第50話 勝利
「よしよし恐かったな、もう大丈夫だぞ」
「でも鷹徒くん、わたし達のために銃で撃たれて、鷹徒くんは全然大丈夫じゃないよー!」
泣き喚く雫結の頭を鷹徒が撫でると、今度は美羽が腰元に抱きついてきた。
「うぅ……この駄犬……すっごく恐かったんだから……ホントのホントに恐かったんだから、なんでもっと早く助けにこないのよ……」
「……そうだな、ガキに恐い思いさせちまってゴメンな、あと、それとは別に、もう一つ悪かったな」
そう言われて、美羽は「えっ?」と顔を上げた。
「さっき言ったろ、俺もさ、この試験でお前に仕えるまでは、あのゲス野郎と同じような事思ってたんだよ、金持ちは自分達の事しか考えない腐りきった人間だってな」
「それは……」
鷹徒と傷の男の言葉を一つ一つ思い出しながら、美羽はうな垂れた。
「でもよ、そりゃ間違いだった、確かに、今まで俺が会ってきた連中はみんな腐ってたけどよ、金持ちの中にはそうじゃない奴もいるし、金持ちだって貧乏人みたいに苦しんでいるんだよな……お前みたいによ」
そう言って、鷹徒が今度は美羽の頭を撫でながら優しく笑いかけると、美羽の顔が首から額まで徐々に紅くなっていく。
「た……鷹徒…………」
「んっ? 今お前俺の事名前で呼んだか?」
「い、言ってないわよバカ犬!!」
美羽の顔の赤みがさらに増して、美羽は鷹徒の金的を蹴り上げた。
「!!?」
銃に肉を抉られても眉一つ動かさなかった最強のケンカ師は硬直し、その場で石像と化した。
「ああもう靴が汚れちゃったわ、これ屋敷に帰ったら捨てないと」
「あうううう! た、鷹徒くんのになんていう事を……」
「はぁ? 何言ってんのよ、この駄犬にはこれぐらいで十分よ、だいいち牛女が心配するようなことじゃ……何、もしかしてこいつ種牛だった?」
「タネウシ!!!?」
雫結が口から火を吹かんばかりに赤面して床に倒れ込んだ。
「だ、大丈夫か雫結?」
「あはは、仰向けに倒れたんじゃバストクッションも役立たずね」
そこへもう一言、
「みんな私の事忘れてない?」
「「あっ」」
と鷹徒と美羽が同時に鶫を振り向いた。
「むぅ、某達の分は残っていないな」
「さすがはたっちゃんと言ったとこかしら」
ちょうど鷲男と雀も部屋に入ってきて、
「ぬっ、雫結が鼻血を出して倒れている!? 一体誰に殴られた!?」
「って、ホントだ!」
驚く男二人に美羽は冷静な態度で、
「ただスケベな妄想しただけでしょ」
と言った。
「まったく、いつまでつぐたんの事忘れているのよ」
雀がナイフで縄を一閃して、ようやく鶫は開放された。
「どうやらこれで終わりみたいね、後は一刻も早くパーティー会場に向かわないと」
冷静な思案をする雀に、鶫と美羽、そして目を覚ました雫結が目を点にして驚いていた。
「どうやらこれで終わりみたいね、後は一刻も早くパーティー会場に向かわないと」
冷静な思案をする雀に、鶫と美羽、そして目を覚ました雫結が目を点にして驚いていた。
鶫が「あんた誰?」
雫結が「雀ちゃんこんなカッコよかったっけ?」
美羽が「アンタ本当にチビっ子?」
そして鷹徒が「いや、正真正銘朝方雀だから安心しろ」
「そう言う事、とにかく事後処理は白鳥家に連絡したからそっちに任せるとして……ッ!」
急に雀の存在感が薄くなり、まるで空気が抜けたように何かが小さくなって消えたように感じながら、後ろに、ぽてんと倒れた。
締まりの無い顔でぐでーっと横たわりながら一言。
「疲(ちか)れた……」
鷹徒は雀を小脇に抱えて当惑する雫結達に説明をする。
「俺もよくわからんがさっきの状態は長く続かなくて元に戻った後はしばらくこんな感じだ」
「いや、ますますわからないわよ」
「うんうん」
鶫と雫結がそれぞれ反応してから、急に美羽が悲鳴を上げる。
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