第23話 トリオでボス討伐


「うりゃあああ! 和美ちゃん行ったよー」

「アイス・レイン!」


 カメレオンレックスのいる森の中。


 澪奈が殴り飛ばした赤いイノシシが、他のイノシシ達と同じところへ叩きつけられる。


 そこを見計らって、和美がイノシシの群れに広範囲冷気魔法をかける。


 赤いイノシシ達は氷漬けになって、氷が砕け散ると本体も砕け散り、俺らに経験値とお金が加算される。


 パーティーで敵モンスターを倒した時、経験値は全員共通で、同じ量の経験値が加算される。これを利用して、新規プレイヤーはベテランプレイヤーと一緒のパーティーを組むことで素早くレベルアップができる。


 ただしお金は全員で山分け。


 ただし人数が多ければその分、強い敵や多くの敵を倒せるので、パーティーを組むとお金が手に入りにくいということにはならない。


 アイテムはそれぞれのモンスターから得られるアイテムを、モンスターにトドメを刺した人がもらえる。


 ただしアイテムは他のプレイヤーに簡単に渡せるので、同じパーティーの仲間であれば、貢献度を考慮したり公平を期するためにアイテムを分けあうのは珍しくない。


 というか、そうしないと喧嘩になりパーティーが崩壊する。


「和美ちゃんの魔法すごいね、一発で全員倒せちゃった♪」

「いや、まぁ今のは澪奈がダメージ与えてたのと弱点属性だったからなんだけどね」


 澪奈の職業は格闘家。それも俺らと同じ、敏捷性重視の。


 ただし澪奈は筋力の成長にも力を入れていて、防御力と魔力の成長は抑えているらしい。


 通常攻撃の攻撃力は『筋力+武器攻撃力』

 魔法攻撃の攻撃力は『魔力+魔法攻撃力』(武器である杖には魔力を高める効果がある)

 体術攻撃の攻撃力は『筋力+武器攻撃力+体術攻撃力』


 三種類の数字を足す為、一見体術攻撃が特に見えるが、体術よりも魔法のほうが攻撃力が高めに設定されているなど、調整が行われている。


 澪奈は格闘家だが、武器としてグローブをはめている。


 そんでグランガチ戦で見せた雷のパンチ。あれは体術だ。


 俺も持っているが、実は戦士系の体術には属性をまとった、魔法染みたものがある。

 こういったものの場合は一番足すモノが多くて、


『筋力+武器攻撃力+体術攻撃力+魔力』となっている。


 ただし戦士系は魔力が低いし、こうした技は属性攻撃をするという意味合いが強く体術攻撃力じたいもそれほど高くない。


 特定の職業が強くなりすぎないよう、調整は万全らしい。


「刀利君、和美ちゃん、あたしのマップにボス反応よ。きっとクエスト対象のカメレオンレックスね」

「よし、俺が前を行こう」


 そう言って、俺は二人の前に出て森の草を踏み歩いた。

 ここへ来るまでの戦闘を見る限り、澪奈はかなり強かった。


 なんだかんだ言って、俺と和美は二人がかりで一界のボスを倒している。


 でも澪奈はソロプレイ。


 一人で二界から五界までのボスを倒している。


 けど一つだけ疑問があった。


 澪奈のレベルは俺らよりも高かったけど、でもだからって一人でボスを倒せるものだろうか?


 それだけゲーマーとしての腕があったとも言えるが、そんな凄腕ゲーマーなら、素顔プレイヤーである澪奈をどこかで見たことがあるはずだ。


 でも、俺の知る限り一流ゲーマーに澪奈なんて奴はいないし、顔も初めて見る。


 それによく考えてみたらソロプレイで格闘家?


 技の出は早いけど全体攻撃も少ないし攻撃力も低め。


 ソロプレイヤーで格闘家は珍しい。


 何か秘密でもあるんだろうか? あとで聞いてみよう。


 俺の視界がカメレオンレックスを捕えたのは、その時だった。


 外見としてはカメレオンの頭をした小型のティラノサウルス。が、急加速してきた。


「横へ跳べ!」


 カメレオンレックスは草花を踏みつぶし、木々を頭突きで砕きながら直進。


 サイドステップで避けた俺らのすぐ横に、無残にも薙ぎ倒された大木が倒れてくる。


 それから一鳴きして、カメレオンレックスは振り返りざまに口から長すぎる舌を出し、鞭のようにしならせながら俺らに振るった。


 真上に跳躍。


 さっきまで俺らのいた近くの木々が、巨人の斧でも通り過ぎたように伐採された。

澪奈が叫ぶ。


「今のあいつは緑色。刀利君、今は斬撃が弱点だよ!」

「了解!」


 俺は持ち前の敏捷スキルで疾走。

 攻撃的なカメレオンレックスは自由自在に舌を使い攻撃してくる。

 地面を抉り、樹木を貫通するソレをかいくぐり、俺は一気に懐へもぐりこんだ。


「連続斬りだあああ!」


 俺は腰の鞘から雀丸を抜刀。

 目にも止まらなう刀撃の嵐を、その太い右ももに叩き込んだ。

 カメレオンレックスのHPバーが減って、体色が緑から赤へと変化する。


「和美ちゃんお願い!」

「任せてっ」


 魔法戦士である和美の魔法は、相手に近づくほど、至近距離に近づくほど威力が上がる。

 俺に気を取られているカメレオンレックスの背後から、猛スピードで和美が跳びかかった。


「サンダー!」

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