第30話 ハイスペックメイド
変な姿という言葉を聞いて、鷹徒は雫結のスペックを確認してみる。
モデル並の高身長。
美しい白い肌と髪に真紅の瞳(神秘的)。
常に潤んだ目。
泣きボクロ。
物静かで温和。
学年トップクラスの美人。
スリムなのに巨乳というスレンダーとグラマーの特徴を持った奇跡のボディライン。
頑張っている姿が健気(けなげ)で可愛い。
無能と思っているが気付いていないだけで泳力はトップクラスである事が判明。
(雫結って絶対に自分のこと誤解してるよな……)
鷹徒は雫結の鈍さに呆れてつつ、彼女の話を聞き続けた。
「そうやって鷹徒くんは、いつもわたしの為に色々してくれたよね、今日のわたしを使って子供達から犬を取り返したのだって、わたしの為なんだよね?」
鷹徒の持つスプーンの動きが止まり、額から大量の冷や汗が流れる。
「はい? いったい何言っちゃってるんすか雫結さん? 俺がそんな、いやいや、お前に華を持たせるためにそんな、ほら、あれはあれだよ、全部お前の実力で雫結がいないと俺だけじゃあの状況はどうにもできなかったって、うん、いやホントだよコレ」
「鷹徒くん、嘘つくと必ずいっぱい汗かくよね」
自分の耳を触りながら、
「いや違うって、もう東京も夏だろ? 普通に暑いだけだって」
「鷹徒くん、誤魔化す時いつも耳触るの、気付いてる?」
鷹徒はわざとらしくアクビをする。
「いやー、急に眠くなっちゃったな、ちょっと横にならせてもらうぞ」
鷹徒が床に寝転がり、寝たフリをすると、雫結は紅潮した顔をうつむかせた。
「そ、そういえば鷹徒くん、あの、昔はさ……よくわたしの家に泊まったりしてたよね、それでね……その、もし迷惑とかじゃなかったら、もう遅いし、今日はこのままわたしの部屋に泊まって――」
「くかー…………んー、雫結、あと五分……」
顔を上げて、雫結の目が点になった。
寝ていた。
寝たフリで横になった鷹徒は寝息をたてて、本気で眠っていた。
やっとの思いで一念発起した発言を聞き逃されて、雫結は激しく落ち込みつつ、自分のベッドの掛け布団を鷹徒にかぶせてあげる。
「…………」
掛け布団をかけて自分の部屋で寝る鷹徒の姿を見て、雫結は少しだけ欲に負けて、鷹徒の掛け布団を持ち上げた。
「おじゃましまーす」
同じ布団に入り、鷹徒と一緒に寝ている事に興奮しつつ、雫結はさっきよりも大きな欲にも負けた。
「んっ……」
雫結の唇が、鷹徒の頬に触れた。
それから、鷹徒に触れるギリギリのラインまで近寄って、雫結は可愛く笑った。
「えへへ、鷹徒くん……」
鷹徒合意の事ではないが、一緒に寝ているという事実にご満悦で雫結が胸をときめかせると。
ゴロン、と鷹徒が不意に寝返りをうち、覆い被さってきた。
「ひゃうわぁおおおおおおおおッッ!!!」
雫結の中で大砲が火を噴き、ダイナマイトが暴発し、爆撃機が爆雷を落としてさらにミサイルが発射した。
つい先ほど、⑱禁越えの妄想をした雫結である、鷹徒が自分に覆い被されば……
「はうわぁ! はうわぁ! はうわぁああああああ!!」
鷹徒の重みで潰れた自分の胸を見て、脳内は活字表現不可能モードになる。
そして、耳元で寝息をたてている鷹徒のほうを向いた瞬間……」
「???」
唇が触れていた。
鷹徒と自分のだ。
舌は触れていない、本当に唇が触れ合っているだけのドライキスで、唾液交換も粘膜接触も無いが、沖(おき)之雫結(のたゆう)には核兵器並の威力だった。
「!!!!~~~??~~?~~?!!!!《表現不可能》」
雫結は大量の鼻血を出しながら意識が混濁し、そのまま血の海に沈んだ。
奇(く)しくもそこは、三日前に鷹徒が雫結の下着の海に沈んだ場所だった。
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