第十二赦喪事 変生
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商店街を抜けて大通りに出て、公園まで走った俺たちは一度立ち止まり、少し休憩した。頼みの綱である三村がいなくなったせいか、みんなの士気が落ちている。これからどうすればよいのか。
俺は三村から渡されたラジオを取り出して聞いてみることにした。何か有力な情報がつかめるかも知れない。
アンテナを立ててチューナーを調節する。相変わらず不気味なノイズが流れ続けている。ザザッーというノイズと共にどこかのチャンネルとつながった。
優一郎「これは音楽番組⁉︎ でも何か変だな…」
この時間帯は現実世界でも音楽番組を放送しており、今はちょうどオリコンヒットチャートTOP10の発表の時間だ。聞いたことがある曲ばかりのはずだが、どれも酷くピッチがズレていたり、逆再生したようなめちゃくちゃな曲になっている。
その内、だんだんと曲がスローになり音程も下がって、ホラー映画のBGMのようになっていった。そして、次の瞬間また新たな恐怖が俺たちを襲った。
ラジオのスピーカーから白いおどろおどろしい文字が出てきたのだ。ヤツらの声だ。この世界では、あらゆる通信機器も電波もヤツらに支配されているのか。
「突然で…、すが…、緊急にゅぅぅすデス…。最近、我々の世界に迷い込んだ六人の人間…、藤之宮優一郎…、橋本はるか…、清水忠義…、山口充…、西条雅…、三村剛が発見されました。この六人………は、………容疑が、………おり、尚、みむ………」
ラジオがザザッーとノイズとともに途切れてしまった。途中からノイズ混じりでよく聞き取れなかったが、最後に三村の名前が出てきたのは分かった。三村の身に何かあったのでは⁉︎ と、みんな不安になったその時だった。
不気味な低いサイレンの音と共に白い大きな文字が現れた。
「藤之宮〜〜〜、橋本〜〜〜、清水〜〜〜、山口〜〜〜、西条〜〜〜、以上五名はまだこの街にいるぞ〜〜〜、何としても捕まえろォォォォォーーーーー‼︎」
じきに公園にもヤツらがやって来るに違いない。逃げるなら今のうちだ。俺たちは次にどこへ逃げようか話し合った。
清水「そうだ‼︎ 駅へ向かおう‼︎ 電車で遠くまで逃げればヤツらも追って来れないはずだ‼︎」
はるか「なるほど、いい考えね‼︎」
雅「でも、先生はどうすんのさ⁉︎」
清水「先生のことも心配だが、ここで待つのは危険だ‼︎ とにかく、脱出経路を確保するんだ‼︎」
清水の提案により、俺たちは駅へ向かうことにした。
公園から歩くこと約15分、俺たちは無事に駅にたどり着いた。
人気がないのはもちろん、電車が走っている気配もなく静まり返っている。時刻表も文字が擦れて見えなくなっており、ホームの時計の時刻も数字の配列がめちゃくちゃになっている。
早く電車が来ないかと待っていると、遠くの方から人影が見えた。見覚えのあるオレンジ色のジャージ姿…、あれは間違いない…‼︎
優一郎「あれは先生だ‼︎ みんな先生が戻って来たぞ‼︎」
みんなで歓声を上げて大いに喜んだのも束の間、それはすぐに止んだ。
「ドン、ドン、ドン…」と洋太鼓のような足音を静まり返った駅のホームに響かせながら、「そいつ」はこちらに近づいてくる…。
山口「あ、ああ、ああ…⁉︎」
近づいてきたのは三村ではなかった…。三村の姿をしたしゃもじ人間だった。
「残念でしたァーーー…、先生はもう生まれ変わってしまったのサァーーー‼︎ こーんな風にナァ…、おい‼︎」
しゃもじ人間が二人で金髪の男を一人引き連れてやってくる。俺はそいつの顔に見覚えがあった。
「おい⁉︎ 何すんだこの野郎‼︎」
山口「あっ…⁉︎ あれは北島くん…⁉︎」
そう、山口と同じ高校で俺たちと同じ歳の「
北島は俺の地元では有名な不良で、宮高の同級生の村上率いる「
暴走族「
「いいかぁ…、お前らに今から最高のショーを見せてやるぅぅぅ…‼︎」
北島「おい、山口っ‼︎ ボーっとしてねぇで早く俺を助けろぉ‼︎」
「さァァ…、やれェェェェ‼︎」
「しゃもぉぉぉッッッ、ホォォォッッッ‼︎」
十人ほどしゃもじ人間が現れ一斉に北島に飛びかかる。俺たちはただ見ているしかできなかった。
北島「うわぁぁぁ…、誰か…‼︎」
「しゃも、しゃも、しゃも、しゃも、しゃも、しゃも…」
意味不明で不気味な効果音を上げながら、しゃもじ人間たちが北島をもみくちゃにすると、白い煙が辺りに立ち込め、煙の中から「ドン、ドン」と洋太鼓のような足音がした。
「山口ィィィ…、よくも俺を見捨てたナァァァァァ…‼︎」
何と、北島がしゃもじ人間にされてしまった‼︎ 三村もこんな風ににしゃもじ人間にされてしまったのか…⁉︎
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