第9話―リア充は遊び時間に多くを費やする2―
モヤモヤする。
詰められてきたら、その分だけ離れて争いごとを避ける人間関係に疲れていた。走ってみたくなるような活力は外から主張しながらも内川はとても付き合えるような気力はない。
この日は雨が降っている。
陰鬱な音を立てて振っているようにも聞こえるほど友人関係というものに疲れを感じていた。
右の前の方から見覚えのある小さな赤色のレインコート。フードを目深にかぶっていて誰か判別できなかったけど見覚えがある。
足を止めてフードの奥から、特徴的な目を見た。あの持っている瞳は須津だと気づくのに時間は掛からなかった。
雨天でもレインコートを身にまとい須津は、走っていた。こちらに気づいていない。声はかけずに、そのまま家に直進する。
――また別の日も見かけた。
学校から須津の自宅まで距離は近いとはいっても数十分ぐらいの距離にあって、早々と目撃するのは意図的だと感じた。
(またかよ。
現実は小説より奇なりなんてファンタジーなことわざを信じたくなってくる回数だよ)
誰に対しても向けないのを心中で悪態をつく。
須津は勉強していた。せっかくの晴天だというのに
なかなかの集中力で俺が横にいることを知らない。さすがに接近をし、影を差し込めば気づくかもしれないが……迷惑でしかないし顔を覚えてもいないだろう。
――そして須津を話すことなく、このまま自然消滅して違うコミニティで生きていくものだと思った。
「よぉ、こんなところで会えるなんて奇遇だね。元気にしていたかいクノヘ」
「――どうして、話しかけてくるんだよ」
夕焼けに染まっていくのを芝生が広がっている大きな公園のベンチで、だらしなく座っていると声を掛けられた。
左の方へ腰を掛けるのはランニングウェアをした須津。そういえばこいつも人との距離感とか持っていなかったな。なれなれしい。
「いや、だって今は一人だから……
えっ!なんか地雷とか踏んでしまった!?うわぁー
「そんなんじゃねぇよ。
俺と……お前が話すようなことなんてないだろう。生きている世界が、住んでいる世界がちがうんだからな」
あまり意識していなかったが怪我を治療してもらい別れれば他人になる。決して交えることがない真逆な属性を持っている。ただ男性とか女性といった簡単な異性だからというものではなく立場やコミニティだ。
「住んでいる世界ねぇ……そんなの妄想じゃないかな。
これって差がついてしまうようなものなの?」
「……何が言いたいんだよ。
人生を楽しんでいて周囲から注目されている認知されている者。それに人生を悲観してトコトンまで落ちること考えてしまう者。
イケメンとかブサイクで自然と別れて人間関係を構成していくの知らないとか言うなよ。
それが摂理で法則として目に見えずにある」
夕方の公園でそんな話をしている自分がなんだか言葉に出来ない表現むなしくなってくる。
これに抗おうともした時期はあったが、それもコミニティという隔離されて気づけば構成はしていく。それに排除しようとした異分子には、排斥せんと無慈悲に攻められる。
それに屈して学んでから安定とした生活を手に入れるために生き方をした。
そのおかげで友達が増えたし、可愛いギャルとも付き合える機会が増えた。けど欲しくなかった。なにかが乾いていた。
自分でも分からないものを求めながら
「そ、そうなの。
そんなに重たく返されるとは思いもしなかったな……けど、その価値観は歪んでいるし考えていない」
「歪んでいるって……なにバカなことを――」
「拒絶しているのよ。そうした人や複数を否定している」
「拒絶?」
「そうそう。それに歩み寄ろうとしない受け入れようともしない。
それは見下す側だけじゃなく見下されたものも同じ、だから壁ができてしまい自然と離れたものに構成していくのが多い傾向に向かう」
「――ッ!?」
たしかにその通りかもしれない。
俺はこの認識を、なにかを勘違いした。そのまま真実で揺るぎないものであると強く刻まんでしまっていた。なんもないことを言うように須津の言葉が奥底にあるのを響いた。
(否定していたのか。……頭は柔軟だから固定概念には支配されていないと考えていたけど)
住む世界が違うことを掘り下げて具体性を考えを詰めてみようともしなかった。
「スッキリしたみたいだね。
それじゃあバイバイ」
これって顔に出ていたのか。須津は薄く目を細めて微笑んでみせた。
よっこいしょと…若いくせにそんな中年みたいな掛け声でチカラを入れて立ち上がった。
もう行くのかと、そう考えると引き留めるなにかをないかと考えて、短い時間で浮かんだ。見えなくなるまで眺めず立ち上がる。
「待ってくれ。以前こんなにこと言わなかったか。また家に来てくれて?
もし迷惑じゃなければ今から参ってもいいか」
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