第2話
静まり、北山を見る香田、小泉、佐藤、
中田、濱谷、朝生
石田はスマホを見ている
北山「その話はその辺にして頂いて、
(佐藤に)陪審員長、喉が渇いたんだが、何か飲み物は頂けないかな」
佐藤「あ、それなら大丈夫だと思います」
小泉「ああ、そういえば、裁判の前から何も飲んでなかったもんな」
朝生「確かに、私も喉渇いちゃった」
佐藤「じゃあ、まず全員分の飲み物を持って来てもらいましょう」
中田「飲み物って何があるんですか?」
佐藤「確か、烏龍茶かオレンジジュースだったと思います」
濱谷「2つだけ!? ケチくさいなあ」
小泉「ビールないんですか?」
佐藤「さすがにアルコールは―」
小泉「まあ、しょうがないか」
朝生「私、カシスオレンジがいいなあ」
石田「なに可愛い子ぶってんだか」
朝生「可愛い子ぶってなんかないし!
カシスオレンジは、男子が女子に飲んで欲しいお酒ランキング一位って雑誌に書いてあったんだか
ら!」
濱谷「可愛い子ぶってるじゃない」
朝生「(不満そうに)…」
高畠「私はあったかいお茶が飲みたいわねえ」
渡部「あ、じゃあ私も」
北山「そんな我儘を言っていいのなら、私はコーラがいいなあ」
小泉「コーラ!?」
濱谷「炭酸なんて飲むんですか!?」
北山「いや、これがどうも若いときからやめられなくてね。お恥ずかしいが」
小泉「別に恥ずかしいことじゃないと思うけど、ちょっと意外だったもんで」
佐藤「すいませんが、コーラもありませんし、お茶も冷たいものしか―」
中田「(佐藤に)すいません。ちょっと外に出て買って来るっていうのは駄目なんですか?
この近くにコンビニあったでしょ?」
濱谷「あ、それいいアイデア!」
中田「でしょう?」
小泉「皆で飲めるように2Lのやつ買って来てよ!」
朝生「あ、私ポテチ食べたい!」
濱谷「じゃあついでに唐揚げも買って来てもらえます?」
小泉「いいね! ちょっとしたパーティだ!」
佐藤「ちょ、ちょっと待ってください!
話し合いが終わって結論が出るまでは、誰もこの建物から出られないことになってます!
残念ですが―」
渡部「何だ、そうなんだ…」
高畠「タダで化粧品買って来てもらえると思ったのに」
濱谷「化粧品って、もはや食べ物でもないじゃないですか」
高畠「主婦は家計を握ってるのよ。貰えるものは貰っとかないと」
渡部「そうそう!」
中田「まあ、コンビニの件は冗談ですよ。ここから出られないことは知ってましたから」
濱谷「何だ、そうだったんだ」
佐藤「それで、皆さんの飲み物ですが、烏龍茶とオレンジジュース、どちらにされますか?」
香田「そんなの何だっていい。全員烏龍茶でいいだろう」
佐藤「そんな勝手に―」
小泉「いや、俺はオレンジジュースがいいな。このあと歌を歌わなきゃならないから」
中田「歌?」
小泉「この後、行きつけのスナックに行く予定があって、そこでやたら歌わされるんだよ。
ほら、俺歌上手いからさ」
濱谷「いや知らないけど」
朝生「それと、オレンジジュースとどう関係あるんですか?」
小泉「いや、関係あるのは烏龍茶の方なんだけどね―」
香田「烏龍茶には、喉の油分を吸収する性質がある。歌を歌うときには向かない飲み物だ」
小泉「その通り! よく知ってるね。もしかしてあんたもカラオケ好き?」
香田「私は医者だと言っただろう。それくらいの知識はある」
佐藤「では、オレンジジュースが一人。他に、ジュースの方は?」
松崎、手を挙げる
松崎「俺もジュースで」
朝生、手を挙げる
朝生「私も!」
佐藤「オレンジジュースが3…。他にはもういませんね? では伝えて来ます。少々お待ちください」
佐藤、部屋を出て行く
静かになる一同
小泉、北山に近づく
小泉「(小さな声で)さっきはどうも」
北山「何が?」
小泉「喧嘩を仲裁してくれたでしょ? あなたがいなきゃ収拾つかなかったよ」
北山「私は、ただ喉が渇いたのでそれを伝えただけですよ」
小泉「またまた。謙遜しちゃって」
小泉、全員に呼びかける
小泉「皆さん! 陪審員長もすぐ帰って来るでしょうし、先に座って待ってませんか?
