第3話

布団の上で、僕は眠れずにいた。びゅん、という感じで、よかぜは僕を家まで届けてくれた後、くるりと背を向けすぐに太陽が沈んだ山の方へ飛んで行った。


「遅かったじゃない!心配するから、いつも早めに帰って来なさいって言ってるでしょ!」

おかあさんは今日もいつもと同じで、

「大物捕れたか?」

いつもより早く帰っていたおとうさんはやっぱり呑気だ。

「何かいいことあったんでしょ?」

おねえちゃんはいつもちょっとするどい。

今日あった事がいいことなのか、わるいことなのか、僕には分からなかったけど、始まったばかりの夏休みの晩御飯の時間は普通に過ぎて、僕は「今日はもう眠いから、もう寝るね。おやすみー」と早々にベッドに寝そべっていた。


ベッドの上で今日あったことを思い返してみる。

ひる、と、よかぜ。そっくりな二人のおじさん。違っていたのは目の色くらいだったな。でも、ひるはちょっと弱々しいように見えたし、よかぜは少し怒りんぼっぽくも見えた。あんな風に空を飛べるなら楽しいだろうに、二人とも楽しそうには見えなかったな。みたま、って言ってたっけ、なんなんだろ、あれ。ひるはあれをよかぜに見つけられたくなかったんだな、きっと。悪い事しちゃったな。でも、自分から名乗ったり、ちゃんと家まで送ってくれたりしたから、よかぜは悪い人じゃないと思うんだけどな。あ、そういえば、僕はひるには偉そうに自分から名乗らなきゃって言ったくせに、よかぜには自分の名前を言ってないな……。

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