受けた


チャララララーンというおそらく彼女だけに聞こえる音がして生まれて初めてみる剣、水晶の飾りがついた銀の杖、そして精霊の加護があるといわれる白い絹のドレスのような装備品を渡される


だんだん彼女にも状況が飲み込めてきたが昔やったゲームの世界のようだ…

試しにステータス画面を開くとスッと浮かんできて皆の言う通りの数値が出てさらに剣や杖、装備品のステータスを見ると王様の言う通り一級品のようだった


「わたしでよければ、力不足にならないよう精一杯努めさせていただきます」と彼女は力強く答えた


そしてレベルカンストしているため今すぐ魔王城へ行っても倒せると側近たちに止められたのだが持ち前の謙虚さときちんと基礎を固めた方が良いだろうと言う彼女の判断で他の冒険者と同じようにギルドでミッションをこなしコツコツと攻撃の仕方、防御の仕方、魔法の使いこなし方といった戦う術を覚えていった。

そしてミッションをこなすごとにいく先々でもてなしを受け異世界のたくさんのカラフルでジューシーな木の実や味わったことない味の美味しいお肉、香ばしく焼いたお魚を食べた。

そしていよいよ魔王城、なんともあっさり一撃で魔王は倒れ更に最終形態に3回なられたがこれまでの技術を駆使しなんと3回とも一撃で倒してしまった…


さてここで問題が発生する

王が言うには通常は魔王討伐すれば勇者は役目を終えたと世界に判断されそのまま元の世界に帰ることができるらしいのだ!

しかし彼女は帰れていない。

旅で出会ったさまざまな人々、王様たちの協力も受けながら自分でも元の世界に変える術を探してたくさんの村や街を渡り歩いた。

そしてとある辺鄙な村に辿り着き一人の少年と出会う。


少年の名前はアメデ。あまり位の高い家ではない…と言うか率直に言ってしまえば辺鄙な村の中でも更に貧困層の村の少年だ

現代であれば学校に通っていそうな年齢のあどけない顔をしていた。

とてもこの人数が入りきらなそうな木を打ちつけたような家に父、母、妹二人と共に住んでいた。

彼は彼女に言う

「勇者様はたくさんいろんなところを巡ってきたんだよね?どんな料理があった?」

そこで彼女は異世界で食べた数々のもてなしを教えた

すると彼はとても目を輝かせて

「僕、男の子だから変ってみんなに言われるしひどい時は頑張ってお小遣い稼ぎしてかったペーパーバックの料理の本を山に捨てられたこともあるんだ…けど料理が大好きなんだ!

うちはあんまりお金もないし下に二人妹もいるし父さん母さんと同じようにそろそろ働きに出ないといけないけどたくさん本読んだりね、キッチンにお母さんの代わりに立ってたくさん練習してるの…本当は料理人になりたい…そしてオリジナルの料理をつくりたいんだ」

それを聞き彼女はぽつりと、ここに来て初めての弱音を吐いた

「あのね、今言った料理もとても美味しかったの、でもわたし帰ってお母さんの卵焼きが食べたいな…もうここにきて魔王討伐してから一年(日本換算)経つし懐かしくて最近思い出しちゃうの」

すると彼は目を見開き

「勇者さまは非の打ち所がない、魔王をすぐに倒してくださって、しかも帰れないとちう前代未聞の事態にもあきらめず闘っているお強いお方って聞いていたのに驚いたよ」

「ぼく、そのお母さんのタマゴヤキ?って料理作る!勇者様を助けたいんだ!」

そして彼女の方も男性が料理好きなことをよく思われておらず山に本を捨てられたと言う点がとても引っかかりすっかり放っておけなくなってしまった。

かくして村長にしばらくこの村に滞在する旨を彼女は伝えにいく

村長はなかなか大きく屋根もしっかりしており作りもしっかりしたうちに住んでいた。

村長は、「ぜひ、勇者様にはこの村で1番大きなわたしの家に泊まってもらいたいです。この村で勇者様にもてなしをできるうちは家くらいのものです。外には兵もおりますしいざという時大事な御身を守ることができますゆえに」

と言ったが

彼女が「いえ、お気持ちはありがたいですが、アメデの家にお世話になって一緒に料理を作ります。」

とごく自然に伝えると

「アメデ!?!?あそこのうちは村の中でもその…かなり貧乏でして…もてなしどころか明日の食い扶持も両親が必死に稼いでいるのですよ!?あとアメデは男なのに料理が好きでしかも貴重なお金を明日の食糧にではなく本に回すんです。それも本も表紙付きじゃない安い紙の本ですよ!?」

彼女はそれでなおさら決心を固めた「男で料理が好きなことの何も悪くありませんよ。それに彼とはわたしにとって大事な料理を作る約束をしたのです。」

「では失礼いたします。」

かくしてアメデ少年と母の卵焼きを作る会が始まった







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