裏切者

@chauchau

雑魚魔物「魔王軍はとてもクリーンな組織です」


「よくぞ集まってくれた」


「何を仰います、我ら魔王四天王。魔王様の命とあらば何を置いても駆けつけましょうぞ」


「然り」


「それでェ、今日はァ、どうしてぇ、ウチらが呼ばれたっしょォ?」


「悲しい事実を伝えねばならぬ……。其方ら四天王のなかに、裏切者が出てしまった」


「馬鹿な!? 我ら四人は、魔王様に絶対的たる忠誠を誓っております! たとえその命を天秤にかけられようとも、魔王様を裏切るはずがありません!!」


「然り」


「ていうかァ、万が一ィ、裏切ったやつはァ、ウチがボコボコっしょォ?」


「まず三人しか来てないし」


「……」


「……」


「……」


「ノリで押し切れると思った?」


「いえいえっ! ちょっと来るの遅いな~、とかは思っておりましたが、来ないとかそういうことは決して考えてもみなかったですな!」


「然り」


「多分ですけどォ、おなかが痛いとかっしょォ?」


「もしや魔王様はここに来ていないアヤツめが裏切者であるとお考えでございますか! それはまったくの誤解というもので、アヤツめは誰よりも忠義に熱い男で、」


「いや、其方ら全員裏切ってるよね?」


「……」


「……」


「……」


「このタイミングで一斉に顔を背けるのはさすがに白々しくない?」


「これは、昨日……、そう! 昨日寝違えたためです!」


「然り」


「めっちゃ痛いっしょォ?」


「今回の勇者のことはどう思ってる?」


「敵ながら見事というほかありませんな! 幼くして両親を失ったというのに決して道逸れることなくまっとうに育っております! 強きに恐れることなく、弱きを助けるまさに勇者のなかの勇者でありましょう!」


「然り」


「それにィ、見た目もォ、ちょぉ~可愛いっしょォ?」


「裏切ってるよね?」


「……」


「……」


「……」


「敵を褒めるにしても饒舌になりすぎだよね? これはもうわざととしか思えないよね?」


「敵の……、実力を見誤っては、その、あれがこれして、そうなるので……」


「然り」


「見た目とかァ、それはァ、敵とかァ、関係ない気がしなくもないっしょォ?」


「話は変わるが、最近城の兵糧を何者かが盗んだ形跡がある」


「な、なんと! 魔王城から盗みを働く愚か者が!? 今すぐに見つけ出し、八つ裂きにしてくれましょう!!」


「然り」


「ウチにィ、任せてもらえばァ、すぐさまボコボコっしょォ?」


「犯人、其方らだよね?」


「……」


「……」


「……」


「このタイミングで一斉に黙るのはよくないよね?」


「さすがに魔王様といえど、根拠なく疑われるのは、如何なものかと忠言差し上げますぞ!」


「然り」


「ウチらはァ、コソ泥じゃないっしょォ?」


「防犯カメラに映ってるんだけど?」


「……」


「……」


「……」


「設備班がどうしてもって言うから其方らに言う前に付けてたんだけどね? ばっちり映ってるわけよ、其方らが」


「おのれ、設備班! これはきっと奴らによる内部分裂を誘う動きでありますぞ!」


「然り」


「今からァ、ウチらがァ、設備班をォ、怒ってくるっしょォ?」


「しかも、盗んだものを秘密裏に勇者に渡したよね?」


「……」


「……」


「……」


「どうしてそういうことするかなぁ……」


「いや、これは、あの、ほら、我々は負けるとお金を渡す決まりがあって、それ的な?」


「然り」


「ウチらァ、四天王だからァ、渡す金額も多くって大変っしょォ?」


「まだ一回も其方らは今回の勇者と戦っていないのに?」


「……」


「……」


「……」


「最初のダンジョンのボス君からね? 最終局面レベルの装備で全身を固めた勇者がつっこんできたって苦情が来たんだよね」


「さい、きんは……、チートが流行っておりますから、それ、かな~?」


「然り」


「つまりィ、女神がァ、悪いっしょォ?」


「なるほど」


「……」


「……」


「……」


「半年減給」


「そこをなんとか!! 先日、妻にお小遣いを半分にカットされたばかりで家計が厳しいのです!!」


「労働環境悪化反対!! 減給とかされたら勇者たんに貢げないじゃないか! 横暴だ! これはもう労基に相談してやる!!」


「っしょ! っしょ!!」


「急に元気になるよねぇ、ていうか二番目のやつとか、然り以外話せるとこ初めて聞いたんだけど」

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