【第34話】土下座謝罪
僕は、ふとある件を思い出した。それは20年ほど前に、祖父オリスチンが伝説の勇者の装備品を売り払ったことだった。
「じいちゃん、ずっと気になっていたことを訊いてもいい?」
「何でも訊くが良い」
「じいちゃんが伝説の勇者の装備品一式を質屋に売り払って村を追放された事件だけど、どうしてあんなことをしたの?」
「なんじゃ、そんなことか」
「そんなことか、て。僕はまだ生まれていないからよく分からないけど、村では大騒動になったらしいじゃないですか!」
「あのとき、わしは暗黒騎士として赴任する日が近づいておったんじゃ。まさか、村人や友人たちに、魔王配下の暗黒騎士として赴任しなければいかん! なんてこと言えぬじゃろう。それで、あえて村を追放されるようなことをわざとしたんじゃ」
「そんな理由で伝説の勇者の装備品を売り払ったなんて······」
「オリスティンよ、そんな残念がることはないじゃろう。わしは魔王だから財力はある。また買い戻せば良いではないか」
その
「マルコロと······確か鋳造所のアレンじゃったな。どうしたんじゃ、急に真っ青な表情になりおって」
「じいちゃん、怒らないで聞いてくれる?」
「可愛い孫に怒るもんか」
「実は、伝説の勇者の装備品は、もうこの世にないんだ」
「なんと! この世にないとは、どういうことじゃ?」
「魔法の調理道具になっちゃったんだ」
僕の言葉を耳にした
「勇者の剣や鎧などの武具が調理道具に?」
「もう! オリスティンの説明はまどろっこしいのよ! ハッキリとサクッと言っちゃえばいいじゃない!」
アリサの言葉に
「じゃあ、孫の未来の嫁に訊こうかの。伝説の勇者の装備品はどうなったんじゃ?」
「鋳造所で溶かされて調理道具に変えられたの! 今では踊る火龍亭の鍋や包丁として活躍してるわ」
「なんと!」
アリサの説明に
「オリスチンさん、申し訳ございません! 」
「魔王様、どうかお許しください!」
マルコロとアレンは土下座しながら悲鳴のような声で謝罪した。
「美味いんか?」
「その調理道具で作った料理は美味いんか?」
マルコロとアレンは目を丸くしながらお互いの顔を見合せた。
「じいちゃん、美味しいんだよ! その調理道具のせいもあって踊る火龍亭は毎晩大賑わいだよ」
僕は、未だに固まっているマルコロとアレンの代わりに答えた。すると、
「そうか! 村へ帰ったらたらふく食べようかの」
そのとき、僕は疑問が浮かんだ。
しばらく村にいなかったじいちゃんと父さんは、村人たちにどう説明するんだろう? それ以前に、村のみんな、きっと驚くだろな。
僕は、土下座した2人と一緒に笑い合っている
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