第44話 テロリストの野望
ビルの中にある、教室の二倍はある広さの部屋で男達は笑っていた。
彼らの目の前、部屋の中央には床から三本のポールが立てられている。
中央のポールには白鳥家の四女、白鳥美羽(しらとりみう)。
向かって左のポールには鷹徒の幼馴染の沖之雫結(おきのたゆう)。
向かって右のポールには鷹徒達の班の班長、渡鳥(わたりどり)鶫(つぐみ)がそれぞれ縛りつけられている。
「白鳥家のご令嬢が良い格好になったもんだな」
男達の中から額に傷跡のついた男が進み出て、そんな安っぽいセリフを言って、
「フンだ! なーに安っぽいB級映画の悪役みたいな事言ってるのよ! いいから早くこの縄ほどきなさいよ、ベタ過ぎるのよ!」
傷の男は笑いを崩さずに美羽に近づく。
「ほー、お嬢様もB級映画なんて見るのかい?」
「お嬢様に近づくな!」
鶫の声は無視される。
「前に燕の部屋で一緒に見たのよ、あの子B級映画のチープ感がたまらないとか言って、アタシには最後まで理解できないシロモノだったわ、アンタ達の頭と同じでね!」
小さく鋭い音がして、美羽は自分の足元を見る。
小指が入る程度の穴があった。
顔を上げれば、傷の男の手にはサイレンサー付きのハンドガンが握られている。
「言っておくがオモチャじゃない」
銃口を美羽の額に突きつけて男が睨む。
「悪いが、こっちはテメーのその苦労を知らない平和ボケした脳天いつでもブチ撒ける事が出来るんだ、少しは人質らしくしな」
いつもの高慢さを失い途端に怯えた表情になる美羽を見て鶫は声を張り上げた。
「お嬢様に触るなと言っているだろう!!」
「だまれよ!」
サングラスの男が近づき鶫の腹を蹴り飛ばす。
鶫が嗚咽(おえつ)を漏らし、とうとう雫結の目から涙が溢れる。
「うぅ……鷹徒くぅ~ん」
雫結の弱々しい声に、スキンヘッドの男が厭(いや)らしい笑いを浮かべる。
「さっきからお前メソメソうるせえな、どうせならもっといい声で泣かしてやろうか、ああ?」
顔を近づけ、つま先から頭のてっぺんまでを舐めるような目で眺め回し、雫結の胸を直視しながらスキンヘッドの男は息を荒げた。
「ボスぅ、安全を確保しなきゃなんねえのはそのチビだけなんすよね? じゃあ他は生きてりゃ何したって……」
「まあ待て、物事には段取りってもんがあるだろ? メイド二人は脅しの材料だ」
「材料?」
ボスと呼ばれる傷の男にスキンヘッドの男が聞きなおした。
「ああ、俺達の言う事が聞けなかったらメイドを一人ずつ犯していくってな、そして証拠映像を送ってこうメッセージを添えるのさ『これでも要求を呑まないようであれば今度はテメーの娘をこうする』ってな、それまでは我慢しろ」
頷きつつ、だがスキンヘッドの男は我慢の限界といった様子で雫結の体に魅入った。
そこへさらにサングラスの男も近づく。
「でもこいつ珍しい目と髪してんな、俺らで楽しむのもいいけど調教してからマニアに売れば相当な高値で取引できるぜこりゃ」
胸と髪と目、またこれのせいで酷い目に合うと、自分の体を呪いながら雫結はすすり泣いた。
「ッ……ちょっとあんた達、その要求って何よ!?」
腹部の痛みに耐えつつ、あくまで気丈な態度を保つ鶫に、傷の男は待ってましたとばかりに語り始めた。
「そんなに聞きたいなら教えてやるよ、俺の要求はただ一つ、貧しい者達の救済だ」
「救済ですって?」
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