第18話 謎のソロプレイヤー現る
俺は家に帰るべく、鞄を取りに家に戻った。
今日一日は授業に出ないといけないと思っていたが、思わぬ展開だ。
まさか学校側がここまで配慮してくれるだなんて。
教室の自動ドアを抜け、ニコニコ笑顔で入室すると、
ザッと、六〇個の目が同時に俺を映した。
話しかけて来る人は誰もいない。
さっきまでのヒーロー扱いが嘘のようだ。
俺が席に向かおうとすると、近くに座っている奴が慌てて逃げる。
みんな僅かに怯えた表情で、俺の様子を観察している。
これってやっぱ、向日葵達のせいだよな?
俺は元々話す相手なんていないし、賞金目当てでたかられないだけむしろ前よりいいんだけど、なんでかな~。俺はちょっと寂しかった。
◆
「カッカッカッ。気にすんじゃねぇよ。学校の連中なんてそんなもんだ!」
何故か帰り道には、向日葵達もついてきた。
左隣に向日葵、右隣に桜、後ろに牡丹だ。
痛快そうに笑う向日葵にはムカつくが、立場上文句も言えやしない。
「あーあ、それにしても高校ですかー、私達も本当なら今頃……」
俺と同い年である三人のうち、ショートヘアーの桜が寂しそうに呟いた。
「うだうだ言うんじゃねえよ、それに隣の芝生は青いってな。高校行ってねぇと、高校生活が幸せに見えるもんだ。おい刀利、てめぇ高校生活楽しいか?」
ロングヘアーの向日葵が、俺に水を向けて来た。
「別に、ただ毎日、家と学校を往復しているだけだし。クラスメイトは自分勝手な連中ばかりだし。学校にいるより家にいるほうが楽しいよ」
「なっ?」
と向日葵は桜に首をかたむけた。
牡丹も、
「そうですよ。独身貴族は結婚に夢を見て、自由な一人っ子様は兄弟に憧れ、うっ、目にゴミが」
「サングラスしてても入るんだ……」
俺が聞くと、牡丹はサングラスを外して目をこする。
「水中メガネじゃないんですから、横の隙間からゴミくらい入りますよ、あ、取れた」
「!?」
目を開けた牡丹を見て、俺は己が目を疑った。
超可愛い。
牡丹の大きな瞳は眠そうにちょっと垂れていて、でもなんだか温かみがあって、なんていうか、おっとりお姉さん、っていう感じだ。
「ほえ? どうかしたんですか、刀利くん?」
「言葉づかいまで!? ということはもしかして!」
俺はショートカットの桜桃、ではなくかけているサングラスにつかみかかる。
「うわー! やめろー! これが、これがないと私はヤクザの桜からモモちゃんに戻ってしまうんだぁー! あ! あっ! ああああああああ!」
俺は抵抗する桜の腕に負けじと、強引にサングラスを奪う。
そこには、くりんとした可愛らしい、つぶらな瞳があった。あまりの可愛らしさに、思わず保護欲をそそられる。
牡丹と言い桜と言い、こいつらこんなトンデモない美少女だったのか!?
名刺の顔写真が、サングラスフェイスだった理由が解る。
こんな顔じゃあヤクザとして迫が無い。
次の瞬間。何かが俺の後頭部をわしづかんだ。
「テメェ……人の妹分に何してくれてんだゴルァ」
後ろを向くと、長いまつげに縁取られた、切れ長の瞳が鋭い眼光で俺を刺してくる。
うわぁ、そういえば向日葵は見たまんま、刃物みたいな美人だっけ?
「テメェ今すぐ内臓売るぞゴルァ!」
「ぶひー!」
◆
「じゃあ、俺はここで」
和美の入院している病院の前で、俺は向日葵達三人に軽く手を上げて別れを告げた。
「あん? 家に帰るんじゃねぇのかよ?」
「妹が入院しているんだよ。うちの妹、筋肉が弱る病気でさ。自分じゃ立って歩くこともできないんだよ」
「「「え?」」」
ひまわり達のサングラスが、ずるっとずり落ちた。
「一人じゃ何もできなくて、だから出来る限り一緒にいてやりたいんだ。それと内臓の件、妹のはあんまり高く売れないと思うからさ、俺のが高く売れたらあいつは勘弁してやってくれな。じゃあ」
三人を背を向けて、俺は病院の玄関へと足を運んだ。
◆
「ね、ねえ姐さん……」
「さっきの話……」
いまいち覇気の無い、桜と牡丹の声に向日葵はハッとする。
「ババ、バキャロイ! あたしらはヤクザもんだぞ! 他人の不幸にいちいち同情なんかしてられっか! ほら、さっさと金回収しに行くぞ! うちが金貸してる奴は他にもいるんだ!」
向日葵は何かを振り切るように、バタバタと走り出した。
◆
二界、大神殿、掲示板前にて、
「よしお兄ちゃん! 二界のボスもあたしらで倒すわよ!」
「おうよ!」
掲示板に新しい情報が更新された。
『二界ボス撃破。三界へのゲートが開きました』
「「へ?」」
◆
三界、宿屋にて、
「じゃあHPもMPも回復したし、ボスダンジョンへ出発だ!」
「おー!」
俺の視界に『新着情報』の文字が現れる。
なんだろうとメインメニュー・ウィンドウを開いて、ニュースを指でタッチする。
すると、
『三界ボス撃破。四界へのゲートが開きました』
「「えっ?」」
◆
四界、ボスダンジョン前にて、
「前の界からまっすぐ来たからな、今度こそ俺らが一番乗りだろ」
「レベル上げもしないで来たんだから当然よ!」
俺の視界に『新着情報』の文字が現れる。
『四界ボス撃破。五界へのゲートが開きました』
「「えっ!?」」
◆
五界、ボスダンジョン内、ボス部屋へ向かって全力疾走中。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ぬぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」
『新着情報』
門を蹴り破ると、ボス部屋は空っぽだった。
『五界ボス撃破。六界へのゲートが開きました』
「「えええええええええええええええええええええええ!?」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます