第十三赦喪事 閉界

第十三赦喪事だいじゅうさんしゃもじ 閉界へいかい


「こういうことダァ…、先生もコイツらの仲間になったのサァァァ‼︎」


「お前ラも今、仲間にしてやるYOooo‼︎ ヒョォォォォーッ‼︎」


 俺たちはヤツらが来た方向とは反対の階段から急いで逃げた。


 電車で逃げるつもりだったが、待っている余裕はない。だが俺たちが改札口から逃げようとした時、「パァァァー」と低い音がした。


清水「三番ホームから電車の音が聞こえる‼︎ あの電車に乗って逃げよう‼︎」


 俺たちは急いで三番ホームへ向かった。



 ホームにたどり着き、向こうからやって来る電車を見たが何か様子がおかしい。「キュオオオォォォン」と奇妙な不協和音を鳴らしながらこちらへやって来る。

 電車がホームに到着し乗り込もうとした時、またもや恐怖と絶望が俺たちを襲った。


 電車の中は、通勤帰り⁉︎のサラリーマンやOLような姿をした、しゃもじ人間だらけだった。それに駅の看板をよく見ると、駅の名前が「しゃもじばし」になっている。


「しゃもじ橋〜〜〜…、しゃもじ橋〜〜〜………、次は、「しゃもじヶ丘がおか」〜…」


 不気味なメロディと不気味なアナウンスが、白い大きなおどろおどろしい文字と共に駅に響き渡る。



「人間だぁぁぁ‼︎」



 電車の中にいたしゃもじ人間たちが一斉に押し寄せて来る。俺たちはまた改札口へ引き返すことになった。



「山口ィィィ〜…、逃さねぇぞォォォ…‼︎」



山口「うわぁぁぁ‼︎」


清水「北島ッ‼︎ お前は邪魔だ‼︎」


「北島しゃもじ」が山口に飛びかかろうとした時、清水は「北島しゃもじ」を横から蹴り飛ばした。



「ぎゃアアア…‼︎」



 「北島しゃもじ」は線路に落ちた。



「グフォォォォ‼︎ しゃ、もおぉぉぉぉぉぉーーーっ‼︎」



 そして、「北島しゃもじ」は発車した電車に跳ねられてどこか遠くへ飛んでいった。



優一郎「北島のヤツ、死んでないよな…!?」


清水「何…、大丈夫だ。アイツはもう人間じゃなくなってるからな。それに北島はゴキブリ並みにしぶといヤツだと有名だ…、心配ないさ」


 改札口を抜けて俺たちは線路沿いを走って街の外へ逃げることにした。



 街中どこにでも現れ、どこまでも追いかけて来るしゃもじ人間たち。ただひたすらヤツらから逃げ続ける俺たち。いつまで逃げ続ければいいのか、そう考えると気が遠くなる。


雅「ねぇ!! 私たちいつまで逃げればいいの!?」


清水「あと3キロくらい走れば街を抜けられるはずだ!! もう少し頑張れ!!」


 俺たちは息を上げながらひたすら走った。15分ほど走った頃、街の外れの辺りまでたどり着いた。ようやく街を抜けて、ヤツらに追われることもなくなると俺たちは思った。だが、しゃもじ人間の恐怖はまだまだ終わらなかった。



優一郎「なんだ…、これは…!?」



 俺たちの目の前に壁のような紫色のモヤが立ち塞がった。所々、ドス黒い渦を巻いているような部分もあり、まるで空間がねじ曲がっているようだ。街の外の様子が蜃気楼のように浮かび上がって見える部分もある。


はるか「そんな…、私たちこの街から出られないっていうの…!?」


清水「くそっ…、ここまで来て…」


雅「どうすんのよ!?」


山口「どうにもならないじゃないですかぁ…!!」


 ヤツらが追いついて来た。四方八方からしゃもじ人間が続々と現れて俺たちを取り囲む。完全に閉鎖されたこの世界からは、脱出することすら不可能なのか…!?


 「ドン、ドン」とヤツらがゆっくり近づいて来る。山口と雅は観念してその場にしゃがみ込むが、俺とはるかと清水の三人は覚悟を決めて最後の抵抗を試みることにした。



「しゃもぉぉぉッッッ、ホォォォッッッ‼︎」



山口・雅「うぅ…」



裕一郎・はるか・清水「うぉぉぉぉぉぉ!!」



 その時だった…。



「おやめなさい…」



 どこからともなく少女の声が聞こえ、しゃもじ人間たちの動きがピタリと止まった。声が聞こえた方を見ると、そこには5、6歳ほどの着物を着た少女がいた。


 この少女は一体…!?

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