第6話 鬼畜勇者の金策方法


 魔王が頭上に疑問符を浮かべると、レイドはピッと指を立てて説明する。


「だからよ、学校卒業して勇者の資格は取ったばっかで無名勇者だから仕事の依頼とか何も無いし、魔王倒して名を上げるまでは収入が無いんだよ」

「収入が無い? では私の城までの路銀はどうしていた?」


 指をアゴに当ててレイドは今までの旅を振り返る。


「そうだな、やっぱ基本は山賊や盗賊殺して財布取ったり持ってるアイテム奪ってそれ質屋に入れたり、モンスターの毛皮とか牙を売った時もあったし……あと街についたら片っ端からカギが開いた民家を尋ねてタンスを物色(ぶっしょく)して――」


「待てい! それ泥棒だろ!」

「違う! 魔王討伐のためという正当な理由があるし一生借りるだけだ!」

「それを世間では泥棒と言うんだ! そもそもカギが開いていたらと言うが、家主がいたらどうするんだ?」


「そんなの簡単だ、俺が一人の時はミスディレクション(別の場所に注意を引きつける手品の技)で家主の視線がよそにいっている間に盗めばいいし仲間ができたら仲間が次の街までの道を聞いている間に俺がタンスを――」


「お前は盗賊か!? どう聞いてもプロの犯行だろ!」


 無視して、


「悪い貴族を退治した時なんかもう最高、宝物庫の中の物を俺の五〇メートルプール分の物が収納できるアイテムボックスに詰め込めるだけ詰め込んだからな、やっぱ体積と値段との比率を計算しながら瞬時にお得な金目の物(アイテム)を選ぶのが大変だったなー、さっき俺がぶっ飛ばした元仲間の三人は目利きができないから俺一人で頑張ったんだぞ、宝物庫以外にも部屋や廊下に飾ってある高価な調度品も詰めなきゃならないってのに使えない連中だったぜ」


「そ、そうか……」


 魔王は顔を引きつらせて今までレイドの被害に合ってきた人々に同情した。


「ところで手が下がっているぞ」

「はう!」


 エルバディオスが再び両手で体を隠すのを確認してから、レイドはトラックの荷台に飛び乗った。


「いつまでもお前を裸でいさせるのもヤダし、さっさと服選ぶぞ」


 意外な発言に魔王は違和感を感じた。


「ヤダ? 意外だな、お前は私に裸でいてくれたほうが嬉しいんじゃないのか?」

「それは俺と室内で二人っきりの時限定、こんな外じゃどこで誰が見ているか解らないだろ? 男ってのは好きな女の裸が別の男に見られると嫌な生き物なんだよ、そんな事も解らねえのか?」

「す、好きって……そんな……私は魔王なんだぞ」


 エルバディオスは今度は薄っすらと頬を染めて、横目でレイドを見た。


「魔族だろうがエルフだろうが精霊だろうが美少女に壁はねえよ、言っておくけど、俺は鬼や龍人の女とヤった事もあるぜ」

「フンッ、節操の無い奴め」


 そっぽ向いて背を見せるとレイドがまた一言。


「後ろ向いたら尻が丸見えだぞ」

「あう!」


 両手を後ろに伸ばしてお尻を隠しておきながら、さらに振り返って隠すものだから、また前が曝け出される。


「うわわっ!!」


 頭から煙を出しそうなほど赤くなってまたうずくまり、エルバディオスは自分のバカさ加減に涙が出た。


「お前ほんと学習しないんだな……っと、衣類見つけたからちょっと来てくれ、今度はちゃんと前隠してな」

「わかっている!」


 レイドに念を押されて、魔王エルバディオスは少し怒ったように目を吊り上げ、ぎこちない動きで荷台に近づくと、荷台に上がるさい、うっかり手を使い、さらに足を大きく上げて、普通に上がってしまった。


「そんなに見せたいのか?」

「くそ~~~~っ! 言っておくが、私は撮影の時以外の下着は白と決めているからな、白いのをよこせ!」

「へー、俺は魔王といったら黒くてほとんどヒモみたいなの履いてるかと思ったぞ」

「だからそういうのは着ないし履かない!」

「それでエル、服に何か指定はあるのか?」


 レイドから白くておとなしいデザインの上下一組の下着を受け取り、ようやく大事な部分を隠せたエルは目の鋭さを増させる。


「エルだと? 貴様、人間の分際で愛称呼びとは生意気な、一体何様のつもりだ?」

「エルだって俺の事呼び捨てだろ? だいいち俺らどうせ見た目変わらねえじゃんか」


「バカを言うな、私はこう見えても八〇〇年も生きているのだぞ、貴様はどうせ半世紀も生きてないのだろう?」

「まあ、確かに俺は一七歳だけどよ、お前の八〇〇歳って人間年齢に換算すると何歳なんだよ?」


「一六歳だ」

「じゃあいいじゃん」

「いいわけあるか、って、あれ?」


 下着を着け終わったエルはブラジャーのフィット感に疑問を持った。


「そういえば、何故私のサイズを知っているんだ?」


 それに対して、レイドはグッと親指を立てて爽やかに笑う。

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