第44話 美少女魔王がエロ可愛すぎる
レイドの視線が自分の顔でないことに気付き、エルは足を止めた。
眼を輝かせるレイドがサラリと、
「刺繍の模様までバッチリ」
「なぁ!?」
エルは首元から一気に顔を朱色に染めて、ミニスカートを両手で押さえた。
「見るなぁッ!!」
ミュールのカカトをレイドの喉に突き刺してからエルは足をどけて、レイドはニヤけながら立ち上がった。
「廊下の敵はもういないのか?」
「ああ、みんな私が倒したし、残りは全部逃げてしまった」
すると、レイドはその巨乳美少女をギュッと抱き寄せて、背中や腰を撫で回す。
「やっぱエルは強いなー、さっすが俺の嫁、二人のラブパワーにはどんな軍隊もちょちょいのちょいだぜ」
「ば、馬鹿! 別に貴様の為にやったんじゃないんだからな!
ああもう離せ、ひゃう、変なとこ触っちゃダメェ、ッッじゃなくて触るなゲス勇者風情が!!」
さっきは血が出るほどに思い切り蹴り飛ばして、口でもこんなにも反論して、離せとも言っているのに、抵抗する腕は弱々しい。
どこからどう見ても、嫌がっているというよりも、ただ恥ずかしがっているようにしか見えない。
今、レイドと呼ばれた男からエルと呼ばれた巨乳美少女にサーチの呪文でパラメーターの読み取りにかかるが、レイドと同じく〈?〉の表記がされた。
だが、露出の多いその格好のどこを見ても、特別な装備品は見受けられない、となると彼女自身が魔術に耐性がある事になる。
そこで、今度は過去、属国となるさいの対談で魔王エルバディオスにやったように、最大級の集中力を持ってパラメーターの暴きにかかった。
そこで、黒騎士が見たのは、一〇八レベルという数字であった。
あり得なかった。
髪と目の色からエルが魔族である事は明白だ。
確かに九九レベルというのは人間の限界点だが、魔族だからといって三ケタなどそうそういけるものではない。
それこそ、魔王クラスかそれに近い域のごく限られた魔族だけだ。
だが、一〇八という数字は前に黒騎士が見た魔王エルバディオスのレベルを大きく下回る。
とは言ってもレイドに負けたというのが本当ならば、何かしらの理由で力が一時的に落ちている可能性は否定できない。
頭を悩ませて、黒騎士が一言、
「そこの女、貴様……エルバディオスか?」
「むっ……」
エルは答える前にレイドに耳打ちをする。
「おい、こいつは殺すのか?」
「殺さないとこっちが殺されるっていう状況だからな」
「当然、暴君ランドームは殺すのだろう?」
「当たり前だ、その為に来たんだからな」
「そうか」
黒騎士に向き直って。
「うむ、確かに私がエルバディオス・フェレスカーンだ、確か貴様とは前に一度会っているな」
本人認証がなされ、黒騎士は固まった。
前に見た時は厚手のローブに全身を覆われ、顔すら解らなかった。
小柄だという印象こそ受けていたが、まさかこんな少女だとは思っていなかった。
黒騎士がショックを受けているとエルが、
「九九レベルか、結構強いが、レイド、貴様いつまで遊んでいる気だ、さっさと終らせないと船に間に合わないぞ」
「それもそうだな、ほんじゃ……」
剣を構えて、
「ちゃっちゃと終わらせっか」
その言葉で、黒騎士の頭がまた熱くなった。
エルならば理解できる。
エルは魔族だ、自分よりも強い、それでも九レベル差、例え相手がエルでもしばらくは戦えるし、うまく立ち回れば勝てる自信が黒騎士にはある。
なのに、ただの人間であるレイドにそんな事を言われ、黒騎士のプライドに傷がついたのだ。
「随分な自信だな、だが、九九(げんかい)レベルの私に勝てるなど、決して思うな」
黒騎士が再び剣を構える。
エルはやや離れてその戦いを傍観した。
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