第六感

温故知新

第六感

『フフッ、これで俺は......』

「ハッ! 今の夢は何だったんだ?」



「おはよう〜」

「あっ、おはようございます!!」



いつも通りの時間に出社し、いつも通り隣の席に挨拶をした俺。


こいつ、今日は一段とテンション高いなぁ。

あれか、大型契約のプレゼンが控えているからか?

まぁ、今回はこいつにとって初めての大型契約だし、一応俺がフォローする手筈になっているんだが......朝からそんなテンションで持つのか?


変にテンションが高い後輩に小さく溜息をつきながら職場を見回した。

すっかり見慣れた職場のはずなんだが、何処と無く違和感がある。

そして、その違和感が言葉では言い表せないような鳥肌を立たせる怖さが潜んでいるような気がしてならない。


何だ、この違和感は?

いつもと同じはずなのに......あっ、いつもより職場が綺麗に掃除されてる。

昨日から新しい掃除のおばちゃんが入ったのか?

それに、今日はやけに上司の機嫌がいい。

まぁ、これはさしずめ昨夜に可愛い姉ちゃんと思う存分遊んだのだろうな。

それにしても、あの夢を見てから感じた妙な胸騒ぎが、出社した途端に更に増した気がする。

これは、一体何なんだ?



「どうしたんすか? 先輩」



いつまでも立ったままの俺を不審がったのか、隣の席の後輩が座ったまま俺の方を見上げて声をかけてきた。



「なぁ、昨日新しい清掃員でも入ったのか? 職場がいつもより綺麗に感じるんだが?」

「えっ、そうですか? 俺には、いつも通りにしか見えないですし、そんな話は聞いていませんよ」

「そうか。それじゃあ、ただの俺の勘違いみたいだな」

「そうですよ。それより、先輩! 今日は俺の初めての......」

「うん、それは知ってる」



軽く溜息をつき自席に着くと、社内にある部署が全て記載された一覧表が目に止まった。


とりあえず、朝礼が終わったらトイレに立つフリをして総務に足を運んでみるか。

何となくだが、あの上司にバレてはいけない気がするんだ。


始業を知らせるベルが鳴り、上司からのいつも通りの長ったらしいお言葉を聞き終えると、不自然にならない程度に自席から立ち上がった。




その日の夜、うちの部署の重要機密情報が、直属の上司によってライバル会社に漏洩していたことが発覚し、大々的にニュースで報じられた。

犯行理由は、社長への逆恨みだったらしい。

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