【第46話】サーガが語る真実
魔皇帝ネイスメイスは魔界に残る1000年前の
「1000年前、わしの先祖が人間界を支配したことは、人間界での史書にも記されておろう。しかしじゃ、史書には我が先祖の魔皇帝と伝説の勇者との戦いについては詳しくは記されておらん」
魔皇帝ネイスメイスがそこまで話すと、
「確かに、わしは史書を読んだが、伝説の勇者が魔王を倒した、としか記されておらんのう」
「魔界の
「え! 今、なんて言いました?」
僕は魔皇帝ネイスメイスの話を遮るように声をあげた。魔皇帝ネイスメイスは僕に顔を向けた。
「勇者ブラッドメイスは魔皇帝との戦いが始まるや否や気絶したんじゃ」
魔皇帝ネイスメイスが繰り返し発した「気絶」という言葉に、僕は信じられない思いで魔皇帝を見つめた。
「ネイスメイス殿、勇者が気絶、とはどういう意味なんじゃ?」
「勇者ブラッドメイスは勇敢に剣を振り上げながら魔皇帝に立ち向かっていったのじゃが、途中で石につまずいて転んだらしい。そのときに顔面を地面に打ちつけて気絶してしまったんじゃ」
「そ、それでどうなったんです?」
その先が気になった僕はテーブルに身を乗り出すようにしながら魔皇帝ネイスメイスに訊ねた。
「結局、プランローズの
魔皇帝ネイスメイスの話を耳にした僕は憤慨した。
「そんな馬鹿なことがあるわけないじゃないか! それでは伝説の勇者はタダのマヌケじゃないか! そもそも、そんな
僕は感情的になって声をあげたけれど、魔皇帝ネイスメイスは落ち着いていた。
「この1000年前の
「そ、そんな······」
僕は魔皇帝ネイスメイスの説明が信じられなかった。
「魔王オリスチンの孫よ、もし疑うのなら大天使エスフェルに訊ねてみるがよい。エスフェルは1000年前の戦いを見ておったからの」
「大天使エスフェルに訊ねろ、と言われても、大天使を呼び出す方法なんて知らないよ」
僕はそう答えるとうつむいた。
「我が孫オリスティンよ。ネイスメイス殿が語ってくれた
「じいちゃん、それどういうこと?」
「実は人間界に残る史書にはの、伝説の勇者は魔王との戦いでは傷ひとつ負っていない、と記されておるんじゃ。ただ、勇者の顔面には何かをぶつけたような跡が残っていたらしい。魔界の
「オリスティン、そのときの目撃者に訊ねてみれば良いじゃない?」
突然の母さんからの提案を耳にした僕は、何を言ってるんだろう、と思いながら母さんに顔を向けた。
「母さん、何を言ってるの? 目撃者に訊ねろって、そんなことできるわけないじゃないか。1000年も昔のことなんだよ」
「ま、まさか、レイリア様!」
僕が不平を口にすると、アリサが驚きの声をあげながら母さんを見つめた。
「さすが、アリサさん。気づいたようね。そうよ、大天使エスフェルを召喚するのよ」
母さんが微笑みながら答えた。
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