あの日の約束

katsumi

第1話

「ねぇ、貴志たかしくん私の事好き?」

それは僕が小学校の卒業式で彼女から突然の告白を受けた。

「えっ・・・」

彼女とは前々からクラスも一緒で仲は決して悪くはない。

僕も彼女の事好きだったし、告白もしたかったが勇気が出ず出来なかった。

それが卒業式になり突然彼女のほうからの告白。僕はそれに驚いている。


「私・・・ずっと好きだった。貴志くん彼女とかもしかしているの?」

「いや、いない。ただ容子ようこの方から告白されたもんだからビックリしただけさ」

「そんなに意外でした?」

「うん、僕もね前々から告白したかったけど怖くて言えなかった。

でも容子の方から言ったから・・・」

「良かった! 私断られたらどうしようかと思った」

「こんな僕で良ければお願いします!」

「こちらこそね」


そう言って僕らは彼女とおつき合いする事になった。

中学校に入りクラスは違うが帰り道はいつも一緒に帰った。

二人きりで遊びに行ったりとすごい楽しい時間を過ごせた。

だが、中学2年生の夏頃にある事件が起きた。

それは・・・。


◆◆◆


彼女のお父さんの仕事の都合で地方に行くことになった。

そしてその前日、彼女と会うことになった。

「どうしても行かなきゃいけないのか・・・」

「うん・・・ごめん・・・。でも私ずっと貴志くんの事想ってるし忘れないよ!」

「うぅ・・・辛い・・・僕は辛い何か胸が引き裂かれるこの想い・・・」

「私だって痛い! 胸が苦しいし引き裂かれるような感じだもん」


彼女は泣きながらそう言った。


「僕は・・僕は・・・」

「しっかりしてよ! 私だって同じ気持ちだよ!」

「ごめん・・でも・・・」

と、突然彼女のほうからキスされた。

僕は目をつぶり黙ってしまった。

「貴志くん落ち着いた?」

「え・・・あぁ・・・」

「よく聞いて、私たち離ればなれになるけど会えなくなるわけじゃないの。

ただお互い会うのに距離が長くなるだけ。それだけなの。

たったそれだけ。だから悲しまないで私たち電話なりメールなり手段はいくらでも

あるんだから。そうでしょ?」


彼女は強かった・・。僕は彼女に教えられた。

でも僕には判った。彼女の目は心底そう思っていない気がする。

誰よりも一番寂しく辛いのは彼女自身かもしれない。


「ありがとう。本当は僕の方がしっかりしなきゃいけないのにね」

「私はね、貴志くんの事好きだから。もしよかったら結婚もしたいなー」

「そうだね、じゃ約束しよう。お互い想っているなら結婚というゴールまで行こう!」

「うん!」

そう言って彼女と約束をした。そうあの日の約束を・・。

そしてそれからどれくらい経つだろうか・・・。

15年は経過している・・・。


◆◆◆


現在僕は29歳、まだ結婚はしていない。僕はずっと彼女の事想ってるし

あの日の約束を忘れたりはしない。いままでつき合った女もその間いた。

結婚の話もあったが断り続けた。想いがある以上裏切れないから。

最初中学校まではお互い連絡は取り合っていたが高校の半ばから連絡が少なくなり

今じゃもうなくなっている。

 

そしてそんなある日僕の会社に一人の女性がパートとして入ってきた。

「はじめまして小池容子と言います。今日からパートとして入ったので

よろしくお願いします!」

「ああ、こちらこそ・・。僕、岩城貴志といいます。よろしくね」

「岩城貴志さん・・?」

「どうかしましたか?」

「あ、いえ・・・私の友人で岩城貴志って同じ名前の人過去に記憶あるんですよ」

俺はそのとき確信した。この人があの時の容子だということを。

「そうですか。その人どんな感じの人なんですか?」


「うん、ちょっと気弱な所あるけど、すごく優しくてなんか温かい人でした。

でも私がもう結婚して子供いるっていうのはその人には言いずらいですけどね」


僕はその時ショックを受けた。もうこの人は違う人の所にいるなんて・・


「へぇ、そんな優しくて温かい人となぜ結婚なされなかったのです?」

僕は容子にそう言った。


「最初はそう思った。その人と結婚したいと考えた。でもね私は思うの。

その貴志くんっていう人がいなきゃ私今の旦那とも会えなかったと思うし

良い恋愛も出来なかったと思う。辛い恋愛の時も私が貴志くんにかけた言葉。

ほら言葉って吐いた以上責任があるでしょ? だから私はそれを

全うしてやろうという気持ちがあったから」

「そっかーじゃあその人も今はきっと可愛い彼女いてきっと容子さんと同じ気持ちでやってるに違いないね」

「そうね」


俺の中学校時代の初恋の人は旦那がいて子供もいて幸せな

家庭を築いている。もし俺がここで昔の初恋の人だと言っても

信じるには信じるだろうけど、結果彼女の家庭まで

迷惑かかるかも知れない。それだったらいっそうのことただの同姓同名と言う事で

話を終わらせてしまった方がいいかもしれない。

ちょっと痛いが彼女には何も罪はない。

彼女が今幸せならあの時の約束はなかったことにしよう。


―完―



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あの日の約束 katsumi @katsumi2003

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