中編 2
それは、本当に突然のことでした。所属する方々も、急なことでごめんねと投稿するほどでした。驚いたのは、これだけではありません。この業界では、まだ稀なことですが所属する多くのVTuberが他事務所に移ったり個人勢として活動していくとの発表もありました。混乱する中、彼らが今後もVTuber活動を続けたいと意思表示をしてくれたことは救いになりました。
ただ、ここからが長かった。本当に気の遠くなる時間でした。新天地で心機一転頑張っていく同事務所の子たちを見るのが、とっても辛かった。権利的な問題もあって、衣装が変わったりメイクが変わったりする子を見て怖くなった。【ミツハジメ】もそうなるかもしれない、もう二度と好きになったあの姿を見れないかもしれない。しかも、彼らには通訳の問題もある。もしかしたら変わってしまうかもしれない。中には、通訳を務めてくれている方の配信にコメントを残す人もいました。本人じゃない他の話をしているので、多大な迷惑だったと思います。それでも、随分と濁しながら「また会えるといいね」とおっしゃってくれました。もちろん、契約もありますから言えないこともある。それを分かっていても、嬉しかったです。
いよいよ再デビューしていないのが【ミツハジメ】だけになったころ。1.5周年も過ぎたころ。もう会えないんじゃないかと思っていた時、公式アカウントに動きがありました。言い忘れていましたが、個人アカウントと公式アカウントがあります。
「本日より○○○○から運営を引き継ぎ、ミツハジメはVTuber事務所いずみな所属となりましたことをご報告させていただきます」
一応、旧事務所名は伏せました。調べば分かることではありますが念のためです。
私のタイムラインも、所属が決まったことを喜ぶ声が多かったです。でも、しばらくすると休止期間に浮かんでは消えた悩みがどうなっているかを心配する投稿が増えていきました。何よりも「いずみな」への移籍に不安を抱えていました。この時点での「いずみな」は、女性VTuberしか在籍していなかったためです。
そこからも、公式アカウントの投稿は止まることはありませんでした。ダンスや歌を改めて習っていることなどが投稿されていく中で、あの投稿は忘れられません。
「【ミツハジメ】の通訳の件ですが、引き続き務めていただくことが決定いたしました」
からの音声投稿もあって、久しぶりの【ミサト】君の声に泣いてしまいました。それでも、中々配信は始まりませんでした。
2周年まであと100日というところで、「100日後に再デビューするVTuber」企画が始まりました。
企画の中で、「いずみな」に所属する先輩方との絡みもあり今後が楽しみになりました。
そして、2周年配信当日。私たちの前に姿をあらわしたのは自国の民族衣装を纏う彼らでした。「いずみな」は、多少オーバーな動きが特徴的な事務所なのですが、その特色を存分に活かした最高の衣装でした。
少しばかりメイクも変わってはいましたが、そこにいたのは紛れもなく彼らでした。
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