第36話 PK脱落
「和美、澪奈。ひとつレベル上げと行こうぜ」
「「OK」」
幸いMPを回復するアイテムは豊富に持ってきている。俺らはMPの出し惜しみをせず戦う。
「サンダーレイン! フレイム・レイン! フレイム・バースト!」
和美が全体攻撃を手当たり次第にバラ巻きながら、ときおり高威力呪文を使用。アヌビス達を焼き払って行く。
俺も、MPを惜しまず体術を連発して、次々アヌビス達の首をはねて行った。
和美も凄いが、やはり澪奈も凄い。
この仮想世界では、システムのアシストのおかげで、運動神経の悪い人でも戦士のように戦える。
例えば剣士の俺にはソードスキルが働く。
仮想世界なので物理法則も思いのまま。
例えば現実世界で鉄の剣を振れば、剣の重さや反動で逆に体が持って行かれるし、一度振ったらすぐには戻せない。
でもこの世界では、剣は実際よりも少し軽いし、剣の反動や体にかかる負荷を無視して、動かしたいと思った通りに体を動かせる。
姿勢制御もシステムが補助してくれるので、転んだりもしない。
でもそんなのとは関係なく、最初から運動神経のいい人は、その超人生をいかんなく発揮できる。
「はっぁあああああああ!」
アヌビスの軍勢が、澪奈一人の拳と足で次々切り崩されていく。
澪奈の拳が、脚が、全てアヌビスたちの顔面に吸い込まれる。
アヌビス達はウィークポイントに渾身の一撃を喰らい続け、一人、また一人と砕け散って行く。
回避系スキルを使わなくても、澪奈は持ち前の動体視力と運動神経だけで巧みにアヌビスの攻撃をすべてかわす。
そして澪奈本人の戦闘センス。
システムにアシストされた動きや、システム上設定された技の威力ではなく、純粋にアヌビスの動きから生じた隙を見逃さず、的確に拳や蹴りを叩きこんで行く。
MPを消費する体術は、肉体強化や通常攻撃の威力を向上させるものを使っているようだ。
他の四パーティーは、まぁ俺らの戦闘を観戦しながら、防戦をしている。お前ら、戦う気ないだろ?
一〇分後。
アヌビス達は隠し扉の中に戻り、隠し扉も消えた。
どうやら罠は終了らしい。
そうなるとやることは一つだ。
俺、和美、澪奈は示し合わせたようにして、部屋の出入り口の前に並んだ。
三人同時に奥義発動の準備をして、鉄の門が開いた。
「げげ! おまえらなんで!?」
きっと俺らが死んだか、でなけれはかなり消耗していると踏んでいたのだろう。
勝利を確信していた赤の団の顔が驚愕に染まった。
「「「お返しだぁあああああああああああああ!!!」」」
三人同時に、今覚えている最強奥義を発動。
赤の団のHPバーは一撃で半分以下に減った。
そのまま追撃で、吹っ飛んだ赤の団へ猛攻を加え続けると、次々ガラスとなって砕け散った。
これは完全な正当防衛。プレイヤーキラーには当たらない。
「くそぉおおおおおお! こんなところでぇえええええええ!」
最後の一人が砕け散ると、俺は一度息を吐いてから振り向いた。
「おーい、悪いけどみんなのエーテルくれよ。MPを回復させたい」
「あんたらを守る為にあたしらばっか戦ったんだから。アイテム提供ぐらいいいでしょ?」
MPを回復させるアイテムであるエーテルは豊富に持ってきているが、使わない方がいいに越したことは無い。
「あ、ああもちろんさ。みんな、一人一個ずつエーテルを」
黒の団のリーダーが筆頭になり、みんな一人一個ずつ、合計一八個もエーテルがもらえた。
おかげで俺ら三人のMPは全回復。
またいつでも最高の状態で戦える。
「じゃ、プレイヤーキラーも倒したし、行こうぜ」
赤の団、リタイア。
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