四十一話~五十話

第四十一話 信じると言う事


ユリ「わたしも行くわ」

ジーク「しかし、あまりに危険です!」

ユリ「わたしは王よ、王は安全なところから兵が死ぬのを見て待つの?王は自らも命を張るから王なのよ!」

ジーク「御意」

セナ「ゼノそろそろよ、行きましょう」

ゼノ「お前は来るな、あいつらは折り紙付の最強達だ死ぬぞ」

エリス「あら、あなたは死なないのかしら?誰よりも貴方のそばにいたい人を残して死ぬのかしら?」

ローグ「そう言うこった、俺らも行くぜ」

シヴァ「皆んなで最後まで戦うんだ」

審判「第一魔術学院からは天使リヴァイアサンたった一人しか出てきませんでした!第八魔術学院からは先程の二人!第六魔術学院は全メンバーでの出陣だぁ!」

リヴァイアサン「我が最強だ」

シヴァ「私を差し置いて最強だと?」

ゼノ「最強最強ってよぉ、俺は最凶の悪魔ゼノだぜぇ!」

煤(おやおや、こんな所で見かけるとは...)

審判「決勝開始!」

開始の合図が聞こえた時にはゼノはジークに、シヴァはリヴァイアサンに肉薄していた。

ジーク「人界で会えるとは!」

ゼノ「おめぇは誰だよ!」

ゼノは自らの速度と魔力を少しずつしかし持続的に増幅していた。

ゼノ「インフィニティ・リロード、お前の速度とこれでタメだ!」

第六魔術学院のメンバーはある程度試合開始前に作戦を練っていた。

まずジークにはゼノとモノトリスで戦う事、それ以外の戦力は全てリヴァイアサンに回す事。

リヴァイアサン「鬱陶しい蝿どもが」

そうリヴァイアサンが呟くと試合場が暗くなった。

アリスは空を見上げて絶句した。

そこにあったのは空を埋め尽くすほどの水の龍だった。

リヴァイアサン「特性 水の王 形態リヴァイアサン、これで死ね」

リヴァイアサンが唱えると空に居る水の龍は口を開き降ってきた。

エリス「マキナ!」

マキナ「あいよ!」

アリス「火炎系最上級魔法炎龍!」

クロ「アンサー!」

シヴァ「極・ミラクルレーザー!」

ローグ「速度減速!攻撃方向反転!」

セナ「巨大黒水晶の槍!」

エリス「黒水晶の剣山!」

第六魔術学院のメンバーが放った魔法は水の龍を地面すれすれで破壊した。

リヴァイアサン「意外とやるな、それではもう一度…」

アリス「嘘でしょ...」

空には先程とは比べ物にならない程大きい水の龍がいた。

リヴァイアサン「ゲームオーバーだ」

ゼノ「モノトリス、少し任せるぞ!」

モノトリス「少しだけだからね!」

ゼノ「アリス!最上級魔法炎龍を俺にぶつけろ!」

アリス「分かりましたわ!」

アリスが体に残る全ての魔力を振り絞り炎龍を出現させるとゼノにぶつけた。

ゼノ「形態変形!モード炎龍帝!」

ゼノが叫ぶとゼノの身体は炎に包まれ巨大な腕と尻尾角が生えていた。

