第六感

エリー.ファー

第六感

 友達に、第六感とか鋭そうだね、と言われた。

 そんな気がしないでもない。

 幽霊が見えるとか、未来が見えるとかそういうレベルではないけれど、自分でも、第六感はエグい気がする。

 説明はできない。

 何故なら、第六感とはそういうものだから。

「ねぇ、第六感を使ってなんかしてよ」

 友達に無茶ぶりをされる。

「ほら、目隠しして壁に立ってよ。ボールぶつけるから避けてみてよ」

 ただでさえ、運動神経のない私には不可能な話である。

 目が見えていても、ボールを避けられないのだ。

「いいから、あっちに立てって言ってんだよ、バカ女」

 私は走って壁の方へと向かう。

 皆の笑い声が聞こえる。

 私の第六感を楽しみにしているのだ。

 ボールが私の体にぶつかる。

 歓声があがる。

「あれー、ぶつかってるよ。避けなきゃ、ほら、避けなきゃ。第六感を使って避けなきゃ」

 私は必死に第六感を使おうとする。

 でも、ボールは次から次から次へと私の体に当たる。

 分からない。

 第一感から第五感まで使えないから、こんな目に遭ってるのに、第六感も使えない。

 私には何が残っているんだろう。

 何があって、何を長所として見ればいいんだろう。

 どうやって胸を張って生きていくんだろう。

「じゃあ、ボールを片づけといて。明日も、あんたの第六感を鍛えてあげるから、楽しみにしててよ」

 皆が遠ざかっていく。

 見えていないのに分かった。

 やっぱり、私に第六感はあるんだ。

 良かった。

 そう思った瞬間、壁にぶつかった。

 なんだ。足音が聞こえていただけか。

 それだけのことか。

 私には第六感すらない。

「何してんの」

 急に話しかけられて、私は驚いた。

 足音が聞こえなかったから、誰もいないと思っていた。

「ねぇ、目隠しをして、君はそこで何をしてんの」

「え、その。第六感を鍛えて、まし、た」

「なんで敬語なの」

「いや、その。言葉をちゃんとしないと怒られるから」

「誰に」

「友達とか、色々」

「ふうん。大変なんだね」

「まぁ、た、大変かな。あ、大変です」

「いいよ、別に。僕にはため口でも」

「あ、ありがとうございます」

「ありがとうね」

「あ、ありがとう」

「ていうか、第六感って鍛えられるものなの」

「皆は、鍛えてあげるって言ってたから」

「あ、そうなんだ。知らなかったなあ。あぁ、どうする、目隠し外してあげようか」

「あ、じゃあ、取ってくれるなら取ってほしい」

「殺しちゃうよ」

「え」

「僕の姿を見た人を生かしておくことはできないから。殺しちゃうよ」

「そ、それは困る」

「じゃあ、目隠しのまま話そうよ」

「え、えっと、じゃあ何を話そうか」

「何か叶えて欲しいこと、とかある」

「えっと、皆と仲良くしたい」

「仲良くしてたんじゃないの。違うの」

「えっと、じゃあ、も、もっと仲良くしたい」

「別にいいけど。第六感を鍛えたいとかじゃないんだ」

「あぁ。第六感が鋭いのはカッコいい感じがする、かも」

「どうすんの」

「どうしよう」

「僕に願いを叶えてもらうのって、良さそう、それともヤバそう。どっち」

「ヤバそう」

「じゃあ、君に第六感はあるね。今、君は僕と話をしていて、僕は君のことを友達だと思ってる。君は」

「と、友達だと、その、思いたい。かも」

「じゃあ、友達もいるね。もう少し、何を叶えたいのか考えてみようか」

「う、うん。考えてみる」

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