第二赦喪事 異変

第二赦喪事だいにしゃもじ 異変いへん


 午前7時、俺は目を覚まし、ガンガンとうるさい目覚まし時計を止めて、起き上がる。


 その瞬間、俺はこの世界がいつもと何か違うと気づいた。


 窓を開ければいつも見慣れた景色が広がっている。だが、空はどんよりとした雲が覆い、まるで昼間の曇り空のようだ。

 それに街は妙に静かで、いつもなら聞こえてくるはずのスズメの鳴き声も、一階からのテレビの音も聞こえない。


「いつもなら家族がみんなテレビのニュースでも見てる頃なんだけどなぁ…。」


 俺はそんな違和感を感じながらも眠い目を擦ってあくびをしながら、階段をパジャマ姿のままで下りる。



 俺の名前は「藤之宮優一郎ふじのみやゆういちろう」。どこにでもいるような平凡な高校二年生だ。


 部活は帰宅部、成績は可もなく不可もなく至って普通、学校やクラス内でのスクールカーストの位置づけは二軍の上の方といったところ。

 夢とか目標とか、特にやりたいことが何もない、本当にどこにでもいるような普通の高校生だ。


 まあ、唯一の救いは「橋本はしもとはるか」という彼女がいることだけか。


 彼女は生まれて初めて出来た恋人で、高校一年から付き合っていて関係は良好。はるかは成績優秀でテニス部に所属し、一年生にしてインターハイの関東大会予選で優勝し全国大会へ出場した経験もあり、おまけに性格もよくて美人で彼女を狙う男子も大勢いる。


 そんなハイスペック女子とこんな平凡で何の取り柄もない俺が付き合えたのは奇跡に近い。おかげで男子からは、「なんであんな冴えない男が!橋本はるかと⁉︎」と、羨望の眼差しを向けられる毎日だ。



 一階へ下りたが、あたりはしんとしている。不審に思いながらも、俺はすぐに制服に着替えて、朝食のぶどうパンを手に取りテレビの前に座る。リモコンでテレビの電源を入れようとするが、何度電源ボタンを押してもテレビは映らない。


優一郎「母さん、テレビが映らなくなったんだけど?」


 返事がない。無視かよと思いながら、俺は朝食を食べる。きっと昨日、相変わらず卒業後の進路を何も考えていない俺に腹を立てた母さんとケンカをしてしまったから、まだ怒っているのだろう。


 朝食を食べ終えた俺は、洗面台で顔を洗って歯を磨き、急いで学校へ行く準備をする。


 午前8時になったので、家を出ることにした。



優一郎「行ってきます。」



 またしても返事がない。さすがに不気味すぎる。そう思って、俺は少し様子を見に行くことにした。

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