ゼノ「バーンナックル!」

ゼノは水の龍に拳を叩き込んだ。

その瞬間大量の水が蒸発したことにより熱い水蒸気が爆発したように試合場に広がった。

ローグ「やるな!」

シヴァ「よくやった!」

皆がゼノを褒め称える中セナだけが主従の腕輪によりゼノの異変に気づいていた。

リヴァイアサン「ちっ!鬱陶しいんだよ!」

リヴァイアサンは辛うじて地面に落ちた水を使い水圧カッターを作り攻撃してきた。

リヴァイアサンのガラ空きの胴体にゼノの拳が刺さる。

リヴァイアサン「貴様っ!」

ゼノ「今回は俺の勝ちだ」

リヴァイアサンは体が水で出来ている為今のゼノは天敵であった。

そして断末魔をあげながらリヴァイアサンは蒸発してしまった。

リヴァイアサンが消え安心したのが仇となった。

モノトリスではジークを抑えられなかったのである、アリス・クロ・マキナ・シヴァ・ローグ・エリスそしてセナ、ゼノ以外の全てが切り裂かれた。

ゼノは何よりも早くセナが倒れる前にセナの体を支えた

。ゼノ「おい、生きてるよな!」

セナ「ゼノは声がおっきいね、私ミスしちゃったの...」

主従の腕輪で感じるセナの生命力は限りなく少なくなっていた。


第四十二話 最凶

ゼノ「そんな事今どうでも良いだろう!帰ったら美味しいものいっぱい食べるんじゃ無かったのかよ、本を読んだり遊んだり...俺と強くなるんじゃ無かったのかよ!」

セナ「ゼノ...ごめんね...」

セナは一度心臓を破壊されているその時にエリスから聞いた話だ。

エリス「あなたは今セナさんによってリミッターをかけられる状態です、解除するためには記憶を辿るかリミッターをかけている場合では無くなった時、つまり仮死状態とか」

何故今思い出したのかは分からない、しかしゼノの中で大きくなる何かがあった。

その瞬間世界が紅くなった。

正確には空が紅くなった。

ゼノ「ここからは俺の時間だ...」

刹那ジークの胸部の鎧が凹みジークは膝をついていた。

ジーク(ありえない!どんな速度で移動したと言うのだ!?)

ゼノ「痛いか?まだあと六発分残ってるぞ」

ゼノ「俺の魔力じゃ後六発が限界だがな…」

ジーク(これ程か、魔界にいる時聞き及んだ最凶とは!?)

ジークが辛うじて起き上がると右の側頭部を殴られ吹き飛んでいた。

ゼノ「これで終わりか?」

ジーク「まだまだ終わってないさ!」

吹き飛ばされそれでもジークは立ち上がってくる。

ゼノ「次はそこの小娘に攻撃するぞ、守ってみろ」

ジーク(!?)

次の瞬間ユリの正面で巨大な衝撃波が発生した。

ジークがギリギリで攻撃を受けたのである


第四十三話 終わりと...

ジーク「王には指一本も触れさせないぞ!」

ゼノ「守り切る事は不可能だ」

そう言うとゼノは二発ジークに拳を叩き込んだ。

ジーク(ここまでか...)

