第8話―リア充は遊ぶ時間に多くを費やする―

また来てと言われて素直に真に受けない。

あんな叫ぶような別れをしたのもベストな方法を知らないからで距離感は遠いのだから。

――そして三週間が経過してのこと。

同じクラスの垢抜けた男子の二人から誘われてボウリングに向かおうと橋の歩道で歩いていた。


「なぁ、ギャルと付き合いたいと思わねぇ」


「わかる」


分かるか!なんなんだ唐突にギャルと付き合いたいなんて応えるの困るじゃないか。

とはいえず俺もこれには「やっぱり付き合いてぇよ」と心もないことを言った。


「はぁ、はぁ……」


(んっ、あれって須津すどじゃないか)


ランニングウェアを袖を通した須津結真。

向かいから走っている姿を目にして俺は赤の他人を取ろうとした。

もしかすると声をかけられるかもしれない、

友達には知られたくないし須津にもチャラい連中といるのを見られたくなかった。

逃げるのも不自然、となると俺が取れる選択は怪しまれないよううつむくことだった。

須津の足音がどんどん近づいてくる。そして……速度を落とさず通り過ぎっていく。

スピードダウンもしていないのは俺に気づいていない、そう解釈もできる。いやそれしかないだろう。向かい合って食事を取ったのは一回だけで知り合ったのも三週間前だ。

なら忘れていてもおかしくないか。

そう思いたがら、また週が過ぎた頃――


「あいつ今度は坂を登ってダッシュしているな」


この日もカラオケで歌った帰り道。家を送ることを流れで俺は如月マヤヤと並んで河川敷を歩いていた。

そして不登校である須津が負担のかかるやり方で坂の上を走るのをたまたま目にした。


「どーしたの正実まさざね。下を向いたりなんかして?らしくないよ」


「はは、そうだな。俺らしくないよな」


本当に俺らしくない。不登校のくせになにを頑張っているのか、そう形容し難い奥底から湧き上がってくる。

むしゃくしゃと心は闇に焼かれるように真っ暗な気持ちへとさせる。

その翌日、もしかすると同じ場所で走っているのかと気になり河川敷の見栄えない坂に寄る。


「……まだ走っているのか」


運動不足になるから走っていた。

ただ運動不足を解消というだけで走っているだけだというのに憤りと憧憬が混ぜり合う。

怒りと敬意という相反するものがわからずに。

また別の日には友達と映画を見終わったレストランで大いに盛り上がり店を出て1階に降りる。降りて図書館の前で通り過ぎようとして須津が机で勉強しているのを目撃した。


(今度は勉強か調べごとか。

不登校な奴は自由な時間があっていいよな。俺は学校で勉強したりヒエラルキーを落ちて過ごしにくい無いよう模索しているのに。

本当に……お気楽なことだ)


でも何かが変化をもたらしていた。

目的が見えずに歩き続けていく、さまよい霧散してくれない感情はそこにいる快適に暮らしている人を敵愾心てきがいしんを向ける。

――夜が深くなり街道が淡く照らす下で。


(でも、おかしい。

どうして過敏に意識しているのか?それだったら他の人にも似たような感情あるはずだし、他はなかったのに。

認めたくないけど須津が不登校じゃなく何かを持っていることから俺はねたんでいる)

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