第31話 鬼畜プレイ



「しびれ爆弾!」

「ぎゃあああああ!」


 俺らの狩り場。経験値を効率よく稼げるその草原に現れた他のプレイヤーに、俺は容赦なくしびれ爆弾を投げつけた。

 俺は本能を剥き出しにして、


「ゲヒャヒャヒャ! よっしゃ和美! 今のうちに狩りまくるぜぇ!」


 和美は犯罪的な目で、


「当然よ! あ、あんなところにも! ここはあたしらの狩り場よ! フレイム・バースト!」

「のぎゃああああああああ!」


 他のプレイヤーが行動不能にしてから、俺らは獲得経験値の多いグリーンウルフを倒しまくった。


 グリーンウルフは素早いがHPと防御力が低く、上手くやれば一撃で倒せる。

 敏捷値の高い俺らならウルフに追い付き攻撃するのは容易かった。


「刀利君! レオンバンカーだよ!」

「なにぃ! そいつはレア防具素材を山ほどくれる奴だ! 絶対倒すぞ!」


 澪奈の声のするほうへ視線を向けると、ちょうどフィールドに新しくモンスターがポップされるところだった。


 地面から湧きあがる光が成すのは、翼の生えた巨大なライオンだ。


 ハーフ・ハンドレッドにおけるモンスターは無限湧きで、常に一定の数になるようにされている。


 つまりプレイヤー達がモンスターを狩りまくれば、モンスターは絶滅状態になる。ただし一定時間経つと狩られたモンスターはまたフィールドにポップされて、しばらく放っておくと、また同じ数に戻る。


 レオンバンカーは元々の数が少ないうえに、一度倒されると新しくポップされるまでのスパンが長く、会えるのは珍しい。


「おらおらおらぁ! さっさと素材をよこせ素材をよぉ!」


 俺はレオンバンカーをメッタ切りにして、

 澪奈はレオンバンカーをフルボッコにして、

 和美はレオンバンカーに至近距離から攻撃魔法をブチ込みまくった。


 レオンバンカーのHPバーはみるみる減っていき、とうとう四分の一にまでなった。


「よし、もうすぐレア素材が」

「おい、あそこにいるのレオンバンカーじゃねえか?」

「しかも弱ってんじゃん」

「ラッキー」


 その時、俺の中の猛獣が否、デビルが目を覚ます。

 目を血走らせ獣の咆哮を上げ、憎き盗っ人共を蹴散らす為に俺は駆ける。


「奥義! デスパレードスラッシュ!」

「奥義! ブラッディソウルクラッシュ!」

『にぎぇええええええええええええええええ!』


 俺と和美が、レオンバンカーに叩きこもうとしていた奥義を他のプレイヤー達に叩き込んだ。

 全員一度は吹っ飛ぶが、油断はできない。


「潰せ和美ぃ!」

「お兄ちゃんも手ぇ抜くんじゃないわよ!」


 俺と和美は、レオンバンカーを狙う他のプレイヤー達と戦闘を開始。


 敵は五人、しかし退くわけにはいかない。


 男には、やらねばならぬ時があるのだ!


 俺は最速の剣、日本刀で敵の戦士、槍兵、盾兵を翻弄しながら正確に斬り、刺し、蹴り飛ばす。

 和美も槍で弓兵と魔術師の攻撃を捌き、華麗に翻弄しながら顔面に攻撃魔法を炸裂させていく。


「ここは俺らに任せろ澪奈!」

「あたしらが押さえている間にトドメを!」

「う、うん……」


 澪奈は何か板挟みに会っているような面持ちでレオンバンカーとの戦闘を再開した。

 澪奈の実力なら、一人でも残りのHPを削れるだろう。


「ぐはははは! どうだ貴様らのHPはもうレッドゾーン! 早く街へ帰らないと死んでアイテムやお金を失っちまうぞ!」

「それともあたしらにアイテムをくれるって言うの?」


 敵パーティー五人は、自分のHPを確認するとバックステップで俺らと距離を置いた。


「く、くそぉ……ペガサスの羽!」


 敵パーティーは帰還アイテムを使い、その場で光となって消えた。

 今頃は街の入口へワープしているだろう。


「あーお兄ちゃん! あっちにも他のパーティーがああああ!」

「何ぃい!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る