第8話 開会式
三日後。
無料ゲームではなく、一本一万円もする高額ゲームであるハーフ・ハンドレッドを買った俺と和美は闘技場いた。
闘技場を埋め尽くす人、人、人。
客席全てと、中央のバトルフィールドにも何千というプレイヤーが整列している。
当然ここは仮想空間、ハーフ・ハンドレッドの世界だ。
アバターを作った人もいれば、俺と和美のように素顔をアバターにしている人もいる。
でも共通しているのは、その緊張感だ。
何せ賞金は一〇億円。
優勝を目指す欲望が質量となって、本体からアバターを通して伝わって来る。
でも俺らだって負けられない。
何せこっちは内臓がかかっているのだから。
古代ローマのコロッセオのようなその舞台は、全部で一〇か所以上もあって、それぞれに一〇万人収容されているらしい。
最初にクリアした人が優勝、賞金一〇億円。
当然一日でも早くプレイしている人が有利で、稼働初日から一〇〇万人のプレイヤーが参加。
開会式に参加している。
パーティー登録をしている俺と和美は、客席に隣り合って座り、頭上に浮かぶトラエニの社長の顔を見上げている。
『以上だ、じゃあみんな、楽しんで、そして一日でも早くクリアしてくれ。会社が倒産でもしない限り、賞金一〇億円は確実に払うから、はっはっはっ♪ それでは、準備はいいね?』
上空に映された社長が両腕を広げ、
『ゲーム開始だ!』
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼‼』
全プレイヤーの姿が突如として消失。
俺の視界も光に包まれて、視界が晴れると、街のどこかにワープしていた。
あのまま闘技上から出ると将棋倒しになるため、一〇〇万人のプレイヤーを街中に散らしたのだろう。
それでも流石は一〇〇万人。
辺りにはプレイヤー達が何人もいた。
俺のすぐ隣には、パーティー登録をしている和美が、中世ヨーロッパ風の街並みを見回していた。
「よし和美、まずは道具屋だ」
「ええ」
俺と和美は走りだし、走りながら喋る。
「まず道具屋で状態異常を回復するアイテムを三つずつ買うんだ」
「レベル上げの弊害は状態異常だからね」
「ああ、ハーフ・ハンドレッドの状態異常は数分で自動的に回復するけど、弱体化している間に襲われたら、HPが残っていても危険だからな。レベル上げを急ぎ過ぎていきなり外へ出たり、ただHP回復のポーションを買えるだけ買うのは素人だぜ!」
「お兄ちゃん! あの店の看板!」
「よっしゃあ、行くぜ和美!」
「行くわよお兄ちゃん! 全ては優勝して」
俺と和美の目が、同時に血走る。
「「ヤーさんから内臓を守る為に‼」」
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