10回生きた僕の相棒

モリ クマオ

第1話


また見学かぁ。

健二はそう呟いてやせっぽちな身体を抱えながら

友人達の体育を恨めしそうに眺めた。


健二は生まれつき身体が弱く学校も休みがちだ。

授業も友達の会話もついて行けない。


ああ、飛べたらなぁ。

お世辞にも綺麗とは言えない海をみながら

健二は憂鬱な学校と自分の身体に絶望していた。


ブォンブォン


???


あれ、あんなとこに倉庫あったかなぁ。

健二は恐る恐る近づいた。

見渡すと古めかしい倉庫には

古いオートバイが並んでいた。


なんか探してるのか?

オートバイより古いじいさんが奥から出てきた。


健二は驚いて咄嗟に隣にあったトリコロールのオートバイを指差した。


NS-1かぁ、みたところ学生さんだから

通学に使うのは不便だよ。


じいさんはただオートバイのスペックを言っただけなのに、何故か不自由な自分に向けられた気がして

健二の目から大粒の涙が溢れだした。


じいさんは慰めるわけでもなく奥に

引っ込んでガシャガシャと音を立てて銀色の

トレイに入った工具を出してこう言った。


命吹き込んでみるか?



あれから10年


じいさんまたまだこいつと飛べるよ


真っ黒に日焼けして整備で逞しくなった腕の健二を乗せてNSのエンジン音が空まで響いていた。










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10回生きた僕の相棒 モリ クマオ @kumao884

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