【第33話】パパは引退
「パパ、何を······」
「パパァ?」
父さんが
「父さん、
「そうだよ。パパと呼べ、と言われて育ってきたからね」
父さんは素直に答えた。対する
「じいちゃん、本当なの?」
「本当じゃ。だ、ダメかのう?」
「いや、別にダメじゃないけど······」
僕はそこまで答えると、
「暗黒騎士が魔王にパパと呼ぶなんて、何かなあ!」
アリサはお腹を抱えて笑い続けた。そんなアリサを見た
「アリサ! 笑うのはやめなさい! せっかくオリスチンさんが大切なことを言おうとしてるときに······」
マルコロがアリサの腕を軽く引っ張りながらたしなめた。
「だってえ、あの最強と言われてる暗黒騎士がパパって言うんだよ。もう、可笑しすぎてお腹痛い······」
僕はアリサを見ながら、ツボに入ったんだな、と思ってニヤリとした。そのとき
「アリサ、今後のために、じいちゃんと父さんへの印象を良くしておいたほうがいいよ」
僕はアリサに耳打ちした。利発なアリサは僕の言葉の意味を察すると笑うのをやめて静かになった。
「失礼しました······」
アリサは、
「じいちゃん、話の腰を折ってごめんね。さっき口にした、茶番は終わりにする、てどういう意味なの?」
「うむ。わしは今日を持って魔王を引退する。本来ならわしが魔王を引退したら、息子のオレクサンダーが魔王に即位するんじゃが、それはもうなしじゃ。魔王も暗黒騎士も、みんな今日で引退じゃ!」
「じいちゃん、それは構わないけど、僕の立場にもなってよ。僕が魔王討伐に向かったことは、たぶん世界中が知ってるんだよ。それなのに、魔王は引退しました、では話が通らないよ」
「我が孫、オリスティンよ。その心配は無用じゃ。我が一族の筋書きでは、魔王討伐に向かった勇者は行方不明になることになっておるんじゃ」
「え! じゃあ、僕は魔王に倒されたことになるの?」
「そうじゃ。そして、暗黒騎士の1人として修行したらどこかの王国へ赴任するんじゃ」
「そんな筋書き、ひどいよ! じゃあ、もう母さんに会えないじゃないか!」
「そう、だからこんな残酷な掟や茶番は終わらせようと思うとるんじゃ。分かってくれたかな、オリスティン」
「オリスチンじいちゃん、そんな茶番は絶対に終わらせましょう!」
僕は何度も力強く頷いた。
「オレクサンダーよ、それで良いかな?」
「うん、私も賛成だよ。パパ」
「あはは! また暗黒騎士がパパって呼んだ!」
お腹を抱えて大笑いするアリサを目にした僕たちは、苦笑いしたのだった。
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