九尾の狐の恋愛相談
信仙夜祭
九尾の狐の恋愛相談
わらわの名前は、妲己。
女媧様のご命令を受けて、周王朝を滅ぼしたんだけど、封神されちゃった。
正体は、
まあ、仙人は元々永遠の命を持っているので、体を取り換える必要もないのだけどね。
最後は、女媧様にも見限られて封神されると言う、最後を遂げた傾国の美女。
後世には悪女としての名前として、広まっているかな。
神界に閉じ込められて、世界の安定のために柱にされたのだけど、わらわは研鑽を続けた。
そして、短時間だけ神界を抜け出す事が出来る
「久々の、シャバの空気は美味しいな~。4000年ぶりかな~」
世界は大きく変わっていた。
でも、人間界を見続けていたいので、わらわには知識がある。
そして、見つけた。
「わらわの魂魄が、入り込める肉体……」
体を全て乗っ取る事は、避ける。
大事になるのが目に見えているからだ。仙人や神に見つかる可能性もある。
ちょっと、体を借りてこの娘をいい方向に導いてあげよう。
そう思ったのだけど……。
「今日もアイドル君のグッツあさりか……」
この娘の思考回路は、どうなっているんだろう?
給料のほぼ全額を、アイドルに投資している……。
貯金もほぼゼロ。
部屋には、グッズで足の踏み場もない。
定期的に行われる、握手会には常に参加……。
「仕事は……、可もなく不可もなく。これで、幸せなのかな?」
そんな事を考えていた時だった。
アイドル君が捕まった。
ちょっとした、不祥事だけど、いきなりの謹慎だ。
この娘も、落ち込んで、一週間ほど仕事を休んだ。
わらわは見ていられなかったので、精神を半分乗っ取る事にした。
仕事は、順調そのもの。数日で効率の悪かった会社のシステムを改善した。これには、部長も驚いていた。
人間程度の知識など、仙人のわらわであれば、児戯に等しい。
この娘の『推し活』熱も冷めて来たので、グッツをフリーマーケットのアプリで売り出した。
まだ、アイドル君推しはいるみたいで、プレミアが付いているグッツは高値で売れたな。
そのお金で、化粧と服装を整える。
ちょっとくせ毛が酷い髪だったけど、肉体改造も行う。
特に、今の世情に合わせて、脂肪を消費した。
一ヵ月で、絶世の美女までは行かなくても、美人に分類される容姿にはなったと思う。
半分は、この娘の精神なので喜んでいるのも分かる。
そして、異性から誘いを受け出した……。
「……ここまでの異性嫌いとはね」
イケメンが、寄って来ても、この娘は拒絶し続けた。
理由は知っている。
学生時代の、イジメが原因だ。
人間不信の塊と言ってもいい。
でも、人生を楽しんでもらいたいと思う。
わらわは、アイドル君似を探し続けた。
そして、この娘が興味を持つ人物を見つけた。
少しずつ、打ち解けて行く。
たまに偶然を装って、街で出会う演出もした、今の時代だと、あり得ないんだけどね……。
でも、ドラマチックな展開も必要だと思う。
この娘も少しずつ心を開いて行く。
良い方向に流れていると思った。
「見つけたぞ、妲己!」
「げっ!?」
後、もう少しだったんだけどな……。
そのまま、連行されて、神界に戻される。
それでも、わらわはその娘を見続けた。
結局は、付き合う事もなく、距離を取る始末……。
「後少しだったんだけどな~」
ここで、声をかけられた。
「無理強いしても、良くはならんぞ?」
「月合仙翁様?」
人の縁を司る仙人だ。
それは、そうなんだけど……。
「今の時代だと、複数の異性と関係を持つのが普通じゃないですか?」
「それでも、あの娘には、運命の相手がおる。まあ、運命を受け入れるかどうかは、本人に任せるのが一番じゃよ」
「鄧蝉玉や竜吉公主に無理強いした月合仙翁様の言葉とも思えませんね?」
月合仙翁様は苦笑いだ。
わらわは、今日もあの娘を見ている。
貯金し始めたようだ。もう、アイドルの『推し活』は卒業したみたいだな。
それと、容姿に気を使っている。
そして、ある男と仲良くなった。
「あの男と縁があるのかな?」
容姿もパッとしない。収入も低い。
会話も途切れ途切れだけど、友人関係は続いている……。
わらわには、分らなかった。
「縁って、なんだろうな~」
その後、その娘を見ることを止めた。
わらわは、今日も世界を支えるため、柱としての責務を全うしている。
「出生率の低下……、っと言うか恋愛する人が減ってるな~。
エンタメの進化とか、楽しい事は増えているんだろうけど、いい方向なのかな~」
わらわは、神として世界を支えている。
でも、現代人を支える意味があるかと問われると、回答に困ってしまう。
今は、そんな時代だ。
九尾の狐の恋愛相談 信仙夜祭 @tomi1070
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