第7話 妹とチャットルーム


 電脳世界。チャットルームにて。


 俺はH2を使ってネットにアクセス。

 俺と妹しかアカウントのない、プレイベートチャットルームへと意識を飛ばした。

 電子の肉体で中世ヨーロッパのお城、それもお姫様の部屋風とかいうチャットルームへ降り立つ。

 テーブルの席に着くと、壁に浮かんだ光の扉から、妹の和美が出て来た。

 ルームに合わせて、お姫様みたいな白いドレスを着ている。


「って、兄さんなんでフルアーマーなのよ?」


 眉を八の字に寄せる和美に、俺は兜を脱ぎ捨てて答える。


「お前の指定した部屋ならこれかなって適当に選んだんだよ。ていうかじっくり選ぶ余裕なんかねぇんだよこちとらなぁ!」


 一気にまくしたてる俺に、和美はますます眉間に縦皺を刻みこんだ。


「意味がわかんないわよ」


 感情エフェクトとして、和美の頭上に?マークが浮かんだ。


「いいから座れ!」


 和美が椅子に座ると、俺は開口一番。


「和美! 俺と一緒にハーフ・ハンドレッドで優勝してくれ! でないと俺らは脱脂綿の詰まった体にされちまう!」

「ますますわかんないわよ馬鹿! ちゃんと説明しなさいよね!」


 今にも殴りかかって来そうな形相の和美。

 俺は落ち着くよう自分に言い聞かせて、クールダウンした。


「えーっとつまりだ。単刀直入に言うぞ。俺らの親父がヤクザに五億円の借金をして逃げた。さっきうちにヤクザが来て借金返さないと俺らの内臓を全部売るとか言いだしやがった」


 和美の額に青筋が浮かび、両手でテーブルを叩く。


「はぁ!? フザケんじゃないわよあのゲロブタ親父! どんだけ子供に迷惑かければ気が済むのよ! 今すぐ探し出して内臓全部ヤクザに差し出してやるわ!」


 犬歯を剥き出しにして過激な事を言う我が妹。

 そんな妹に俺は、


「当然だ!」


 と言ってやった。


「でもそれは急場をしのいでからだ。でないとゲス親父を見つける前に俺らが脱脂綿入りの体にされちまう」

「そうそれよ、なんなのよさっきのハーフ・ハンドレッドで優勝って?」

「それも単刀直入に言おう。ハーフ・ハンドレッドで最初にラスボスを倒した奴には賞金一〇億円が払われるらしい」

「は? 何それマジで?」


 和美が目を丸くして、ぽかーんと口を開けて固まった。


「マジもマジマジ大マジよ。これ見てみ」


 俺は空間にウィンドを開いて、トライアングル・エニックスが配信した、ハーフ・ハンドレッドの最新PVを見せた。


「うわぁ、本当にやってるよ……でもこんなのやったら超Sランクの廃人ゲーマーがうじゃうじゃ集まって来るわよ。お兄ちゃん、あたしの足引っ張らないでよね」

「おいおい、お前は『無双の戦乙女』なんて言われているけど、俺だって『最強の無課金ユーザー』として名を馳せているんだぜ。お前こそせいぜい俺のアシスト頼むぜ」


 なんて言って余裕を見せるが、和美は半目でにやりと笑う。


「そうねぇ、お兄ちゃんはあたしがお守りしてあげないと駄目だからねぇ。いいよー、あたしがバブちゃんにアシストしてあげる」

「ムキィーッ!」


 感情エフェクトで、俺の頭から湯気が上がった。


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その養成学校への入学を懸けて、草薙大和は幼なじみの天才少女、御雷蕾愛との入学試験決勝戦に臨んでいた。しかし結果は敗北。試験は不合格となってしまう。


そんな大和の前に、かつて大和の命を救ってくれたシーカーの息子、浮雲真白が現れる。傷心の大和に、大事なのは才能でも努力でもなく、熱意と環境であり、やる気だけ持って学園に来ないかと誘ってくれたのだった。念願叶って入学を果たした大和だが、真白のクラスは変人ばかり集められ、大和を入学させたのにも、何か目的があるのではと疑われ──。


ニワトリが飛べないのは才能でも努力でもなく環境のせいだ! 無能な少年と師匠の出会いが、一人の英雄を誕生させる──。

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