東京編 第4話 覚悟

天気というのはとても気まぐれだ。雲ひとつない晴天から土砂降りの夕立がいい例だろう。最近では技術が発達し、精度も上がったとはいえ突然の一変には対応することが不可能である。だがら念の為の対策が大事なのだ。

 午前中には綺麗な青空が見えて来たが午後になると急変した灰色の雲が我々を覆っている。そして事態も急変した。誰1人いなかった道路が突然大勢の武装した集団がここ官邸の目の前にまで迫っているのだ。


「懐かしいな 官房長官。あの時の全く一緒だ」


「違うところがあるとしたら機動部隊に見捨てられたことと、奴らが俺たちを皆殺しにすることぐらいだな」


「いや、あと一つあるぞ。このために念入りな対策と協力ができたことだ」


「どちらにせよ、厳しい戦いになる」


「てか、総理。野党の奴らはどこへ?」


「国会議事堂だ。あちらも大軍が押し掛けている」


「国会議事堂と官邸を繋ぐ地下通路を作っておくのは正解だな。この一帯全てが要塞として成り立っている。ここを落とすのも至難の業だぞ。

最後に総理。あんたが仕上げをしてくれ」


「あぁ、分かった。秘書官。無線を貸してくれ」


「、、、、、諸君聴こえるか。我ら政府軍は武装勢力に包囲された。相手の方が数も質も上だろう。この戦いに勝つ勝算は低い上に沢山の血が流れるだろう。

"しかし、それでも戦わなければならない!

かつてこの国は敗戦し、荒廃した。だが、先人達の努力により再び大国として花開いのだ!

日本を作った先人達と国民の為自由と平和を愛する我が政府は断固として抵抗する!

この最後の希望をなんとしてでも死守するのだ!"。


只今より我が政府は戦闘状態に入る。

各員一層奮励努力セヨ」




デモ隊作戦本部


「矢田、作戦の最終確認を頼む」


「閣下、了解致しました。

まず、現状の兵力はレジスタンス勢力の妨害工作もあり7万人しか用意できませんでしたがそれでも政府軍およそ5000人との差は大きいので、まず負けることはないでしょう。問題なのはどのようにしてこれらの拠点制圧するのかですが、作戦を3つに分けました。

まず、第一段階としてバリケード無効化です。これについてですが、それらを想定して迫撃砲を配備しているので一点集中砲火すればバリケードを破壊することが可能でしょう。」


「待て、その迫撃砲はどのようにして用意したんだ」


「それについては俺から話そう。

実は前回の作戦会議の後、財閥連合の親分と夕食会という名の下話し合いをして来た。そこで現状に不満があったことを利用して利権拡大を条件に迫撃砲を含めた最新兵器を援助してもらったのだ」


「なら、兄貴はこうなることを予想していたのか。流石は兄貴だぜ!」


「お前ももう少し頭を使え。それより作戦の第2段階は?」


「あぁ、作戦の第二段階は単純だ。突撃して拠点を包囲するのだ」


「なぜ、突入しないんだ、参謀総長」


「閣下はご存じかもしれませんが、一度官邸に入ったことがありますよね。そこではどういう世界が広がっていますか」


「下に続く沢山の地下回廊、、そうか。例のブツを待つために」


「はい、それが第三段階で秘密兵器の投入です。官邸や議事堂には昔から多くの攻撃から耐えれるように対応されており、その中は厳重な上最重要秘密ですので一部幹部しかこの施設の全容を把握していない為、安易に侵入しても制圧は不可能。しかも立て篭もり徹底抗戦をする政府軍は強大です。そこで例の兵器の到着を待つほかありません。未だに不具合が多数あり配備できるのは終盤からだと中村から連絡が来ました。

そして最後に国会議事堂側には第2軍団の武蔵殿、首相官邸側には閣下自ら第1軍団の指揮を取ってもらいます」


「"例の兵器"か。一体なんだろうな兄貴」


「まぁ、見たら驚くぞ。あれは世界から見ても日本にしかないほどの強大な兵器だ」


「参謀総長としての作戦は以上です」


「なら、全員持ち場につけ。この戦いで旧時代は終わる。新時代を作る最初の戦いだ。失敗は許されない、この作戦なんとしてでも成功させろ、いいな。」


そういうと多くの将官達が解散していった。外に出ると血気盛んな若武者どもが今にも攻撃を仕掛けようと準備をしている。そんな奴らに俺は命令を下した。


「全軍。攻撃準備!」


国会議事堂


「いよいよ始まりますね、峯田党首」


「なんだ、怖いのか荒木。怖かったら逃げてもいいんだぞ」


「何を仰りますか。我ら皆覚悟を決めております」


「そうか、なら今まで通りでいい。選挙も戦争もほとんど同じ戦いだ。勝てば官軍、負ければ賊軍。だからこそ官軍としての狼煙を上げようではないか。、、、総員、戦闘準備」



そしてその時がやって来た。

20XX年 4月23日 午前8時36分

デモ隊が砲撃を開始した。政府軍も反撃として発砲。

ここに首都包囲戦が幕を開けたのだ。



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