第15.5話 外泊、お別れ、再会だよ(当話が抜けてました、ごめんなさい)
2022.4.8 アップする時に抜けていました。申し訳ないです。
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クマに乗って爆走した私達は、フォーグの提案で最初に出会った場所に戻った。
本来であればもう帰るべきなのは分かっているけど、家出をした手前、その日の内に帰るのは嫌なのです。
王子の元から去る間際に言われた言葉が今でも耳に残っている。
『お前、リリィルアだろ!逃げるな!畜生、木々が絡みついて、ええい、邪魔だあ!うおおお!』
今後、間違いなく王子に会う機会があるハズ。その時にどうやって言い訳をするか、その事ばかり考えている。
焚火は温かく落ち着く。
となりがフォーグと言う事が少し不満なのですが、優しく私の体を支えてくれている。
次第に眠くなり、フォーグの膝枕で私の意識が薄まってゆく。
日は完全に落ちて、周りが静かになる。聞こえるのは風の音と、虫の声、そして焚火の音だけだ。
「フォーグさんは、思ったよりも優しいのですね」
「思ったよりってなんだよ。そうだな、妹が生きていればリリィと同じくらいな筈でな、ほっとけないんだ」
「妹さんはどうしてお亡くなりに?」
「まぁ、昔の話だ。買い物に連れて行った妹が、いつの間にかはぐれてしまってな、そしたら貴族の馬車を止めてしまってるじゃないか、そのままバッサリとな。良くある話だ」
「その貴族ってもしかして」
「ああ、ロングナイト侯だ、俺の手で殺せるなら喜んで罪人になる」
フォーグの手に力が入り、悔しさが伝わってくる。
貴族ですか、私もその一人なだけに他人事とは思えない。
貴族の不始末は貴族でつけるべきだと思う。平民がどれほどの大義や正義をもって貴族を殺した所で、良くて本人の打ち首、悪ければ家族やパーティーにまで及ぼす可能性がある。
私がそんな事を成し遂げれるのかと言われると無理だ。私だけではできないのは分かっている。
でも、成し遂げなければ問題が起こるのは確実。
「そんなの、妹さんが喜ぶと思います?そういうのは私に任せてください」
「リリィなら殺しても罪にならないのか?」
「ならないようにするのですよ、すぐにできる訳じゃないですが、2年の内にどうにかします」
「そうか……、ありがとう。俺に出来る事があれば言ってくれ、どんな事でもする」
「はい、その時はお願いします、ギルド経由で指名依頼しますね」
「ああ、任せてくれ!」
男泣きするフォーグを見ない様にした。
きっと見られたくないでしょうから、気づかなかった事にしています。
しばらくして、静かな時間に巻き戻った。
フォーグは寝ないのだろうかと考えながら、何も考えない時間が過ぎる。
ガサゴソと誰かが近づく音がする。
フォーグが小声で大丈夫だと教えてくれる。
寝ていた訳じゃないけど、少し落ち着いし膝枕に別れを告げて上体を起こす。
「フォーグ、やはりここに来てたか」
「ああ、はぐれた時は、一番印象に残っていた場所に戻れってのがアンタの指示だからな」
「二人共、無事でなによりだ」
「あ、居たあ、リリィちゃん、無事でよかったあ」
「リリィちゃん大丈夫だった?怪我してない?回復魔法いる?」
「(ふんす、ふんす)」
捕まったはずのパーティの方々が現れた。皆さん、怪我もない様子で安心しました。
捕まった時の話を聞くと、王子が居なくなった事に気が付いた時点で、王子の仲間の人が騒ぎ出し、最初に縫いぐるみのクマが勝手に動き出し走って逃げだした時点で大混乱に陥り、その隙をついて逃げ出したという。
そんな事して大丈夫なのか確認すると、それは問題ないそうです。
そもそも、冒険者パーティーが冒険者パーティーを捕らえるという意味が判らない、ギルドでは表向きパーティー同士の戦闘は禁止しているので特に何か言われる事はない、という事だそうです。
もし彼らの証言があったとしても巨大な縫いぐるみの熊がどうこ言ったところで馬鹿にしてるのか夢でも見てるのかと言われるのがオチだという事です。
という訳で、今後問題になるのは、私の方だけだそうです。
つらい、本気で辛いです。
さて、ここで一晩眠り、朝に屋敷に帰りましょう。
私は縫いぐるみのチャックを開き、中に入り込んだ。
「なにそれ、寝袋にもなるの!?」
「うわ、なにこれ、この中、気持ちいい!私もコレ欲しいなぁ」
「図体縮めてから言え、どう考えても入りきらないだろう。クマが可哀想だぞ」
「フォーグ!あんた相変わらず失礼ね!」
フォーグとメルナは本当に仲が良さそう。
まぁ、そんなの無視して無情にも一人でねるのですけどね。
と、思っていたら、ナナリムさんが入り込んできた。
私よりも少し身長が高いくらいなので、一緒に寝るくらいはできる。ちょっと狭いかもだけど。
「ここでねるの?」
コクコクと頷く、ナナリム。
抱き合って眠る事に慣れているのか、私を包み込む様に横になった。
誰かと一緒に寝るのなんて、いつぶりでしょう。
お姉さまは一緒に寝てくれないのは、自分の寝相が悪いからだとか言っていました。