その方がすぐに話し合いを始められるでしょ?」
中田「それもそうだ。じゃあ俺は、綺麗なお姉さんの前に座っちゃおうかな」
中田、石田の対角線上の席に座る
濱谷「その席、確かにあの人の前だけど、一番遠い席でもありますよ」
中田「しまった! そんな落とし穴が…」
濱谷「ちょっと考えたら分かることでしょ」
朝生「(小泉に)ねえ、これ、途中で席替えとかあるんですよね? 男女交互に座るとか…」
小泉「いや合コンじゃないんだから」
香田「それより、番号順に並べばいいんじゃないか?」
小泉「番号?」
香田「陪審員番号。それぞれもらっただろう」
小泉「なるほど。それなら角が立たない」
朝生「えー。それじゃつまんない!」
小泉「後で席替えしてあげるから」
朝生「本当!? じゃあオッケー!」
石田「面倒臭いなあ。適当でいいじゃん」
香田「決まったことにいちいち文句を言うな」
石田「決まったって、あんたたちが勝手に決めたんでしょ?」
香田「何だと!?」
小泉「もう、いちいち喧嘩しない!
(石田に)あんたも悪いよ。こういう場では民主主義が基本なんだから」
石田「(不満そうに)…」
小泉「じゃあ皆さん、陪審員長の席から時計回りに座っていきましょう」
順に座っていく、香田、高畠、中田、石田、松崎、北山、渡部、濱谷、小泉、三島、朝生
中田「(石田に)お隣ですね」
石田「…(スマホをいじる)」
と、佐藤がドアを開けて入って来る。
手にはたくさんのグラスと湯呑みが乗ったお盆を持っている
佐藤「すいません皆さん。お待たせしました」
佐藤、お盆をテーブルに置く
小泉「いえいえ、先に座っておきましたよ」
佐藤あ、「本当だ。どうもありがとうございます。
あ、そうそう。コーラとアルコールは無かったんですけど、あったかいお茶ならありましたよ!
二人分もらって来ました!」
高畠「あら、本当!?」
渡部「ありがたいわあ。今ちょうどあったかいお茶が欲しかったの!」
佐藤「良かったです」
佐藤、グラスをお盆からテーブルに移していく
朝生「手伝います」
朝生、立ち上がり、グラスを手に取って行く
佐藤「あ、じゃあ順番に回して行ってください」
朝生「はーい」
朝生、グラスと湯呑みを隣の三島へ渡していく
朝生「これ回して行ってくださいねー」
中田「何だ、あったかいお茶あったのか。そう言われるとそっちの方が飲みたくなって来るなあ」
濱谷「あ、僕も」
小泉「俺も俺も」
渡部「私も!」
小泉「あんたはもう持ってるでしょ!?」
渡部「あ、そうだったわ。ごめんなさい」
朝生「私はカシスオレンジが―」
濱谷「だからそれはないって」
佐藤「どうしますか? あったかいお茶がいい方は今からでも変えられますけど」
香田「別にいいだろう。時間の無駄だ」
佐藤「…皆さん、構いませんか?」
小泉「いいよ、俺は別に」
濱谷「僕も」
中田「僕も構いませんよ。すいません。何か余計なこと言っちゃって」
全員にグラスと湯呑みが行き渡る
佐藤「よし、これで全員に行きましたね」
高畠と渡部、お茶を飲む
高畠「ああ、落ち着くわあ」
渡部「お煎餅が欲しくなっちゃうわねえ」
高畠「買って来たら―」
高畠、佐藤を見る
佐藤、黙って首を横に振る
高畠「やっぱり駄目よね」
松崎、ゆっくり手を挙げる
松崎「あの…」
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