8.えへへ。龍ヶ峰さんとお出かけ……
「姉さん。嬉しいのは分かるけどいい加減その顔何とかならないの?」
二人は夕ご飯を食べている最中だった。にもかかわらず、先ほどからスマホをうっとりとした顔で見つめていた。見ているのは流のLINEのアイコンだった。そんな真雪に沙雪は呆れた顔を向ける。
「しょうがないじゃない。嬉しいんだから」
「本当に彼のことが好きなのね」
「大好きね」
真雪はそう言って一点の曇りのない瞳を沙雪に向ける。
「よかったね。これでいつでも連絡取り放題じゃない」
「む、無理よ!? 連絡なんてそうそうできないわ!」
首をブンブンよ横に振る真雪。
「じゃあ、まだ何も送ってないの?」
「……うん」
「まったくこういうのは勢いが大事なのよ」
そう言って沙雪は真雪の手からスマホを奪い取ると素早い手つきで何やら打ち込んでいる。
「な、何してるの!?」
真雪が沙雪からスマホを取り返した時にはもうすでに時遅しだった。
スマホの画面には流とのトーク画面が映っていてあるメッセージが送られていた。
「沙雪ちゃん! 何送ってるのよ!」
沙雪が送ったメッセージを見て真雪は目を見開く。
今すぐにそのメッセージを消さなければと思ったその時、既読がついた。流の目にそのメッセージが映った証拠だ。
「龍ヶ峰さんが見ちゃったじゃない! どうするのよ!?」
「姉さんが躊躇ってるから背中を押してあげただけじゃない」
「だからって、『明後日一緒にお出かけしませんか?』なんてメッセージを送らなくても……」
そう。沙雪が流に送ったメッセージは見る人が見ればデートのお誘いとも取れる内容だった。
今のは沙雪が送った誤送ですと今すぐに送らなければ、そう思ったその時、流からメッセージが帰ってきた。
「えっ……」
「どうしたの? 返信帰ってきた?」
流から帰ってきたメッセージを見て真雪は固まった。そんな真雪の手から沙雪はスマホを取ると流から帰ってきたメッセーいを読み上げた。
「ふ~ん。いいですよだって。よかったじゃない姉さん。彼とデートができるわね」
からかうように沙雪がそう言う前から真雪は顔を真っ赤にして心ここに在らずといった感じだった。
「お~い。姉さん~。ダメだこりゃ。完全に惚けてるわ」
(龍ヶ峰さんと一緒におでかけ……え、これは現実なのかしら……)
想像するだけでにやけが止まらなくなる。幸せな気持ちが体中から溢れ出してくる。心臓がきゅんきゅんと痛くなる。
真雪の頭の中はすでに明後日のことを想像していた。
「えへへ。龍ヶ峰さんとお出かけ……」
「それができるのは誰のおかげかしら?」
「沙雪ちゃんのおかげです!」
「そうでしょ。もっと私のことを褒めてくれてもいいのよ?」
「うん。たくさん褒めるわ! 沙雪ちゃんありがとう!」
現実に戻ってきた真雪はテーブルから体を乗り出すと沙雪の頭を優しく撫でた。
頭を撫でられた沙雪は幸せそうだ。頬をへにゃっと緩めている。
「明後日が楽しみだわ! 沙雪ちゃん明日一緒にお洋服を買いに行きましょう!」
「いいよ」
「龍ヶ峰さんはどんな服装が好みなのかしら?」
「聞いてみればいいじゃない。せっかく連絡できるようになったんだから。てか、何か返信してあげたら?」
「そ、そうよね。せっかくだから聞いてみようかしら……」
せっかくなら流が好みの服を着たいと思った真雪はストレートに『龍ヶ峰さんはどんな服が好みですか?』と聞いた。
それに対する返信が帰ってくるまでに一時間以上もかかった。その間、真雪は悶々とした気持ちになり、何も手がつかなかった。
ちなみに、流から返ってきた答えは『可愛い系?』だった。
☆☆☆
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