ゼノ「死ね...」

ユリ「もうやめて!殺すなら私を殺しなさい!」

ゼノ「最初からそうするつもりだ」

ゼノがユリに迫る中、背後から声が聞こえた…

モノトリス「そこまでですゼノ」

その声は先ほど倒れたモノトリスの声だった。

ゼノ「生きてたか...」

アリス「セナも息を吹き返しましたわ!」

ゼノ「命拾いしたな」

審判「勝者第六魔術学院!」

最強が決定した日だと言うのにあまりに静かな終わりだった…

紅い世界が静かに終わり、青い空が戻った時一際蒼く光る者がいた。

煤「今なら或いは」

ゼノ「アリス、セナを運べ巨大な殺意を感じる...」

刹那、背後に何かが降り立った。

煤「久方ぶりだなゼノ、お前が落とした腕覚えているか?」

ゼノ「誰だぁテメェは?」

煤「ふざけるな!俺は片時もお前を忘れた事は無い!」

煤の無くなったはずの腕が再生していく、もちろん特性蒼炎による腕だ。

煤「蒼龍!追尾対象指定ゼノ」

煤の背後に出てきた二匹の龍はゼノに向かって突進した。

リヴァイアサン「水龍の怒り!」

煤の蒼龍は空から降ってきた水の龍に相殺された。

リヴァイアサン「そいつは俺の獲物だ手を出すな!」

煤「死に損ないが!」

その時、煤は咄嗟にガードを上げた。

ガードを上げた蒼炎の腕には深々とジークの剣が刺さっていた。

ジーク「借りは返す、騎士だからな…」

煤「雑魚どもが調子に乗るな!」

煤が叫ぶと煤の周囲に蒼炎が舞った。

ゼノ「天界に帰れ!」

ゼノはそう言うと拳を思い切り煤に叩き込んだ。

王都が揺れまるで世界が揺れているかのような錯覚を覚える一撃だった

煤「効かないなぁ」

煤に叩き込まれた拳は煤の体を貫通していた。

しかし煤の身体は蒼炎でできている為ゼノは蒼炎によって衰弱してしまっていた。

ゼノ「野郎!」

ジーク「ゼノ落ち着け、今は勝てない!」

煤「今回は見逃してやる、また会った時お前らは死ぬ!」

煤が天に昇ると空には大きな裂け目が出現した。

ゼノは煤が裂け目に入るのを見終えると意識を失った。

一方天界では...

煤「グハッ、ふざけやがって!あいつ物理が効かないのを悟って内側で魔力を爆発させやがった!」

煤は今にも倒れそうな身体を奮い立たせ神が住まう宮殿に向かった。

一方ゼノ達は医務室で治療を受けていた。

マキナ「エリスがここまでやられるなんてな...」

アリス「セナもモノトリスも皆んな重症ですわ」

エリス「マ...キナ、セナとゼノを...連れて魔界に...行きなさい」

マキナ「おい!無理すんな!」

エリス「私...は、もともと生まれ...無いはず...だったの...セナのおかげで...今がある、行きなさい...ゼノの封印を...とい...」

マキナ「おい、おい!エリス!」

アリス「まだ死んではいませんが魔力の波動が弱くなっていっています」


第四十四話 旅立ち

セナ「少し退いて...魔力を分け与えればまだ生きられる筈」

アリス「そんな事したら、あなたが死にますわ!」

セナ「追憶の槍 対象指定エリスの心臓」

セナが詠唱すると宙に黒く螺旋状に捻じれた槍が生成される。

そしてその槍は優しくエリスの胸に刺さる…

アリス「何をしたの!?」

マキナ「まさか、仮死状態にして魔力消費を抑える気か?」

セナ「彼女には死んでほしく無い」

セナ「行きましょう、魔界に!」

マキナ「無理だ...」

マキナには首がない丸い体に鹿の頭蓋骨のような物が半分埋まり半分出ているため、体ごと首を横の降るように揺れる。

セナ「どうして?」

マキナ「行く方法が無い」

セナ「あるわよ、黒魔術はルールそのものですから」

と得意げに言い放つ。

マキナ「エリスに似たな...」

セナ「魔力を少し分けてマキナ」

セナはマキナに触れると魔力を少し吸い上げた。

マキナ「魔界に行くゲートを少しの間、開けるのは構わないが魔界は地獄みたいな場所だぞ、ゼノの封印がどこに施されているか分からないまま彷徨うことになるかもしれないんだぞ?」

セナ「それでもやるしか無い、ゼノは私の大切な友達なの!」

魔力が切れちびゼノになったゼノをリュックに入れセナは立ち上がる。

セナ「今から魔界に行ってくるね、少しの間会えないけど皆んなをよろしくアリス」

アリス「必ず生きて帰って下さい」

セナ「必ずね」

セナ「ゲート 接続対象 魔界!」

セナが唱えると巨大な門が出現した

マキナ「帰れるかも分からない旅か」

セナ「ゼノ、今戻してあげるからね...」

地獄の門のような重厚な扉を開きセナ・マキナ・ちびゼノは魔界へ入って行った。

門を潜るとそこは灼熱のような暑さと殺伐とした赤と黒の世界だった。

息を吐くと魂まで持っていかれそうな瘴気すら漂っている。


第四十五話 地獄 

マキナ「セナ最初に説明をしておくが魔界は6層の地形からなる場所だ、下に降りれば強い悪魔や魔獣が居る俺は第四層出身だから第三層までなら余裕があるが、第四層から下は命の保証はないぞ」

