第50話 麻香麻&あずきタイム


 夕方……


「夕方からは」

「ボク達だよー」


 テレビゲームの機械とディスクをセットし、歩人を中心にして麻香麻とあずきは歩人を挟むようにしてソファに座った。


「今日は負けないからな」

「ボクだって負けないよ、なんたって二対一だからね!」

「フフン、ギルギア(大人気格闘ゲームギルテ○ギアの略称)でわたしに勝てるとでも思ってるんですか?」


 画面上で、紅い剣を持った男と巨大なイカリを持った女の子、そして巨大な鎌を持った美男子が表示される。


 麻香麻と二人の間に熱い火花が散り、三人は口々に言う。

歩人が「じゃあ行くぞ!」

あずきが「ギルギア十本先取勝負!」

 麻香麻が「スタートです!」




 五分後……


 目を点にしたまま動かない二人の横で麻香麻は高笑いをしながらコントローラーを置いた。


「ハーハッハッハッ、このわたしにギルギアで勝とうなど一〇年早いですよ!」


 対戦モードを二対一のチーム戦にして戦い、一試合三〇秒もかからず一方的に十連勝されては歩人もあずきも、もはや負け惜しみしか出なかった。


「ええい、麻姉の得意なギルギアで負けても悔しくねえからな! 言っておくけどストリートファイタ○なら絶対負けないからな!」

「ボクだって鉄○シリーズなら負けないんだから! ボクの本領は○拳シリーズなんだ!」


 だが、そんな負け犬の遠吠えなど少しも効いてる様子は無く、麻香麻は勝利者の笑みを浮かべる。


「へー、この前わたしにボロ負けしたばかりなのによく言えますねえ」


 すかさず救いのヒーローが登場したのは、二人が言葉に詰まって唸り声を上げた時だった。


「じゃああたしが参戦しよう!」

「その声は」

「蓮姉!」


 蓮華はソファの後ろからニュッと姿を現すとあずきの隣に座り、四つ目のコントローラーを握った。


「麻香麻! この前ソウルキャリバ○で五回中三回は負けたけど、ここであんたの息の根を止めてやるよ!」

「ふーん、三人がかりなら勝てるとでも?」


 よきせぬプレイヤーの登場に、だが麻香麻はまだ余裕の表情である。


「当たり前だ! あたしのポチョムキンバスターでへし折ってやるよ!」




 二〇分後……


「ハァ ハァ みんな、中々食い下がりましたね……」


 結果は麻香麻の一〇勝九敗三分け、さすがに三人同時となると苦戦したが、それでも勝つあたりから、麻香麻のゲーマーっぷりが覗える。


「でも、三人がかりで勝てないなんて皆さんよっぽど弱いんですね」


 ゲームに関しては容赦ない麻香麻の発言に三人が奮起する。


「んだとこのクソオタクが!」と蓮華。

「そうだそうだこの腐女子!」とあずき。

「えーっと、このメガネ!」と歩人。

「なっ、三人がかりですら勝てないからって負け惜しみ言わないでくださいよ! そんなんだからみんな謎解きステージで詰まるんですよ!」

「それ関係無えだろが!」

「FFⅩの神殿パズル一発でできたからって威張るな!」

「謎解きは時間かけるからおもしろいんだよ!」

「なんですってー!」

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