【第45話】親睦会

 僕はアリサを伴って魔王じいちゃんたちがいる大広間へ入った。


 大広間に入ると、先ほど僕たちが座っていた長テーブルに魔王じいちゃんや魔皇帝ネイスメイス、母さんたちが座っていた。もちろん、上座には魔王じいちゃんが座り、その左右には魔皇帝ネイスメイス、母さんが座っていた。マルコロとアレンも左右に分かれて向かい合うように座っていた。


 僕とアリサは長テーブルに近づくと、それぞれ左右に分かれて向かい合うように着席した。


 テーブルには、すでに着席した人数分のコップが置かれていた。コップの中は青い液体で満たされている。それを見て、すぐに霊薬エリクサーだと分かった。


「みんな着席したようじゃの。それでは、魔皇帝ネイスメイス殿との親睦会でも始めようかの」


 魔王じいちゃんは魔皇帝ネイスメイスと母さんの顔を交互に見ながら親睦会の開始を宣言した。


「これ、エリクサーだよね? こんなのを魔皇帝にも飲ませて大丈夫かな?」


 僕はコップを指差しながら、正面に座っているアリサに囁いた。


「大丈夫よ。万が一のことが起きても、レイリア様がいらっしゃるから」


 アリサが小声で返してきた。


「では、終戦を祝って乾杯!」


 魔王じいちゃんがコップを掲げながら乾杯の音頭をとった。


 僕は霊薬エリクサーが入ったコップを掲げながら、魔皇帝軍と戦ったのは母さんだけじゃないか、と思い、魔界から侵攻してきた魔皇帝と一緒のテーブルに座っていることに違和感を覚えた。


「魔王オリスチン殿、これは霊薬エリクサーではないか!」


「さすがは魔界の皇帝、ネイスメイス殿。よくお分かりじゃな」


霊薬エリクサーは魔界でも珍しい飲み物なのに、人間界では普通に飲んでおるのか?」


「わしにとっては酒のようなものじゃ。毎日飲んでおるわい」


「な、何と!」


 魔皇帝ネイスメイスは驚きの声を上げながら魔王じいちゃんを見つめた。


「それにしてもネイスメイス殿、どうして我々の世界に攻め込んできたのじゃ?」


 魔王じいちゃん霊薬エリクサーを飲み干したあとに魔皇帝ネイスメイスに訊ねた。魔王じいちゃんが発した質問は、ここにいるみんなが知りたかったらしく、全員の視線が魔皇帝ネイスメイスに注がれていた。


「1000年前、我が先祖の魔皇帝が人間界を支配したように、わしもその野望を実現したかったからじゃ」


 魔皇帝ネイスメイスはそう答えたものの、顔までローブで覆っているため表情は見えない。魔皇帝ネイスメイスは言葉を続けた。


「だが、攻め込んだは良いが、まさかプランローズの魔術師ウィザードがいるとは思っても見なかったから、核爆裂の魔法を連発するレイリア殿を見て恐くなってしまったんじゃ」


 魔皇帝ネイスメイスの言葉を耳にした僕は疑問を感じて唸った。


「ネイスメイスさん、1000年前にネイスメイスさんの先祖である魔皇帝は僕の先祖である伝説の勇者に倒されたはずです。それなのに、どうして勇者の仲間だった魔術師ウィザードプランローズの末裔に恐れをなしたんですか?」


 僕は魔皇帝ネイスメイスに対して質問をぶつけてみた。すると、魔皇帝ネイスメイスは首を振った。


「魔界には1000年前から伝わる物語サーガがあるんじゃが、そこには人間界を支配した我が先祖である魔皇帝のことが詳細に記されているんじゃ······」


 魔皇帝ネイスメイスは魔界に存在する1000年前の物語サーガの内容を詳しく話してくれた。その内容を耳にした僕たちは、驚愕の真実を知ることになるのだった。


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