第4話 このメンバーで大丈夫か?


「ふえっ!?」


 話をふられた途端、雫結の肩が跳ね上がる。


「えと、わたしはその、元々家にそんなにお金無かったし、進学迷ってたんだけど……鷹徒くんがサーヴァントアカデミー行くって言うから……」


 チラリと目線が隣の鷹徒に移る雫結を見て鶫が問う。


「貴方達、恋人同士だったの?」

「!!?」


 雫結は体ごと跳ね上がり顔が燃え上がる。


「わわ、わたしと鷹徒くんはそのえとだからこりゅびひょ……」


 舌が回らないほどまくしたてると鷹徒が肩を二度叩く。


「ははは、俺と雫結はそんなんじゃねえよ、時々間違えられるけどただの幼馴染だって」

「うぅ……」


 ほがらかに笑う鷹徒の言葉に、ただでさえ普段から愁いを帯びている雫結の瞳が本当に潤み始めた。


(この男、まさか気付いてない?)


 口角をピクピクとさせながら鶫はやや語気を強める。


「まあいいわ、でも友達が行くから自分も行くというのは進路選択における愚かな行為だということだけは覚えておきなさい、じゃあ次、大空」


(ああもうこれじゃ私が悪者みたいじゃない)


 鷹徒へ向いていた顔と体をグリンと動かし、一部の隙もなく背筋を伸ばした直立姿勢で大空鷲男は鶫を見据えた。


「うむ、某がここにいるのは全て主を探すため、武士道を貫くためだ」

「武士道?」

「そうだ、某は己に相応しい主を見つけ、その方に一生お仕えするのが夢だ」

「へえ、貴方はまともなのね」


 硬い表情をほどき、感嘆の声を漏らすと、鶫の視界にぴょんぴょん跳ねるモノが入る。


「えっとねー、あたしはねー、メイド服が可愛いからだよぉー」


 途端に鶫は冷め切った顔で雀の頭をわしづかみにしてジャンプを強制的に止める。


「貴方達のいい加減さがよーく解ったわ」

「じゃあお前はどんだけ立派な理由があるんだよ?」


 鷹徒の問いに鶫は誇らしげに胸を張る。


「我が渡鳥家は代々白鳥財閥にお仕えし数々の執事長やメイド長を輩出、一族の全てが上級使用人もしくは主の専属を担当する名門、幼い頃より白鳥財閥を支える為にメイドとしての英才教育を受けてきたわ」


 鶫は握り拳を作り胸の前に持ってくる。


「そう、私の目標はただ一つ、白鳥財閥本家にのみ存在する全メイド長を束ねるメイドの中のメイド、大メイド長に就任する事よ!」


 言い切った。

 その壮大な夢に鷲男は鉄面ながらもその目にはやや感心したような様子が覗える。

 そして……


「それって凄いのか?」

「う~ん、わたしもよくわからない」

「はいはーい、雀ちゃんもわかりませーん」


 三者三様の反応に鶫の目尻が吊り上がる。

 そして鷲男の脳内で次のような図式が成り立った。


 鷹徒達が鶫にストレスを与える。↓

 鶫がドンドン攻撃的な性格になる。↓

 いつか鷹徒達が殺される。↓

 それに巻き込まれ自分も鶫に殺される。


「! 殺される!」


 鉄面を恐怖に歪めて飛びさがる鷲男。


「大空は一体何をしているの?」


 ガクガクと震える大男を鶫が小首を傾げながら見ると、鷹徒と雫結が苦笑いを浮かべた。


「ま、まあ鷲男の奴は昔から妄想癖があるからな……」

「こ、今度はどうやって殺されたんだろ……」


 その間、雀はずっと鷹徒の腰元に抱きついて甘えていた。


 自分の班員をあらためて眺め、鶫は溜息をついた。


(本当にこのメンバーで大丈夫かしら……)




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