第43話 レベル99VSエロ勇者
「俺は勝ったぞ」
落ち着いた、だが何か寂しそうな声で語る黒騎士に、レイドはあっさりとそんな言葉を返した。
眼球への刺突が放たれレイドは首と胴をねじってかわしながら逆に黒騎士の鎧を斬り付けた。
そこへ、立て続けに刺突が加わる。
眼。
鼻。
口。
喉。
さらに鎧の隙間を狙っての視突も放たれた。
しかしレイドはその全てを避け切って場をしのぎ続ける。
「急に激しいな、そんなに突き入れるの好きか? 俺も好きだけど、お前と違って相手は女限定だぜ」
言いながら黒騎士の刺突を回避する。
「魔王に勝ったなどと……世迷言を言うな、あのような怪物を倒すならば、それこそ大陸中の軍隊が結集しなければ無理だろう」
「えー、でも実際俺勝ったぞ、あっ、ちなみに今連れて来てんだけどよ、怪物なんてとんでもねえ、顔もスタイルも最高のトリプルAランク巨乳美少女だぜ、オマケにツンデレ、いやー、確かにあの容姿なら写真集がミリオンセラーになるのも頷けるぜー。
あと魔王のイメージ守ろうとしてっけど店で可愛い物みつけるとソワソワしちゃってこれがまた可愛いんだ。
言っておくけど俺の嫁にする事にしたからあいつの処女は俺の――」
刹那、レイドは横に跳び、黒騎士の剣から放たれた黒い光の波をかわした。
床を抉りながら突き進む波は壁に激突し、謁見の間に巨大すぎる窓を作り上げた。
「おいおい危ねえな、人が話してる時にあんな大技使わなくってもいいだろ?」
レイドとは逆に、黒騎士は怒りに震え、また剣を振りかぶる。
「悪いが、貴様の戯言は聞くに絶えん」
「戯言? 俺本当の事しか言ってねえぞ、そうそう、それから人間の服気に入ったみたいでミニスカキャミソールで手足にはミュールとハンドウォーマーつけちゃってこれがもうもうもう本当に似合っててよー、下着は白しか履かないってのもギャップで可愛いんだよ、エルちゃん最高」
「だまれ!」
今まで冷静だった黒騎士が、今は怒りの声を張り上げて、また剣を振り下ろして黒い破壊光線を放った。
「この私と互角に渡り合う強さに敬意を評していたが、ただの狂人だったようだな」
「おいおい狂人て――」
「だまれと言っている!
常識で考えろ!
世界のどこにツンデレ巨乳美少女でミリオンセラーになるような写真集を発売し、可愛い物に反応する!
それだけでなく、あまつさえミニスカキャミソールにミュールとハンドウォーマーを着け下着は白限定など……そんな魔王がいるわけないだろ!!!」
「レイドォオオオオオオオオ!!!」
きりもみ状に回転しながら矢のように飛んできたエルのドロップキックがレイドの横顔に直撃。
ミュールの鋭いカカトは揃ってレイドのこめかみに当たっていた。
頭から血を流し、すっ飛んだレイドは床をゴロゴロと転がり、仰向けに倒れたままピクピクと痙攣している。
九九レベルの自分でもまだ倒せずにいる男を一撃で静めた存在に、黒騎士は兜の下で目をパチクリさせた。
足にはシルバーのミュール。
腰にはデニム地のミニスカート。
上半身にはピンク色のキャミソール。
手には白いハンドウォーマー。
たった今レイドが言った通りの格好をしたサラサラのロングヘアーと大きな瞳を持った文句無しの超絶美少女はツカツカとレイドに向かって足を進める。
一歩進むごとに豊かな胸が、たゆんたゆん、と揺れて、つまり歩くだけで揺れる胸を持っているわけである。
その巨乳美少女は六〇レベル以上の騎士四人を一撃で殺した男を右足で踏みつける。
何度も上がった綺麗な足はその数分だけ男の胸部に打ち下ろされ、その衝撃は鎧越しでも響いているようだった。
「こんのエロ勇者が! レイド! 貴様は敵に何を恥ずかしい事を言っているのだ! 魔王たるこの私がそんな可愛い物にうつつを抜かすなど……むっ?」
レイドの視線が自分の顔でないことに気付き、エルは足を止めた。
眼を輝かせるレイドがサラリと、
「刺繍の模様までバッチリ」
「なぁ!?」
エルは首元から一気に顔を朱色に染めて、ミニスカートを両手で押さえた。
「見るなぁッ!!」
ミュールのカカトをレイドの喉に突き刺してからエルは足をどけて、レイドはニヤけながら立ち上がった。
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