セナ「覚悟の上よ」

マキナ「セナ口の中に入れ、第四層までは安全に行ける、第四層からもそのまま走り抜け最下層まで行くぞ」

セナ「分かったわ」

セナはマキナの口の中に入る、そこはソファやベット本棚が置いてある空間だった。

セナ「マキナってこんなこともできたんだ!」

マキナは話しかけるセナを無視して駆け抜ける、周りでは魔獣や悪魔が跋扈しているのが見える。

マキナは巨大な穴へと飛び込み落ちて行った。

マキナ「ここは第二層だ」

そこは先程とは打って変わり身を貫く寒さと青と白の世界だった。

そこには明らかに作られたもの人工物ではあるが人が作ったわけではない…

マキナの中に居るのに凍えてしまうほどの冷気に満ちた静かな世界だった。

マキナ「あと少しで第三層だが何かがおかしい、あまりに悪魔と魔獣の数が少ない」

セナ「何かまずいことでもあるの?」

マキナ「捕食者がいるってことだ」

マキナ達は驚くほど順調に第三層に到達した。

そこは沼のような湖が広がる湿った世界だった。

セナ「一階層とは別の暑さがあるね」

セナはマキナの口から顔を出す。

マキナ「第三層には村がある、ここから先は知能がある悪魔がごく稀にいるからな」

セナ「村に行くの?」

マキナ「先を急ぎたいが何かがおかしいんだ、確かめていこう」

マキナは最悪の事態を想定していた…が自分の目でどうしても確かめたかった。


第四十六話  痕跡

マキナ達は第三層にある村、瘴気の村に到着した。

瘴気の村は荒らされていた、巨大化したマキナと同じかそれ以上のサイズの足跡や爪痕がある。

マキナ「誰か居ないかー?」

???「貴方達は何者?」

ふらふらとぼろきれを纏っただけの女性型悪魔が路地から出てくる。

マキナ「俺はマキナ、ここで何があったかが聞きたくて来た」

???「ここではディアブロが暴れて行ったの」

マキナ「ディアブロが!?」

ディアブロとは魔界随一の魔獣であり第六層にのみ生息する。

そして魔界の構造上、上の階層に上がるのは非常に困難…

マキナ「あり得ないだろう!」

マキナが取り乱す中セナは何かに気が付いていた…

セナ「マキナ!今すぐに彼女から逃げて!」

マキナ「何故だ?」

セナ「私は貴方の口の中に居て喋っても居なかった、しかも私もゼノも魔力が絶え絶えの状態なのに貴方達はと聞いて来た!つまりそいつは第四層にいる貴方より強い!」

直後、空気が重くなり女性型悪魔の形がメキメキと変わり始める。

???「気付きましたか?やはり騙すのは苦手デスね」

マキナ「まさかこいつは!」

セナ「ディアブロなの?」

ディアブロ「ソノとオりだ…ワレハでぃアブろ、マカいノホショくシャなリ」

マキナ「セナ!しっかり捕まってろ最下層まで続く穴に落ちるぞ!」

セナ「分かった!」

直後マキナは最下層に繋がる穴に飛び込んだ…

セナ(ディアブロとか言う魔獣本気で怒ったゼノと同じくらいの魔力量だった!あんな化け物もいるの!?)

最下層へとマキナ達は到着し戦慄する…

マキナ「まずいな」

セナ「あれは!ディアブロの群れ!?」

マキナ「俺はエリスにお前らを頼まれたんだセナ、ゼノを背負って先へ進め助かる道はそれしか無い!」

第四十七話 マキナ・デウス

セナ「マキナはどうなるの!」

マキナ「人界にはゼノやお前が必要だセナ!エリスにはよろしく伝えてくれ...」

セナ「分かった...」

セナは涙を抑え込む…

セナ(もうただの子供じゃない!)

