第3章 薄焼き卵

診断結果がでた

このままの生活をするとあと2ヶ月もしないうちに入院することになるだろう、と告げられた………

診断書を持って会社に向かう

医師から、今はまだ俺の判断に任せても大丈夫だろうと言われた


「おはようございます 遅くなり申し訳ありません」

「あぁ…おはよう 新規の仕事のファイルを君のパソコンに送ってあるから目を通してくれ そこに締切も書いてあるからあとは自分で確認してくれ」

「はい…一応これ…」

そう言って俺は医師からの診断書を上司に渡した

「あっ…あぁ」

「失礼します」

あの様子では医師の診断書が目に入る可能性はほとんどないだろう


「はぁ」

そう俺が席に着くと

「おい 志季 簡単にサボらないでくれよ 休まれるとその分周りが請け負わないといけなくなるんだからな」

「はい…すみません」

この先輩は前の上司に媚びを売って気に入られていた…が今の上司には通用せず、媚びを売りに行って跳ね返されていた。

そいういことを嫌っていそうな人だからな…

でもデスクが横というだけで俺に八つ当たりしてくるのはどうなんだ。

本当にめんどくさいから純粋にやめて欲しいのだが………

こんな感じだから職場が明るい雰囲気な訳もなく…ほとんど男しかいないむさ苦しい空間でどんよりとした重い空気が流れている



今日中に帰れることを願ってパソコンの電源を入れる。起動を待つ間机の上の整理をする。ほとんど毎日行っているこの作業がいつもと違う気がした。朝のスタートがいつもと違ったからだろうか。倒れたおかげでいつもより長く寝ることができたからだろうか。毎日続かない今日だけが特別なことは分かっているがいつもよりスッキリした仕事始めだ。


いつも通りの仕事量を真剣にこなす。世間一般の量がどれぐらいのものなのかなんて知りはしないがろくに昼休みもなく働き続けて帰りが終電もしくはそれを過ぎるなんてことがあっていいのだろうか。そのうえ土日祝なんて返上。前の上司の時は先輩におまえの仕事のスピードが遅いからだ、なんて言われていたけど今じゃ俺の方が先に帰ることがほとんどだ。まぁずっと媚びを売り続けて仕事を減らして貰ってたから仕方ないんだけど。

うちの会社は昼休みという時間が決まっている訳では無い、だから12時を過ぎたら各自が好きなように昼休みに入る。俺はいつも出社までの道中で何かお腹にたまるような物を朝ごはんを買うついでに買っておいてそれを片手に仕事をするのだが…今日は朝ごはんを買いに行っていないので買い忘れてしまった。俺は近くのコンビニで何か買ってこようと席を立った。

「おい 何してんだ?」

「お昼買い忘れたので買ってこようと思いまして」

「はぁ?そんなことで仕事の手を止めるって言うのか?ふざけてんな」

はぁ……やってられない 言い争っても体力を使うだけだ、無駄だと分かっているので俺は何も言わず、軽く会釈し、席を離れた。

「チッ!調子に乗りやがって」

そんなイラだった先輩の声が後ろから聞こえてきた。


あーほんとに腹が立つ!仕事できないのはあんたの方だろ!なんで俺が文句言われないといけないんだ?ふざけるなよ!……

「はぁやめやめ無駄な体力使うと損する。あんな先輩なんかどーでもいいって。考えたって何も起こらないんだから!」

そう自分に言い聞かせてみる。俺のストレスの原因、仕事の量なんかじゃなくてあの先輩のような気がしてきた……


俺はいつも、早く帰って寝たいから早く仕事を終わらせたい!という気持ちをやる気にして仕事をしている。だから急いでコンビニで買い物を済まして会社に戻った。

全ては早く帰って寝るために!


「やっと戻ったか…生意気な」

「はい。戻りました。」

めんどくさい先輩にバカにした笑顔を向け、俺は仕事を再開させた。エネルギー補給のみを考え、買ってきたスムージーと片手で食べられるパンを口に流し込む。

朝食べた卵かけご飯が恋しい。あんなにテンションが上がったのは久しぶりだった。

とりっこか……また近いうちに行きたいな……


そして…一応の就業時間である18時をすぎる直前、俺は上司に呼ばれた


まぁ就業時間に帰れたことなんてないし、今日もまだまだ仕事は片付いてはいないのだが…

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