第十赦喪事 探索
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しばらく救急車を走らせて、街を眺めながら商店街を探していた。街は綺麗だが活気はなく、今にもどこかからオバケが出てきそうな不気味な雰囲気だ。
はるか「どこもかしこも不気味ね」
雅「そこら辺からヤツらが今にも飛び出してきそうね」
山口「ちょっと…、縁起でもないこと言わないで下さいよ‼︎」
雅「冗談よ、冗談…」
病院から救急車を走らせて30分ほど経った頃、商店街のアーチが見えてきた。三村は商店街の入り口付近に救急車を停め、俺たちは救急車を降りて商店街へ入った。
それにしても、人間がほとんどいない世界にも関わらず、三村は救急車をちゃんと歩行者の邪魔にならない場所に停めている。さすがは体育会系といったところか。
商店街の中をゆっくりと歩きながら探索してみるが、どこも電気はついておらず、中に入っていくほど暗くなっていく。現実世界では、もう少し歩いたところに電器屋とその横にコンビニがあったはずだ。
電器屋にたどり着いた。その横にコンビニもあった。どうやら建物や施設の配置は現実世界とほとんど変わらないらしい。
三村「少々気は引けるが、状況が状況だ…。ありがたくいただくとしよう」
三村は軽く一礼をした。生真面目で律儀な三村のことだ。店主も店員も誰一人としていない店とはいえ、勝手に持っていくのは万引きでもしているようで少し申し訳ない気持ちだったのだろう。
俺たちも三村を見習って軽く一礼をしたあと、充電器や電池やラジオなどを集めた。そのあとは、コンビニで必要最低限の物資と食糧を集めて、コンビニの中で食べ物を食べながら少し休んだ。
だが、コンビニの商品もさっきの電器屋の商品も、パッと見た感じは現実世界で売っている商品と変わらないのだが、よく見ると解読不能な不気味な文字が書かれている。この世界独特の言語だろうか?
それに、パッケージのマスコットキャラクターも全てしゃもじ人間に差し代わっている。
俺は気味が悪くなって思わず吐きそうになったが、味などは特に問題がなく、現実世界と同じ物だったので我慢して呑み込んだ。
腹ごしらえをしたところで、清水たちはコンビニのコンセントに充電器を差してスマホにつなぎ、充電を開始した。正常に充電できるようだ。
5分ほど経った頃、清水たちはスマホの電源を入れた。ここまでは特に何も問題はない。三村はラジオに乾電池を入れて周波数を調整しているが、SF映画のUFOが発する電波のような不気味なノイズがするだけで一向につながらない。
清水「ダメだ、圏外だ…。みんなは?」
はるか「私も」
山口「僕もです」
雅「あたしのも」
みんなスマホの電波が圏外のようだ。
雅「あたし、ちょっとかけてみる」
雅がダメ元で友達に電話をかけ出したが、一向につながらない。だが、10コール目でようやくつながった。
「プルルルル…」
雅「ああっ、もしもし! 明菜⁉︎」
雅は嬉しさのあまり少し目に涙を浮かべていた。俺たちも思わず少し笑みを浮かべた。だが、次の瞬間…、一瞬にして全員の血の気が引いた…。
ザザーッというノイズと共に、スマホの画面から「ドドドン、ドン…」と洋太鼓のような音がした。
もしや、ヤツらに…⁉︎
恐る恐るスマホの画面を見ると…、
「もししゃも〜⁉︎ もししゃも〜⁉︎ 明菜だよ〜⁉︎ なぁーーーんてナァ‼︎ ハァーハッハー‼︎ 残念で〜したァァァァァ‼︎ ポクちゃんは、お前みたいな人間のお友達じゃ………、ありましぇぇぇーーーーーん‼︎」
という黒い文字がスマホの画面から次々と出てきた。雅は怯えて震えながらスマホを持っている。
そして、次の瞬間…、ザザーッとノイズが流れた後、スマホの画面にしゃもじ人間がデカデカと現れ、
「居場所は大体分かっタ…。今すぐそっちへ仲間が行くゾォぉぉぉぉぉ‼︎」
と、大きな黒い文字がスマホの画面から出てきた。
雅「いやぁぁぁぁぁぁ‼︎」
雅は恐怖の叫び声を上げながら思い切りスマホを床に叩きつけた。
清水「まずい…、ヤツらがここに来る‼︎ 早く逃げよう‼︎」
俺たちは急いで救急車を停めたところまで引き返した。だが、既にヤツらが入り口を塞いでいた…。
「どこへ逃げるつもりザァーマスかぁぁぁ…⁉︎」
「あんたらァァァァァ‼︎ 逃さへんでェェェェ…‼︎」
「キィぃぃぃぃ〜‼︎」
オバさん風のしゃもじ人間たちが俺たちに襲いかかる。俺たちはまた来た道を引き返して、商店街の奥へ奥へと逃げた。
逃げる途中、商店街に置いてある物を投げたり、段ボール箱やゴミ箱を蹴り倒してヤツらを妨害しながら走った。
前にいたヤツらの何人かがつまづくと、それに引っかかって他のヤツらもつまづいた。
魚屋と八百屋の間の細い路地を見つけた俺たちは、そこへ入り込んで何とかヤツらを撒いた。
ヤツらが探索に来る前にどこかへ逃げないと…。
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