セナはちびゼノが入ったリュックを担ぎ先へと駆け出した。

ちびゼノの意識はまだ戻っていなかった。

ひたすら駆けるセナの背後では爆音が鳴り響いていた。

セナ(主従の腕輪からゼノ以外のゼノ?を感じる!)

主従の腕輪にはゼノの魔力である紅色以外に深淵に近い蒼が灯っていた。

一方マキナはディアブロの群れと対峙していた。

マキナ(俺が巨大化しても僅かに見下される体格に加え底なしの魔力、そんな化け物があとざっと100体以上もいやがる...)

ディアブロ「ワレわレにはカテぬ」

マキナは一人静かに笑う…

マキナ「分かってるよ!それでもあいつに頼まれたんだ!セナにはそれだけの価値があるんだ!」

マキナ「セナには希望の光が見えたんだ!」

マキナは叫びながらディアブロの群れに拳を叩き込み続ける。

一方エリスは追憶の槍によって過去を見ていた。

そこは暗く希望などない暗黒街だった、エリスはまだ生まれてすらいない過去だった。

エリス(此処は?)

エリスが周りを見渡すと暗黒街の奥にセナによく似た少女が居た。

エリス(あれはセナじゃない?)

すると空から爆音と共に裂け目が現れそこからは、巨大な手が出てきた。

マキナが巨大化したサイズとは比較すらできぬほどのサイズであった

そこからはパラパラ漫画のようにセナのような少女が天界に連れ去られた事。

何かの実験に使われている事。

そして巨大な何かが微笑んだ事、直後爆発が起き一体の悪魔が入ってきた事を見た。

一方マキナはディアブロの群れにより追い詰められていた。

マキナには既に拳を固める力すらない…

マキナ(俺はこれで良かったのかエリス...?)

その時何処かから声が聞こえた。

???「生きて帰ってきなさい」

その声は聞き飽きるほど聞いた…

そして今一番聞きたい声であった。

マキナ「分かったよ...」

マキナの特性は巨大化

真名はゼウス・マキナである…

しかし巨大化とは一体どうゆう原理で出来るのであろう?

答えは魔力を体の内側に流し込みその量だけ身体を大きく具現化しているのだ。

つまり魔力を使い膨張させているのだ。

では逆に圧縮は出来ないのか?