今度、お母さまにねだってみようかな。
朝になり、身だしなみを整える。
ポケットに入ってた魔道具『紅花Ⅳ』を使うだけで汚れは綺麗になる。髪に保湿櫛(魔道具)を通して寝ぐせを抑えた。
あとは皆さんと食事、私の分はお弁当だけど、残りのを全て平らげた。
そして、冒険者の方々と別れる事になった。
またいつか会おうと言われたのが嬉しく、元気に手を振った。
屋敷の姿が見えると、たった一晩なのに懐かしく感じる。
二階のバルコニーに飛び乗り、こっそりと部屋の中に入った。
服を着替えて、そのままベッドに潜り込む。
ベッドの中が凄く落ち着く、ここが私の城だー!って気分になる。
だけど、そこで違和感があった。
なにか視線を感じる。
上体を起こし、まわりを見渡す。
誰も居ない、そう思った瞬間だ。
「おかえり。随分遅かったね」
その声のする方向には、誰も居ない筈が徐々に姿を現す。現れたのはエレンラント第四王子だった。
「きゃ……」
咄嗟に口を塞がれた。声が出せない。
「君の友達の得意としたスキルだろ、見慣れてるんじゃないの?」
「何しに来たの!?」
「何って、婚約者の顔を見に来たのさ」
「昨日見たばっかりでしょ!そうだ、着替え覗いてたでしょ!スケベ!変態!えっちい!」
「そんなのは見て楽しい様な体つきになってから言いな」
「失礼な人ね!最低!」
「おっと、人に魔物押し付けて逃げるような人よりは失礼じゃないだろ?やった事を親にばらしてもいいんだぜ?」
「ぐっ……」
くやしい、言い返せない。やっぱりこの人、最低だ。
「君と結婚するつもりはないから安心しろ、何年か婚約者で居るだけでいいし、それはお互いにメリットがあるハズだ、病弱設定なんだからどこかに呼び出される事もないだろうし、問題ないだろう?」
「設定って言わないでよ、病弱なのは本当なのよ」
「あんなに元気に出歩けるのに??嘘だろ」
「本当よ、だってまともに歩けないもの」
「フーム、そうか、それでクマをつかって移動してたのか、成程な」
ニヤニヤとして言うあたり、ムカつく。
でも、どうして婚約者が必要なの?結婚話を断り続けるのが面倒だからってお決まりのパターン?
病弱令嬢なんて、それこそふさわしくないでしょう。
だからって、お姉さまに押し付ける訳にはいかないし…。
そうだ、相手も私を利用しようとしているのだから、私だって相手を利用してもいい筈よね!
ふっふっふ、こうなったら骨の髄まで利用してあげる、私と婚約した事を後悔するがいいわ!
「ご理解いただけたみたいで何よりです。殿下がそういうお考えでしたら婚約者と考えるのはやめて、お互いにお友達くらいに思う様にしましょう」
「友達……、う、うむ、そうだな、それくらいの方が気楽だ」
「所で、どこか行きたい所があるなら連れてってやる。なんせ表向きは婚約者だからな」
「話し聞いていました?歩けないって言いましたよね?馬鹿なんですか?」
「ば…馬鹿とはなんだ、突然遠慮がなくなったな…」
「ええ、お友達ですから、これ位は普通ですよ」
「そうか……、これがお友達の普通……」
もしかして、もしかすると、殿下てば、お友達居ないの??
私でも4人も!いるのに??(←最近まで居なかった人)
うわ、ハズカシー。プークスクス。
「所で、殿下はどうして、あんなところに来られていたのですか?」
「殿下と呼ぶな、お友達なんだからエレンでいいぞ。父上の指示ではあるのだが、なんだったかな、確かイベント?とかいう物を阻止しなくてはならないらしい」
イベントって!!そっか、国王陛下が転生者なら、知っててもおかしくない。だからってそのワード出す??馬鹿じゃないの?
でも、私が頑張らないでも、勝手にクリアしてくれたりするって事?
よし、ちょっと精霊災害の話を振ってみよう。王子に全部やらせれば何の苦労もしなくて済むわ。
すると、王子も興味を示しましたが、どうやらその状態になって現れる魔物に興味を示したのです。
「いえ、だから、そのような災害が起こると大迷惑なんですよ」
「そうなのか?それを防ぐのが姫の願いか?」
姫って私そんな立場だっけ。伯爵だから、まぁ間違いでもないのかな。
ちょっと照れるというか、慣れないというか。落ち着かないですね。
「ええ、私の願いです」
「じゃあ、精霊女王ってのは強いのか?俺でも勝てるかな!?」
「何、馬鹿な事言ってるんですか!絶対に戦わないでくさい!ステイ!ステイですよ!」
「え、えー…、駄目なのか…、それならドラゴンたちと戦った方がよっぽど楽しいな」
なんなのこの人、思考が常人と離れすぎ!!
というか、凄く疲れる。この猛獣を放し飼いにしてた感じ、手綱を引っ張る強さが半端ないんですけど?
「おっと、その前に一旦出直そう、昼前に到着する予定だから口裏合わせ宜しくな、じゃあまたな!」
一方的に別れの言葉を告げ、颯爽とバルコニーから去ってしまいました。
なんなの?何もかも突然過ぎるんだけど。
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