第5話 長女 赤毛×爆乳×最強 蓮華


 春の暖かな陽光をカーテン越しに受けながら、南城歩人の意識は徐々に覚醒していく。

 徐々に体の感覚もハッキリしてきて、布団の温かさがより強く感じられる。


「…………」


 本当に、温かくて、気持ち良くて、すべすべしていて、底無しに柔らかいのに確かな弾力で返してきて……全身に絡み付いてきて……?


「んっ?」


 と、歩人が目を開けて布団(?)から顔を離した。

 ややぼやける視界に、なにやらやたらと重量感のあるモノが映る。

 中央に谷間を刻んでなだらかな稜線をひいているソレは先端だけ色が違くて……


「って、またこのパターンかい! 起きろこの色ボケ女!」


 すばやく体を離し、眠りこける蓮華の額にするどい手刀をビシッと叩き込む。

 が、鉄球でも叩いたような感覚と同時に手に響き渡る鈍痛、そして攻撃を受けた側の蓮華は「んあ?」と焦点の合わない目を半開きにしてむくりと起きた。


「ったく、また俺のベッドに入りやがって、さっさと起きろよ、っと、さく姉はもう起きたのか」


 歩人がふと桜のベッドが空なのを確認して視線を蓮華に戻すと、


「歩人ー!」


 突然迫ってくる蓮華の顔、次の瞬間、歩人は蓮華に絡みつかれるとレスラーや柔道家バリの腕力で無理矢理パジャマの上を脱がされ上半身が裸になってしまう。


「れっ、蓮姉!?」


 当たり前のように蓮華も上半身には何も身につけておらず、二人の肌が直接触れ合う。


「ぬぁあああっ!!」


 背中に削岩機が当たったようなダメージを受けて歩人が悲鳴をあげた。

 すると蓮華が耳元で囁いた。


「歩人、ちょっと頼まれてくれない?」


 普段とは違う、マジメな声音に歩人は悲鳴を止めて聞き入る。


「歩人、あんた桜の奴に最近友達できたの知ってる?」

「さく姉に友達? それマジ?」


 蓮華の言葉に歩人は小首を傾げた。


 無理も無い、桜は内気で消極的な性格のせいで昔から友人らしい友人は皆無で、いつも姉達や弟の歩人とばかり一緒にいたのだ。


 特に、歩人は早生まれのため一つ上の桜と同じ学年で小学生の時から常に同じクラスだった事もあり、桜と歩人はほぼ二四時間一緒と言っても過言ではなかった。


「本当だよ、あたしの情報が間違っていた事ある?」

「確かに、最近俺と一緒にいない時間があるような気はするけど、でもさく姉だってもう高校生だぜ、交友関係が増えても問題ないだろ? むしろ今まで一人も友達がいないってほうが問題だったんだから」

「あたしだって、マトモな奴となら桜がどこの誰とダチになろうが構わないさ、だけど今回の相手は違う」


 蓮華の言葉は徐々に凄味のようなものを帯び始める。


「ヤバイ奴らなのか?」

「ああ、知り合いに訊いたんだけど、今桜が付き合ってる山岡って女、万引きだのエンコーだのマトモな噂が無いし、最近じゃ無理撃ちやチャラ撃ちの手伝いに美人局(つつもたせ)までやってるって話だ」

「ひでえな、っで、ツツモタセとか、無理撃ちチャラ撃ちってなんだ?」


 弟の無知さに嘆息を漏らしてから、蓮華は表情を引き締める。


「美人局っていうのは男女がグルになって別の男から金を巻き上げる手口で、女がそこらの男を誘っておきながらやる事やろうとした瞬間グルの男が出てきて『てめえ人の女に手え出したんだから金払え』って脅す事、そして」


 蓮華の眼に僅かな憎しみがこもる。


「チャラ撃ちってのは遊びでやる性行為で、無理撃ちってのは嫌がる相手を無理矢理犯す、つまり強姦(ごうかん)のことだよ、レイプとも言うな」


 チッ、と舌打ちをする蓮華同様、歩人の表情も険しくなり、いたって真面目な顔で蓮華と見つめあい。


「蓮姉、それはこの状況を指すんじゃないのか?」

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