かつてエリスから聞かれた事は今になって稲妻のように頭に走った。

マキナ「圧縮、身体を小さくするんじゃない...身体を圧縮するんだ」

マキナの身体は動物のような造形から何処か人型になっていった。

マキナが先程いた所には人が立っていた。

両腕の指先から肩までびっしり鱗のような刺青の入った、身長は190cm程の鹿の頭蓋を被った美少年だった。

だが人間と違うのは尻尾が生えている事や筋肉の造形だけでは無かった。

マキナ「これが圧縮か...」


第四十八話  全力

その美少年とはマキナ自身であった、筋肉質ではあるが何処か細さを残した造形で立ち姿はある種神々しさまで感じた。

ディアブロ「メしがチイさくなッた?」

マキナ「うるさい...」

マキナが手を払うとディアブロの群れの半数の上半身が吹き飛んだ。

マキナ「俺は自分の特性を勘違いしていたみたいだ、俺の特性は魔力の膨張と圧縮…そして本当の名前はマキナ・デウスだ」

マキナが歩を進めるとディアブロは恐れ慄いて逃げようとした。

マキナ・デウス「逃がすわけないだろ...」

マキナが手をかざすと、残った半数の更に半数が爆散した。

ディアブロ「ニげナクてワ!」

マキナが残りのディアブロを消そうと手を伸ばした時マキナは意識を失った。

一方セナ達は神殿のような場所に訪れていた。

セナ「ここからゼノの波長を感じる」

セナが神殿の中に入ると微かに背後から視線を感じた。

セナは神殿の奥に進んでいく、進むにつれ視線の数が増えて行った。

しばらく進むと、広場のような所に出た。

セナ「さっきから気づいてるわよ!出てきなさい!」

広場に声が響き渡ると陰から人型の何かが出てきた。

ちびゼノ「セナ...俺を広場の...中心に...寝かせろ...」

セナ「意識が戻ったの!?」

ちびゼノ「早く...しろ...」

セナがリュックからちびゼノを取り出し広場の中央に寝かせると周りが蒼と紅で照らされ、人型の何かがはっきりと見えた。


第四十九話  足りないもの

人型の何かとは、腕が異常発達した猿のような化け物だった。

セナ「戦うしかないって事?」

セナは黒水晶の槍を召喚し人型の何かにぶつけた、しかし人型の何かは全く怯む様子もなくセナに突進してきた。

その時上のほうから声が聞こえた…

???「その子たちはマンイーターだ、その程度の魔力では倒せないよ」

セナ「貴方は誰!?」

フォーネ「私はフォーネ、魔神の最後の生き残りだ」

セナ「魔神!?」

フォーネが姿をあらわすとマンイーターは借りてきた猫のように縮こまり攻撃をやめてしまった。

セナは構える…

フォーネ「我が神殿にようこそ、そしてこの悪魔は君たちの友達かな?」

フォーネが担いでいるのは意識を失っているマキナだった。

セナ「マキナ!生きてたんだ!」

フォーネ「そうか友達か、良かったよディアブロのスープが食べたくなってね、狩りに行ったら彼が倒れていてね」

セナは緊張が解けるとそのまま意識を失った。

セナが意識を取り戻すと目の前でフォーネが地獄の釜のようなものをかき混ぜていた。

フォーネ「起きたか...まだ動かない方がいい、君たち全員は酷く損傷していた、しかも見たところ人界から来たな、その傷で此処までくるのは奇跡と言っても良いだろうね」

フォーネ「もう少し待てばディアブロのスープが出来る、それを飲めば魔力と身体が回復するだろう」

セナ「どうして私たちを殺さないの?」

フォーネ「どうしてだって?君はゼノと契約しているじゃないか、私は魔神だがゼノを下手に刺激するほど傲っていない」

フォーネは息が荒くなり早口になる、その姿を例えるならオタク?だろうか…

第五十話  魔神

セナ「ゼノはそんなに強いんですか?」

フォーネ「ゼノは君に何も教えていないんだな...ゼノは昔天界にある少女を助けに単身で乗り込んだ、まだ全盛期だった神を相手に少女を取り戻し天界を半壊させた、そんな彼に手を出すわけにはいかないだろう」

フォーネ「今は力の大半を失っているがこの神殿に封印された力を戻せば7割は戻るだろう、しばらく休んでいきなさい」

セナ「ありがとう...」

セナがフォーネと話している間にマキナは意識を取り戻しまた人型に戻っていた…

マキナ「…」

セナ「あなた、誰?」

マキナ「マキナだよ」

セナ「でもマキナにしては人間すぎない?」

マキナ「俺も何があったか分からないが、魔力を圧縮したらこうなった」

フォーネ「特性が進化したんだね、死に直面しても諦めなかったから」

マキナ「そうなのか...」

フォーネ「スープが出来たよー」

スープの入った器を渡しながらフォーネは話し始めた。

フォーネ「昔話をしようか、魔神や悪魔…魔界について、私は16柱居た魔神の最後の一体だ、魔界とは元は人界に住んでいた魔神が神との戦争の挙句作り出した空間だ、悪魔とは魔界に貯まる魔力で生まれる生命体だ」

フォーネ「私以外の魔神が死んだ時、膨大な魔力が魔界に溢れた、その時二体の悪魔が誕生した、片方は最凶の名を冠したゼノともう片方は鬼神の名を冠した悪魔だった、君たちは既に会ったことがあるだろう」 

セナ「トーナメントに居た...」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る