第32話 続・鬼畜プレイ



「あーお兄ちゃん! あっちにも他のパーティーがああああ!」

「何ぃい!?」


 俺と和美は、また別のパーティー、というか、最初に和美がフレイム・バースとでぶっとばしたパーティーへと襲い掛かる。

 連中は俺らの攻撃を防ぎながら声を張り上げる。


「ぬお! てめぇらこんなことして恥ずかしくねぇのかよ!? 普通こういう時は、どのパーティーがモンスターを倒すか競争に」

「知らねぇえええんだよ! てめぇらと俺らとじゃああなあ! 背負っているものが違うんだよものが! 俺らの代わりに義眼脱脂綿入りの体になりたくなかったらさっさと街へ帰りな!」

「んだと~! あ!?」


 敵パーティーが声を上げると、俺の前にウィンドウが開いて、経験値とお金が加算された。

 うしろを振り向くと、もうレオンバンカーはいない。


 澪奈が倒すのに成功したらしい。


「ぬはははははっ! これがレオンバンカーの全素材は俺らパーティーだけのものになった! さっさと他を当たるんだな!」

「ッ~~~~!」


 悔しそうに顔を歪めてから、敵パーティーは立ち去った。

 俺もそうそうに次の獲物を求めて歩きはじめるが、ムカついて仕方がない。


「ふんっ、人が狩っている最中のモンスターを横取りとか、どっちが恥ずかしいんだか!」

「まったく、強いプレイヤーに戦わせてトドメだけ刺そうとか下衆の極みよね!」

「…………」


 澪奈は何も言わなかった。


「お兄ちゃん、あれ」


 盆地にさしかかると、和美が下を指さす。


 俺らの眼下では、とあるパーティーがドラトンという巨大な亀型モンスターと戦っていた。


 ドラトンは莫大な経験値をくれるものの、防御力が高過ぎて時間がかかる為、俺らは無視している。


 でも、経験値だけは本当にたくさんくれる。

 どれだけの時間をかけたのかは知らないが、ドラトンのHPバーは、もう数ミリしか残っていない。


「あいつらのHPも少なめだけど、余程ヘマをしない限りはドラトンの経験値をもらえるだろうな……」


 俺の中でちっちゃな悪魔が顔を出す。


「あたし達は無視する相手だけど、でも攻撃力重視のパーティーならいけるかもね♪」

「うん、そうだな……」


 俺の中でちっちゃな天使が顔を出して悪魔と喧嘩、二人は合体して堕天使になった。


「おっと手が滑った」


 俺はドラトンと戦うパーティー目がけて、しびれ爆弾を投げた。


 ちゅどーん!


『ぎゃあああああ!』


 体が痺れて動かなくなったパーティー四人は、ドラトンに踏みつぶされて爆散、する直前に和美が、


「サンダー!」


 ドラトンに攻撃を加えて戦闘を引き継いだ。俺はスキップしながら刀を構える。


「いやぁ~、僕の手が滑ったせいでごめんねぇ~、でもだいじょうぶ君達の犠牲は無駄にしないよ♪ ドラトンは僕らがきっちり倒してあげるから♪ もっとも街の神殿送りになった君達に経験値は加算されないけ・れ・ど♪」

「ちょっと何やってんのよ澪奈! あんたも手伝いなさいよね!」

「喰らえドラトン! 俺の渾身の一撃をー!」

「彼らの仇よ! 食らいなさい! あたしの正義の一撃をー!」


 ドラトンは爆散。


「ふっ、仇は取ったな」

「ふっ、彼らの死は無駄にしなかったわ」

「舌の根のかわかないうちにぃいいいいいいいいいいいいい!」


 澪奈が一気に駆け下りて来る。


「ちょっと二人ともさっきと言っていることが違うじゃない! 人の獲物を横取りするだなんて恥ずべき下衆な行為じゃ」


 俺は腐りきった眼(まなこ)で、


「えぇ!? 何を言っているんですか澪奈ちゃん!? 僕は自らの過ちを悔いて彼らの死を無駄にしないよう自分の正義を貫いたんですよ!」


 和美は濁りきった眼で、


「そうですよ澪奈ちゃん! わたくしは彼らの仇を討つことこそが自身の贖罪であり責務であると悟り仇を討ちましたのよ!」

「おまわりさぁーん!」


 俺らのレベルが一つ上がった。

  

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