第4話
朝生「はいはい!」
三島「(嬉しそうに)どうぞ、お願いします!」
朝生「あの、ずっと気になってたことがあるんですけど…」
三島「何ですか?」
朝生「被告の人って…」
三島「はい」
朝生「Tシャツめっちゃダサくなかったですか!?」
三島「(呆れながら)それは今関係のない―」
小泉「あ! 分かるそれ! 何なの、あの変なキャラクター」
佐藤「あのパンダか何なのか分からないキャラですよね!?
僕もあれ見るたびに笑い堪えてましたよ!」
石田「…あなたたち、本気で言ってるの?」
朝生「え?」
小泉「何? どういうこと?」
濱谷「まあ、しょうがないのかもしれませんけどね」
中田「(ニヤニヤしながら)皆さん面白いなあ」
小泉「何だよ! あのキャラが何かあんの!?」
朝生「そうよ! 教えてよ!」
石田「(溜息をつく)…。あれは、パンダネコっていう、今すごい人気のキャラなの」
中田「しょっちゅうCMとかに出てるし、グッズもめちゃくちゃ売れてるんですよ」
濱谷「まあ、人気なのは若い人たちの間だけですけどね」
朝生「若い人…」
小泉「ほ、本当にそんなに人気か!? 俺は今日初めて聞いたぞ!」
渡部「あら、そうなの? 私は知ってたけど」
高畠「私も。まあ、娘が好きだからそれで知ったんだけど」
渡部「あ、私もそう!」
小泉「(北山に)あんたは知らなかったよな?」
北山「ええ。今日初めて聞きました」
小泉「(香田に)あんたもだよな?」
香田「(気まずそうに)…」
小泉「な? そうだよな?」
香田「…私は…あのTシャツ、持ってる…」
騒然とする一同
濱谷「嘘!?」
佐藤「意外だなあ」
石田「ごめん。それはキモい」
香田「何がキモいか! 男が可愛いものが好きで何が悪い!
何なら今履いてるパンツもパンダネコだ! 見せてやろうか!?」
小泉「いいですいいです!」
石田「セクハラで訴えるわよ」
三島「あの、皆さん」
一同、三島を見る
三島「その話、もういいですか? 本題に戻りたいんですけど」
佐藤「すいません。ちょっと盛り上がってしまって」
小泉「まあそう堅くならずに。楽しくやりましょうよ」
高畠「そうよ。小学校の先生なら、尚更楽しむことを覚えなくちゃ」
香田「ちょっと待て。私は楽しむつもりなんかないぞ。早く帰りたいんだ」
三島「大きなお世話です。(頭を抱えて)もう、まともに話してくれる人はいないんですか?」
濱谷「しょうがないな。じゃあ、僕が話しましょう」
三島「期待して大丈夫ですか?」
濱谷「もちろん。僕、事件の詳細を全部メモしてたんです」
濱谷、ポケットからメモ帳を取り出す
小泉「へえ、そりゃすごい」
濱谷「僕、メモ魔なんです。昔、バイトの先輩に何でもメモするように教えられて、
それ以来何でも書き取らないと気が済まなくて」
小泉「いい先輩じゃないの」
三島「でも事件の流れはさっき―」
濱谷「さっき出てなかった話もあるんですよ。
そこに、僕たちが見落としてる何かがあるかもしれない。それを皆で探してみましょうよ」
佐藤「いい案ですね」
濱谷「そうでしょう?」
三島「やっとまともな話し合いができそうです! では、お願いします」
濱谷、メモ帳を開いて読み上げる
濱谷「はい。まず被告についてですが、名前は―」
香田「名前はいい。もう耳にタコができるほど聞いた」
濱谷「まあ、それもそうですね。その被告ですが、誕生日は十一月二十五日で星座は射手座。
血液型はB型で、東京都出身。仕事は鳶職をしています。趣味はパチンコと競馬と風俗。
学生時代のあだ名は『ドロボー』。
しょっちゅうクラスメイトの持ち物や給食費を盗んでいたそうです。初恋の相手は―」
小泉「ちょ、ちょっと! もういいよ! 情報量がすごいな…」
濱谷「全部メモしてますから」
朝生「それにしても、話を聞く限り、本当クズですよね。その被告の男って」
香田「理不尽な理由で殺人を犯すのも頷けるな」
三島「…(濱谷に)あの、事件に関することをお願いします」
濱谷「分かりました。まず、事件の前日ですが、被告はいつも通り仕事。
被害者は夜の仕事をしてるので、朝方に帰宅し、夕方まで寝ていました。起きた後はまた仕事へ―」
香田「前日の話はどうでもいいだろう」
小泉「まあまあ」
濱谷「そして事件当日。被害者はいつものように朝方に帰宅し、部屋で寝ていました。
中学三年生の息子は、十二時頃に家を出て学校に向かっています。
これは第一発見者である隣のおばさんが窓から見ています」
渡部「ずいぶん遅い登校ね」
松崎「事件の日は、体調が悪かったんですよ。確か、前の日が部活の大会か何かで」
小泉「お! 久しぶりに喋ったな、イケメン君。
確か、自分の飲み物がオレンジジュースじゃないって抗議して以来だな」
松崎「(少し恥ずかしそうに)別に、いいでしょう」
朝生「あの子、部活は何やってましたっけ」
濱谷「剣道部です。結構強いらしいですよ。県大会でいいとこまで行ったって」
朝生「へえ」
三島「続きをお願いします」
濱谷「はい、ええと―」
高畠「あ!」
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