第6話 姉に襲われる朝
「蓮姉、それはこの状況を指すんじゃないのか?」
歩人の被害、無理矢理服を脱がされ抱き寄せられる。
蓮華の加害、嫌がる歩人を脱がせて下着姿で無理矢理抱き寄せる。
二秒間の沈黙のあとに蓮華はグッと親指を立てて、
「法律上、強姦罪は男だけに適応するんだぞ」
「随分と理不尽な法律があったもんだな」
「まあそれは置いといて」
「置いとくなよ」と肩を落す歩人を無視して蓮華は気を取り直し話を続ける。
「問題は桜の奴がその山岡って奴の事を信じ切っているって事なんだよ、何か問題が起きる前にあんたから山岡と付き合うのやめるよう言ってくれない?」
「そんなの蓮姉が言えばいいだろ、何でわざわざ俺に頼むんだよ?」
「それがあいつも始めてできた友達なもんだから舞い上がっちまってさあ、一応あたしからも言ったんだけど『山岡さんは確かに見た目がちょっと不良っぽいけど悪い人じゃないもん』だってさ、盲目になるのは恋愛だけにしろっての、自分の眼で見た事しか信じないのは悪くないけど、困ったもんだよ」
「だから、何で俺なんだよ? そういう事は母さんに相談しろよ」
「無理無理、桜の年頃考えたら目上の人間の言う事は問答無用で反発するに決まってるさ、そう、今のあいつの目を覚ますには姉ちゃんや母さんじゃなくても目下の、弟からのお願い事っていうのが一番なんだよ」
その説明に、歩人は腰と顎に手を当てて息をついてから顔を上げる。
「さっすが医大生、人間の心理には詳しいね、安心しろって、姉さんにそんな野郎が近づいているって解った以上、蓮姉に言われなくてもそいつブン殴ってでもさく姉から引き離すし、何より蓮姉の頼みを俺が断るわけねえだろ?」
歩人が二カッと笑うと蓮華はパッと顔を明るくして声を上げる。
「ありがと歩人ー、お礼にいっぱい気持ち良くしてあげるからなー!」
間髪いれず歩人の顔は蓮華の胸元に押し付けられる。
脱出は困難を極めるだろう。
正直に言えば、蓮華は歩人よりも背が高い、つまりリーチが長いのだ。
確かに歩人は小柄な男子だが、それでも蓮華の女で一七五センチメートルというのは反則である、しかも、体重も歩人よりいささか重い。
「歩人ぉ」
歩人は逃れようともがくが、体に力に入らない、なぜなら、
(くっ、しっかりしろ俺……)
はっきりと言うが、蓮華は超がつくほどの美人である。
赤毛のショートカットに飾り立てられた顔は健康的な明るい表情を絶やさず、先ほどのように真剣な話になると、途端に勇ましい女傑のような、凄味と野性味を帯びる。
女なら誰もが嫉妬したくなる程肉感的な姿態の美しさは弟のひいき目ではなく、間違いなく世界最高部類に入るレベルである。
思春期真っ盛りの歩人の体が逃げたくないと歩人の思考を拒んでしまう。
助けを呼ぼうにも口を塞がれ、女とは思えない圧倒的な腕力で押さえ込んでくる蓮華から逃れられるはずもない。
歩人はズルズルと掛け布団の中へと引きずり込まれる。
それから、眞由美(まゆみ)が助けに来てくれたのは五分後のことであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます