第十四赦喪事 接触
【
謎の少女がゆっくりとこちらに歩み寄る。俺たちが彼女から逃げようとすると、
「その先へは行けないよ…」
着物を着た少年が少女の隣から現れた。歳は多分少女と同じくらいだろう。
俺たちが立ち止まっていると、少女と少年の間からうっすらと人影が見え、神社の巫女のような姿をした老婆が現れて、こちらにゆっくりと歩み寄って来た。
歳は多分、80歳くらいだろう。高齢だが鋭い目つきをしており、何か只者ではない威厳のようなものを感じる。
巫女「その先へ行ってはならん…。そこへ入ったが最後…、時空の歪みに飲み込まれ、二度と元の世界へは戻れなくなる…」
少年・少女「婆様!!」
巫女は手に持っていた
巫女「赦せ……、喪せ……、事よ‼︎」
そう大きな力強い声で巫女が叫ぶと、しゃもじ人間たちは「カタカタ」と小刻みに震えて肩を左右に揺らしながら、あちこちに散らばって去ってしまった。何が何だか状況がよく分からないが、とにかく俺たちは助かった。
状況がよく飲み込めない俺たちがしばらく唖然としていると巫女は、低く鋭いゆったりとした口調で俺たちに問いかけをし始めた。
巫女「お前たち…、元の世界へ戻りたいか…?」
優一郎「戻りたいです‼︎」
巫女「あの者たちについて知りたいか…?」
はるか「ええ…、もちろん‼︎」
巫女「ついて参れ…」
雅「………」
俺たちは黙って巫女の後ろをついて行った。だが、雅はうつむいて何か不機嫌そうな顔をしている。訳の分からないことだらけでいい加減にウンザリしてきているのだろう。
俺たちは巫女の後ろをついて歩きながら街の様子を見ていた。少年と少女は巫女の側にくっついて歩いている。俺はこの道に少しだが見覚えがあるような気がした。
山口「あの…、一体どこまで歩くのでしょうか…?」
清水「いいから黙ってついていけ…」
巫女について歩くこと30分ほど経った頃、俺たちは神社のような場所に着いた。辺りは霧が立ち込めているが、ほんの少しだけ他の場所より明るい。現実世界で言うと、早朝の5時くらいの明るさだ。
巫女「ここじゃ…」
俺たちはまた巫女の後ろをついて行き、神社の石段を登った。5分ほど登ると、頂上の境内にたどり着いた。
俺は現実世界でこの神社に来たことがあるような気がする…。だが、よく思い出せない…。
巫女「お前たち…、もしや…、仲間をあの者たちに取り込まれたな…?」
巫女は相変わらず険しい表情をしながら、鋭い口調で俺たちに話しかけてくる。
優一郎「そうですけど…、何故分かったのですか…?」
巫女「確か…、商店街の辺り…。そこから、人間の気配が一つ…、無くなるのを感じた…。お前たち5人の気配が商店街を離れて30分ほど経った頃だ…」
少年「婆様はね…、この世界にいる人間の気配を感じられるんだ」
少女「でも…、私たちが行った頃にはもうダメだったの…」
はるか「じゃあ…、やっぱり先生はヤツらの仲間に…」
清水「何とか戻す方法はないのですか…?」
巫女「あの者たちに取り込まれたが最後…、普通の人間は元に戻ることはできない…‼︎」
山口「そんなぁ…、じゃあ諦めるしかないってことですか…⁉︎」
巫女「まあ…、そう慌てるでない…‼︎ あくまでも…、普通の人間ならばじゃ…、普通の人間なら…。じゃが…、お前たちにそれを教える前に…、話さなければならないことがある…」
優一郎「話さなければならないこと…⁉︎」
巫女「ああ…。この世界の成り立ち…、あの者たちが何者なのか…、そして何故お前たちがこの世界へ来たのか…、少し話は長くなるがそれらを話さなければならん…」
山口「でも…、あなたはさっきヤツらを祝詞を唱えて追い払いましたよね…⁉︎ あなたのその力で先生を元に戻すことはできないのですか…⁉︎」
巫女「それはできぬ…」
はるか「そんな…。」
巫女「ワシはその者の顔も名前も知らぬ…。それにお前たちのように、その者に特別な想い入れがある訳でもない…。取り込まれた者の顔と名前を知る者、特別な想い入れがある者でなければ戻すことはできぬ…」
優一郎「分かりました…。ヤツらのこと…、この世界のこと…、俺たちがどうしてこの世界に来てしまったのか…、教えて下さい…‼︎」
はるか「私たちを庇って取り込まれた先生だけでも助けたいです…‼︎」
清水「どうか…、お願いします…‼︎」
巫女「いいだろう…。立ち話もなんだ…、少しゆっくりしてゆけ…」
巫女は俺たちを境内の中へ案内した。小さな神社だが、境内の中は綺麗で、さっきまでと少し違った神秘的な空気に包まれている。
巫女「座れ…」
いよいよヤツらについて分かる時が来る。
しゃもじ人間の恐怖 ヒイロ・ユウ @hiiro369xyz
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